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着地点を決めずに離陸せよ〜アトレティコ・マドリー最新スカッドを読む〜 2023.08

よっしゃ、2023-2024シーズン。始めましょう。今季もよろしくお願いします。

あらためまして、がーすけです。2019-2020シーズン以降のアトレティコ・マドリーの試合を大体レビューしています。丸4シーズン。その他ラリーガの試合もそれなりに見ながらあーだこーだと言っています。今季もやっていきます。

欧州サッカーのオフシーズンは真剣にサッカーから離脱するので本当にびっくりするくらい何もしていません。でもマメなので毎日transfermarktのラリーガ>最新の移籍の欄をチェックしていました。マメすぎる。プレシーズンを見ながら徐々にピントを合わせていきましょう

まだの方は先季のまとめ記事を。こちらです。



■inとout

まずはスカッドの変化から。

IN
チャーラル・ソユンジュ(←レスター)
セサル・アスピリクエタ(←チェルシー)
ハビ・ガラン(←セルタ)
サンティアゴ・モウリーニョ(←ラシン・クラブ)
ロドリゴ・リケルメ(←ジローナ)※レンタルバック
サムエウ・リーノ(←バレンシア)※レンタルバック
セルヒオ・カメージョ(←ラージョ)※レンタルバック

OUT
マット・ドハーティ(→ウォルバーハンプトン)
ジョフレイ・コンドグビア(→マルセイユ)
ハビ・セラーノ(→シュトゥルム・グラーツ)

OUT→OUT
マヌ・サンチェス(→セルタ)
マテウス・クーニャ(→ウォルバーハンプトン)
レナン・ロディ(→マルセイユ)

先季のスカッドにいなかった選手の行き先は別にこの記事には関係ないんだけど、まあ一応。(※クレーム対策)

マヌ君だけ話しておきましょうか。オサスナで2年半プレーし、スタメンポジションも掴んでいた。先季はクラブも好調でラリーガ7位。国王杯準優勝。よくやっていた。十分ラリーガでフルシーズンプレーするに足るクオリティに異論は全くない。ただし、アトレティコがSB/WBに要求する能力とは方向性が違ったため放出となった。あと、個人的には"ラリーガで通用しているカンテラーノなんだからトップチームで使え"はあまりピンと来ない。CL常連クラブのスカッドってそんなに軽いものですかね?

もちろん本人は移籍するならオサスナがやりやすかったかもしれないが、オサスナ側に800〜1000万€程度の移籍金を払う意思はなかったんじゃないかと。このへんはおれにはわからん。そうとなればハビ・ガランが欲しいアトレティコが移籍金交渉の弾に使ったのは違和感のない方法論であった。多少可哀想だけど、まあクラブの考えです。
個人的に付け加えるなら、2年くらい前に久保建英にチンチンにされた時点でシメオネの目には映っていなかったかな。CLクラスの対人に対応できない選手という評価になり、それを覆すほどの進化もなかったのでしょう。その進化を見せつけるための時間は、あったはずなので。不公平とはあまり思っていない。
器用で良い選手なのでセルタでも上手いことやってくれるでしょう。ずっと応援しています。


■スカッド配員

さて、アトレティコの話に戻る。各ポジションの配員から。

GK
グルビッチ
オブラク

CB
ヒメネス
アスピリクエタ
ソユンジュ
サヴィッチ
ヴィツェル
エルモソ
ヘイニウド
モウリーニョ

SB/WB
リーノ
モリーナ
ハビ・ガラン
カラスコ

MF
デ・パウル
コケ
サウル
ルマル
ジョレンテ
(ヴィツェル)
バリオス
リケルメ

FW
グリーズマン
メンフィス
コレア
モラタ
カメージョ

まず圧倒的に充実したのはCBである。アスピリクエタ、ソユンジュ、モウリーニョを加えた。先季はヴィツェルを3CBの中央で使う形でスタートしたがその後サヴィッチ・ヒメネス・ヘイニウドの3枚に落ち着いた。ヘイニウドが大怪我で離脱した後はエルモソが左に入り、実質4人(サヴィッチ、ヒメネス、エルモソ、ヴィツェル)でCBの3ポジションを回していた。ヴィツェルはCBが本職ではないし、スピードに難のあるエルモソの替えが効かず、サヴィッチとヒメネスがフルシーズン健康体で過ごせるはずもないのでずっとスクランブル。よく乗り切ったな
今季はアスピリクエタは言うまでもなく、マッチョタイプのソユンジュを獲得。ウルグアイラインでサンティアゴ・モウリーニョも獲得して枚数を揃えた。これでヴィツェルは中盤に戻ると思いきや、マンチェスター・シティ戦は早速3CB中央で使われた。なんでやねん
なんとなくシメオネの発言的にも引き続きヴィツェルは最終ラインで考えられている様子

