試運転は完了 28節アトレティコvsカディス(H) 2022.3.11

28節はホームのカディス戦。CLユナイテッド戦のセカンドレグ直前。ご配慮いただきまして金曜日のカードとなる。


前回対戦はこちら

アトレティコにとっては先季から4-0、4-2、4-1と対戦機会3回連続で4得点中と相性の良い相手。前回対戦では2トップの脇、その先でSHの背後を取っていく方法でカディスを押し込んで大量得点に繋げた。グリーズマンのライン間タスクも良かった試合。2-3-5ビルドアップはそういえばその後見た記憶があまりないな。いずれにしてもカディスのSBの外側で注意を引けるポジショニングはポイントにしたい。


カディスは前節ホームでラージョに2-0勝ち。今季4勝目はようやくのホーム初勝利だった。ここ4試合で1失点と好調。監督が変わって冬の新加入やこれまで使われていなかった選手が大量にスタメンに。なぜかルーカス・ペレスが加入しているが無得点。前節は出てなかった。
これだけメンツを変えて躓いたら内側から崩壊しそうなものだがギリギリ耐えている。サルビ・サンチェスやアレックス・フェルナンデスまでベンチだ。
前節の中盤コンビは先季のバジャドリードでコンビを組んでいたアルカラスとフェデの2人だった。アルカラスは喧嘩っ早いし顔も怖い
ここで勝てば残留圏に戻れるが、この後ビジャレアル、バレンシア、ベティス、バルサ、アトレティック、セビージャ、一つ挟んでソシエダ、マドリーと続く地獄のスケジュール。たぶん全試合引き分け狙いになるのではないか


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
サヴィッチ / ヒメネス / ヘイニウド
コケ / エレーラ / デ・パウル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / フェリックス

サヴィッチが出場停止明け。怪我はたいした事なかったようで。中盤はコケが復帰。ヴルサリコ不在の右大外にジョレンテ。グリーズマンは12月12日のマドリーダービー以来のスタメン復帰となった。コレアは無事ベンチ入り


・カディス
レデスマ
アカポ / ルイス・エルナンデス / チュスト / エスピノ
アルカラス / フェデ・サン・エメテリオ / ソブリーノ / イドリシ
ロサノ / ネグレド

前節のスタメンを踏襲。右大外は便利屋ソブリーノ。SHにボールを入れてどうにか、という狙いは変わらなそう。

スタメン


●前半
・新生カディスの構築、外れた思惑

カディス

カディスの構築から。ワンサイド完結のサイドアタックが基本。
後方は2CBと2CHでクリーンな前向きができる所を探す。
両SHが内へ。ボールサイドは外側にSBが駆け上がる。この駆け上がりとハイサイドへのロングボールをサポートするために両CHは後方ビルドと球出しがメインタスク。リソースには合っているように見えるが、ワンサイド完結だと左SHイドリシの強みである対人突破の使い所がない。これを生かす方法にたどり着けばチームとして一段登れる感じ。
前線のチョコ・ロサノはSHと並列まで降りてきてライン間の顔出しとネガトラの一番手になるタスク。守備型FW。

ネガトラの狙いは即時奪回。

前プレ

ショートカウンターが狙い、というよりはカウンターを止めるためにまずボールに行く設計に見える。球際に激しく行って揉め事を起こすタイプの選手が多いので、相手の攻撃をぶつ切りに出来る。アルカラスが筆頭。顔が怖い
中途半端なところにボールが転がる事も多いので変なところでガチャガチャする。ヘイニウドのレッドカード疑惑もあったりと疲れる展開。

アトレティコからすると、サイド攻撃が怖い、という印象はあまりなかったが即時奪回のプレスが速く、効果的な保持がほとんど出来ないまま時間が過ぎていった。開始早々相手GKのミスを突いてフェリックスが先制点を取れたのは助かった。


アトレティコの非保持の話。

カラスコの位置

カラスコは前向きにプレスする事はあまりなく5バックで構える。カディスがこちら側のソブリーノとアカポから攻撃してくる事が多かったからか、早々に先制点を取ったので必要性がなかったからか。後方にランニングされる事も少し気にしていた様子
それ自体を悪い事とは言わないが、チームとして代わりの取り所の設定がなかったのは気になるところ。良い攻撃も良い守備もないまま時間だけ過ぎていった。