モウリーニョの獲得は"将来を見据えた"みたいな雰囲気があるが、21歳のシーズンとなるとヒメネスはもう代表25試合くらい出てCL準決勝バイエルン戦も2試合フル出場してたので悠長なこと言ってないで普通に試合に出てください。W杯一回分ヒメネスより遅いです。早々に出場時間を得られないなら来季には居場所はないかも、くらいの厳しいスピード感で挑戦してほしい。

ソユンジュは割と未知数なので使いながら序列を決めていったら良いと思います。近年のレスターの試合はほとんど見ていませんがプレー集を見る限りではビルドアップは期待しない方がいいでしょう。アトレティコに来るCBの評価で"ビルドアップが"とか言われる時点で時代の流れを感じる。
実際のところ最終ラインの新加入は、仮に誰も使えなくても回らないわけではないし、じっくり最適解を探していく形でいいと思われる。

アスピリクエタについて書いておくことは特にない。既にリーダー的存在(世代を察する)の振る舞いが話題みたいなのでもうそれだけでいいです。便利屋として使い回されてください。アンカーとかやりそう

SBは、そもそも左SBという存在がレンタル加入のレギロン(退団)しかいない不恰好なスカッドに、数シーズンに渡ってラリーガトップレベルの存在感を見せていたハビ・ガランを補強した。このポジションはカラスコ(&リーノ)と使い分けることになりそうだが一気に選択肢が増えた。4バックと5バックの使い分けは今のところ何とも言えないが5バックが多くなりそう。ハビ・ガランに設定されるタスクがどういうものなのか、早めに確認したいと思っている。
先季のドハーティの起用を思い出せばわかる通り、モリーナの控えの扱いは難しい。彼はフル出場できてしまうので。右サイドの2番手は引き続きジョレンテがいるが、プレシーズンでアスピリクエタが使われて、途中からはリケルメも出てきた。リーノもやっていた。

中盤と前線の顔ぶれはコンドグビアが抜けて、先季でプリメーラクラブにレンタルされて結果を残した3人、ロドリゴ・リケルメ、サムエウ・リーノ、セルヒオ・カメージョが戻ってきた。
ジローナを牽引するパフォーマンスを見せていたリケルメは、プレシーズンではWBで起用された。本来はもっとゴールに近い位置でプレーする選手で、本人の納得感は如何程か。狭いゾーンで前を向いて勝負するのが得意な選手でフィニッシュも上手い。ただ、プレシーズンではWBの守備対応も問題なく完遂し、幅広い活躍を感じさせた。望むポジションでプレーできなくてもチームに留まるのかは予断を許さないが。残ってほしいね
リーノは左右のWBで使われ、撤退守備の対応はシンプルに怪しいが何事にも積極的なのでどうにかなるでしょう。攻撃では相手の背後を永遠に狙い続けて雑なロングボールが放り込まれる。目の前の相手を斬って捨てる武士スタイルのドリブルは先季通り。ビルドアップ局面で相手を背負ってもルマルと協力して打開する工夫が見られた。前半リーノ、後半カラスコの相手をする相手SBは普通に可哀想。

中盤中央はコケが使われ、左右にデ・パウル、ルマルが1stチョイス。中盤のスライド守備で問題なく機能し、プレス回避の相互理解が確立されている3人は基本形を作るに相応しい。
ジョレンテ&サウルは言うに及ばず、今季も与えられたタスクを完遂できる選手。ジョレンテはまず健康で過ごすことから。推進力とサイド突破の選択肢、カウンターの特攻役を。サウルはネガトラの番人と中央強度の保証、そしてゴール前に飛び込む仕事を。
バリオスはプレシーズンは主にコケと入れ替わってアンカーポジションで使われたが、特筆すべきパフォーマンスを見せた。5番の補強が夏の間延々と騒がれているが、バリオスでいいんじゃないか。というか駄目なら何故プレシーズンでこのポジションで使うのか。コレアに通す縦パスのフィーリングが良く、前向きにボールを受ける価値をアピールした。