ちなみにアトレティコの前プレ自体は悪くなかった。ただ、カディスのようなチームはプレッシャーが来ていようがいなかろうが狙いはSHへのハイボールだったりするので、この相手に効果的かと言われると微妙なところ。まあ先制点はプレスで取ったんだけど。相手のミスなのでご愛嬌

リードで折り返せそうだったが同点にされる。45分、エスピノの放り込みにネグレドが合わせた。知らなかったんだがエスピノは右足でも良いボールを上げる。人と人の間に入り込んだネグレドもさすが。ヘディングも上手い。


●後半
コケ→ロディを交代して後半。理由は後ほど。配置なども後ほど解説する。


後半はアトレティコがボールを持ち始める。保持率は前半43.2%、後半48%だったが後半は最後の方退場が出たりもあったので。(退場者が出るまでは50.3%)

・カディスの変更点
後半はまず、カディスが前プレをやめた。体力的なものか、狙いがあるのか。ラージョ戦はどうだったかな

アトレティコはボール保持してCHも前向きにボールを持てるが、カディスは現実的にラインを低く設定。

後半のライン

ジョレンテ、ロディのランニングコースが消されている状態。エレーラ→ロディの背後を突くロングボールが効果的ではなかったのも、ボールの質というより相手のライン設定に原因があった。ただ、蹴って跳ね返させてセカンドボールにラッシュ、という狙いなら悪くない。かも。そのためにグリーズマン→コレアを交代した。
グリーズマンは、あまり彼に向いている試合展開にはならなかったが、まずは60分やれた事。本番は次なのでコンディショニングをお願いしたい。

カラスコも下げてスアレスをin
後半は保持できるのでジョレンテはハイポジションをキープ。IHの位置から工夫して飛び立つ必要はない。それよりもライン間タスクをする選手を2枚に増やす事が優先だった。

ライン間タスク

相手のラインが低いなら間で受けられる選択肢を増やす。
ライン間タスクをフェリックスに加えてコレアが担当する事で相手DFを引きつける。結果としてジョレンテにスペースを用意する事に繋がる。この辺は効果的な選手交代だったし、狙いも明確。非常に良かった。


・狙いが当たる
68分にアトレティコが勝ち越し。ようやく右WBのジョレンテへ効果的なロングボールが出た。スペースがある

勝ち越し1

ヒメネスからボールが出た時点で相手中盤ラインを超えている。すぐさまコレアが真横のサポートに入ったのが良かった。これで決まった。後は最終ラインの崩し方だが、コレアに左CBが対応している時点でPA内の優位は攻撃側のアトレティコにある。

勝ち越し2

コレアをマークするため、CBがエスピノの後方をサポートできない。ワンツーで解決できる。
ジョレンテのクロスはニアのスアレスに当てたのは狙ったわけではないかもしれないが、カディスは右CBと右SBの2人でPA内を守るしかない。セカンドボールにデ・パウルが反応して勝負あり。
大外をどのように使うか、の解答をしっかりと用意した追加点は満足度が高い。ジョレンテの生かし方は再現性ありそうだし。良いゴールだった。終盤に引いた相手を崩すパターンとして有効になる攻撃であった。


終盤はクローズに出てきたハビエル・セラーノ君が華麗に退場し、ガヤガヤしながら試合終了


●試合結果
2-1で試合終了。アトレティコは今季初の4連勝。

カディスはポジティブな前半の出来を維持する事ができなかったが、90分間は前プレがやれないチームなのか、別の要素があったのかは正直わからない。前プレしてた方が間違いが起きる可能性があったように見えたが。正直ロングカウンターを刺されるような部分はなかったので、ラインを下げたのは微妙な選択だったかと。
もしかすると、前半に前プレと再奪回で点を取って後半はそのスコアを守る、という狙いがあるのかも。アウェーだし、引き分けで御の字っていう試合だからね。


・この日のアトレティコの出来は
では、この日のアトレティコのエクトル・エレーラシステムをまとめてみる。まず、前半の45分、むしろ90分間全体を通じて、良い攻撃でカディスゴールに迫った場面は2点目のシーンくらいしかない。ほぼラストサードで脅威を作れなかった。酷い出来だったと言っていい。

ただ、何度も繰り返しになるがこのシステムの取り組みはベティス戦とCLユナイテッド戦に勝つためにある。その中間のカディス戦の出来がどう、結果がどうという理由で取り組みを見直す必要はない。というかもう後戻りは出来ない。オールド・トラッフォードではこのシステムで戦う。この試合の結果で考え直す余地はないのだ。

そんな中でも、このシステムが機能しないトリガーはどんな所にあるのかという箇所をしっかり確認していく


・ヴルサリコの不在
オサスナ戦から5戦目となる当システムで、これまでの試合と異なっていたのはヴルサリコの不在である。これまでの試合では右サイドの一番外側はヴルサリコの仕事だった。
本来4-4-2と5-3-2(5-4-1)を行き来するシステム、そのトリガーは左SHのロディ(orカラスコ)のプレス開始にあるが、この日は後方4枚の時も5枚の時も右大外はジョレンテ。数字の話をすれば3-5-2と5-3-2の行き来、という構成で試合をしていた。
今になって思えばだが、ジョレンテが相手の背後を取りまくっていた先季も含め、彼が攻撃で輝く時はIHで起用されている時で、WBだと魅力は半減する。カウンターシチュエーションは別だが。足速いから

ハイポジションを取ったヴルサリコ目掛けてGKオブラクからロングボール、そのセカンドに群がる、というプレス回避が使えず、前進に苦労する事となった。前半苦労した最大の理由はこれだったと思う。CLにヴルサリコは間に合うのか。この日はスーツ姿で退場した相手コーチを罵倒していたが何をしてるんだ君は


・3CHは
右からコケ、エレーラ、デ・パウルが並んだ中盤3枚。現システムは中盤の球出しはエレーラに依存していたがこの日はCHが3人いた。それでボールの循環がスムーズになったかというと全くならなかった
そもそもビルドアップの選択肢が3,4つしかないこのシステムで、出し手を増やす事はシンプルに受け手を減らす事に繋がっていた。3人もいらん。
また、この日のメンバーは機動力はあるがボールハンターになれる選手がいない。中盤にジョレンテが欲しい。コンドグビアが欲しい。
この日欠場したルマルは守備のCHタスクをこなしながらアタッカーの頭数に入れられる選手。不在の彼の魅力が見つかった試合だった。CLに間に合ってほしい。
後半頭からコケが交代となったのはCLへの試運転だったというのも理由の一つだろうが、アタッカーを一枚増やすために交代の選択肢が3CHのどこかだったのは明白。

後半開始

後半開始時配置

交代後

コレア投入後
後方は3枚とCH2枚が残るという人数バランスでOK。ユナイテッド戦でもコケとデ・パウルは半分ずつの出場と予想する


・アーリークロスの対応
失点シーンもこれだったが、どうもアーリークロスに弱い。なんでだか正直あんまりわからない。一応ピックアップしておく。


・試運転完了
ポジティブな話を。
サヴィッチの復帰、コケの復帰。グリーズマンをスタメンで60分試した。スアレスのコンディションが良さそう。

故障中のコンドグビア、ルマル、ヴルサリコが間に合うのかは心配だが、それ以外の選手達は決戦を戦う準備が出来ているように感じる。いよいよだ。決戦はマンチェスターで。ワクワクしてきた。


3/11
ワンダ・メトロポリターノ
アトレティコ 2-1 カディス
得点者
【アトレティコ】'3 フェリックス '68 デ・パウル
【カディス】'45 ネグレド


●ピックアッププレー
失点シーンを一応ピックアップ。

画像11

2トップと両SHが内のレーンに収まる。ソブリーノがHVのヘイニウドを釣れているのでここに縦パス。ヘイニウドはハードに寄せたが、取り切れると思いすぎていたか、入れ替わられる。ターンしたソブリーノからイドリシを経由してエスピノへ

画像12


エスピノの利き足である左足を警戒して対応したが、右足から良いボールが出てきた。PA内は4対4を作られている。同数で間を取られてるのはどうなん、という事もあるが、スピードを上げてPA内へ突進してきたアタックは迫力があった。とはいえユナイテッドはもっと迫力があるし、もっと鋭いボールが飛んでくる。さて、防ぎ切れるか


●ピックアップ選手
フェリックス
現システムになってからセルタ戦以外の全試合で先制点を決めている。
しかも3分、7分、2分、3分とどれも開始早々の得点。先手が欲しいチームを助けている

デ・パウル
意外とラリーガ初得点となった。その他特に良い印象のある試合ではなかったが。前プレよりは足を止めてブロックする方が得意で、このシステムのプレスもあまりハマっていない

セラーノ
出てくる度派手なファールをするセラーノ君。この日は一発レッドをもらった。別に彼を責めるつもりは一切ないが、どういうタスクの与え方をされているのかはちょっと不思議

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