FWはグリーズマンを中心に。モラタを1stチョイスで使ったがメンフィスとコレアに出来ることとそのクオリティは大体見えている。誰を使うかはシメオネの判断次第。おれはメンフィスがレギュラーになると思っているが、察しの良いモラタはそれに気づいて移籍先を探していたのではないかと推察する。彼の場合は"今年のスカッドならCL狙えるかも"に興味がなさそうなのもポイントとなる。もう2回取ってるので。なんかムカつきますね


■プレシーズン振り返り

さてプレシーズンを振り返ります。結果から

vsKリーグオールスター 2-3
vsマンチェスターシティ ○2-1
vsソシエダ △0-0
vsセビージャ △1-1

Kリーグオールスターとの試合は見てません
シティ戦から振り返る。


・マンチェスターシティ戦


シティ戦スタメン

シティ戦は5-3-2配置。2トップはグリーズマンとモラタなので、グリーズマンが中盤ラインに降りてきて5-4-1風に配置されることもある。つまり"先季と同じ"という雰囲気。

新加入のソユンジュ、アスピリクエタがスタートから起用されたが2人ともなんの違和感もなく組み込まれた。チーム全体でライン間を横移動するフォーデンをどうやって捕まえるのかに苦労したが、それは別にアトレティコの仕組みが悪かったというよりシティが(フォーデンが)そういうの上手かったねという話。それよりもハーランド&アルバレスの2トップの受け渡しを間違えず行えていた3CBを褒めた方がいい前半だっただろう。
擦られると瓦解しそうだったのはグリーリッシュが突っかける形だが、アスピリクエタの対人は十分信用に足る質で、ソユンジュのカバー距離も適切だった。アスピリクエタとグリーリッシュは伝統的に仲が悪いらしい。
ソユンジュはペナ角へ戻るボールへのアプローチも問題無し。振り切られることはないという自信を感じさせる対応をしていた。良いです。シンプルに良かった。
中央はハーランドへのクロスの対応をヴィツェルが手前、奥にエルモソのデカいコンビで挟み込み、自由を奪った。これも良いです。

相手最終ラインの配球に対しては中盤3枚、デ・パウル、コケ、ルマルが待ち構えて相手の右CBストーンズのところまでルマルが飛び出していく限定方法も先季までと同様。この3人の非保持に今さらケチをつけるつもりもない。これまで通りやっていた。

さて、この日のトピックとして、左WBにサムエウ・リーノが使われた。まず非保持ブロックでの立ち位置に関しては"不安"である。目の前にドリブルで人が近づいてきた時の身体の向きとか不安。心配。重心もなんか変。攻撃参加すると許容なのかノリなのかグリーズマンの指示なのか不明だが右奥まで突っ走っていってお前戻ってくる気あるんかという機会がしばしば。色々心配ではあった。
ポジティブトランジションではめっちゃ全力で突っ走るのでとりあえず使ってみようという感じでリーノの裏に蹴っ飛ばしたが信じられないほどのスピードで割とどうにかする。特にグリーズマンからの配球に対して従順で、どんなボールでも全力で追いかける犬役を担った。左サイドから短い距離のクロスが2つあったがどちらも得点に直結しそうな質を持っていたのは嬉しい誤算。新しい武器になる予感。

プレス回避は低い位置からエルモソ、ヴィツェルを中心にコケが近づいて突破を狙う形も先季後半戦通り。右CBのソユンジュはオープンになってやり直しを待ち、デ・パウルとルマルが前向きを狙うがシティもバチバチに前プレでハメに来ていたのでそう簡単には逃げられなかった。
とはいえシティ側は割とグリーズマンの立ち位置に無頓着だったので、隙間でグリーズマンが引き取って前向きの展開を作ることは数回できた。その際に左のリーノよりも右のアスピリクエタの方が高い位置で準備できていたのは、左から進む機会が多かったからかな。本来であればルマルがタッチライン付近でビルドアップに関わっている時はリーノに高い位置に逃げて欲しいが、その辺の設計はまだまだかなと。ちなみにリーノ自身は相手を背負ってボールを受けた時のプレーのレベルはだいぶ高く、プレス回避の逃げ道になれそうな予感があるのは知らなかった魅力である。

後半は60分過ぎにソユンジュ以外のフィールドプレイヤーを全員替えて展覧会の様相。シティ側もほぼ入れ替わっていたので練習試合感が増した。

後半

後半もポジティブな面は多々あった。まず2トップ。メンフィスが中央付近でボールを呼び込む作業をしてくれるのでコレアは背後取りとジョレンテとのリンクに集中。その中でメンフィスとのワンツーで先制点を演出したのはコレア自身としても良い仕事であった。"グリーズマンとは違う仕事"をアピールできるコレアを尊敬している。求められる仕事のために試行錯誤を繰り返すNo.10は今季もチームを救ってくれる。
中盤はジョレンテの体調が問題なさそう。裏抜けも何度もあり、前プレしてくる相手には常に必殺になる。怪我なく過ごしてほしい。
驚きはバリオスが中盤の中央、コケの位置で使われたこと。シティの(控えメンバーとはいえ)中盤の選手相手にボディコンタクトを繰り返し、コケ化を予感させる仕事をこなした。得意のプレス回避、配球も普段通り。相手アンカーを捕まえに行くコケのタスクも引き継ぎ、一度引っ掛けてフィニッシュまで行き、結局その流れからメンフィスの先制ゴールを生んだ。背後の管理が甘くなった時には隣の大先輩サウルの助けを借りながら、IHではなくアンカーとして存在感を見せたのはアトレティコの将来を見据えても非常にポジティブ。そしてこのポジションの補強不要を印象付けた。

CBは真ん中にモウリーニョ、左にはコスティスが起用された。コスティスは先季W杯明けのポンフェラディーナ戦で見た時は"ウパメカノみたいな体型"と思っていたがシティ相手だと割とすらっとして見えた。
モウリーニョは球際に強く五分のボールを奪い切れるのが魅力。配球も安定していたが謎に強気な縦パスを放つ時があって心配だった。ロングボールは機会がなかったので次回以降。
コスティスもとんでもない強気でぶつかり上等の態度でアピールした。CBはまずは強度。これで左利きならプリメーラで需要がありそうだ。

本人的に不本意だったと思われるのはロドリゴ・リケルメ。右WBでの起用となった。ここでジョレンテをWB、リケルメを右IHにしなかったのがシメオネらしいと言えばシメオネらしい。本来のポジションでなくとも相手を剥がす加速とゾーン侵入を披露したのは流石のクオリティ。要求される物も大きいが、本人の理想も高いと思われるので

最後にカラスコ。前半のリーノのパフォーマンスをポジティブに捉えていた全アトレティを黙らせる圧巻の仕事。一人でサイドを切り裂き、カウンターでリコルイスをひっくり返して右足一閃を突き刺した。"カラスコが移籍しても"と、誰もが頭をよぎった前半。それを忘れさせる唯一無二、究極の30分間であった。

プレマッチなので勝ち負けはまあ一度忘れるにしても、良い試合ができた。想定通り先季同様の配置で組み合わせて非保持のバランスも問題なし。取り組んだプレス回避は改善の余地はあるものの上積みを感じさせた。後半のメンバーも得意なプレーを見せてポジションを奪いに行く意欲を全面に出した。これでモリーナとヒメネスが帰ってきてヘイニウドが怪我の影響なくプレーできたら凄いスカッドが作れると期待させる試合であった。


・ソシエダ戦

ソシエダ戦

シティ戦から数人入れ替えたが同じオーガナイズ。リケルメは引き続き右WB。
この日はボールを握るソシエダ相手に前プレがどの程度ハマるのかを確認しながら展開していく。
シティ戦同様、アンカーポジションのコケが相手アンカーのスビメンディのところまで前進するところを非保持の軸とする。

ソシエダ側は浮いたSBにGKからロブパスが出てアトレティコはWBが前進。後方のスライドでハメる形。こう言っちゃなんだがソシエダの質が酷いもんであまり参考にならない。ちなみにソシエダはおれが見たオサスナ戦、スポルティング戦も割と心配になる出来だった。他所は他所。
自陣に押し込まれてからもコケは中央のフィルタよりも人を基準にポジションしている雰囲気が強めで、中央のエリアを意識的に守るのは相手WGがドリブルを仕掛けてくるタイミングくらいなもので基本的に真ん中からいなくなることを厭わずスビメンディを捕まえることを優先していた。コケがいない時のシュートブロックにどれくらい3CBが寄せられるか、などは確認したい事項としてメモ。
これらのコケのタスクは後半に全てバリオスに引き継がれた。この試合だけの印象で言えばバリオスの方が良かったくらい、バリオスは充実している。

保持局面はあまり大外の打開は見られず、グリーズマンが一つ降りてきてレイオフをルマルに渡して前進開始、の形を3連続くらいで擦った。この形はわかっていても避けられないものなので前進に困ったら使われる形になりそう。

もう一つの形はデ・パウルの右大外への列落ち。

配置の都合でリケルメの位置を押し上げるための手段なのか、別の何かなのか、がわかりにくかったが、この日のメンツでこれをやる分には一定のリターンは期待できる。というのもIHが右に落ちるというのは当然左CBエルモソを押し出す動きと連動しており、それ自体には説得力があるが、じゃあ何のためにヴィツェルがCBで出てんの?という話になり、デ・パウルのポジションがジョレンテでも同じことすんの?というのは大いに疑問だ。
なので個人的な結論としてはリケルメをWBで使うならこういう構築したいねとシメオネが考えているか、そこが居心地良さそうとデ・パウルが判断したかのどちらかだろう。ちなみに当のリケルメは意外とバレネチェア相手の対人守備も問題なく対応できていたので割とWBはアリかもしれない。本人の気持ちは知らん

前線は、降りていくグリーズマンへの対応がふわついたところでモラタが一発で裏を取ったシーンは流石。外したところも含めて。シティ戦後半と違ってオープンな展開が訪れなかった前半の45分においてカラスコの存在感が希薄だったことにも示唆があった。


後半

11人を総入替して後半。全員替えても似たような配置が作れるのはシンプルに凄い。
前半のところでも書いたがバリオスがこの日も上質のクオリティ。全く問題なし。ジョレンテに元気がなかったが、この日は右で使われたリーノが一発裏抜けを一生狙っていてジョレンテのタスクがふわついた部分はあった。どっちが最強の脳筋なのか勝負してほしい
この日も左IHに入ったサウルはバリオスの前向きを作る作業に集中して良い配球を繰り返した。上出来。メンフィスはフィットネスの向上を感じさせつつフィニッシュはご愛嬌。
ソユンジュはもうレギュラー確定級の質を継続し、コスティスも問題なかった。
左WBに入ったハビ・ガランと右CBのアスピリクエタを起用した理由になりそうだが、70分過ぎにコスティス→モウリーニョを入れ替えるとリーノが左に移動して4-4-2を作った。

4-4-2

ハビ・ガランはこの45分だけ見るとスカッド内での用法用量がよくわからん。また、リケルメは4-4-2になってからの方が得意な仕事がありそうな気はした。そして言い過ぎるとあれだがこの日もグルビッチのWBまで飛ばすキックの質は酷いものだった。
コレアの存在が4-4-2と4-5-1に制限を与えないのはこのチームの定番となっている。最終盤にまたリーノが右に移動したのは何か理由があったのかたまたまなのかわからなかった。そのリーノは最後、良いヘディングも枠に飛ばしていました。そしてコレアのCKはやめた方がいい

得点が取れなかったことについてはメンフィスが外し続けたので特に気にする必要はない。逆に守備は特にピンチもなく。後半に一度GK前に放り込まれた場面があったがグルビッチが仕事をした。
前プレと撤退の非保持形、プレス回避、スピードアップと大体の確認はできた試合。あとはベストな配員と途中交代のパターンを作り込んでいく作業。メンフィスのパネンカとソユンジュのヒールパスは二度と見たくない


・セビージャ戦

セビージャ戦スタメン

セビージャ戦は最終ラインはサヴィッチが真ん中。
中盤はジョレンテをスタメンで使ってデ・パウルは左。リケルメは引き続き右WBで使われた。期待されて起用されている、というより普通にモリーナいないからだと思う。そして中盤では使ってもらえないのが現状。ジョレンテがいるのでグリーズマンは左側。

セビージャは3日のベティス戦では前半、強めの前プレを仕掛けてかなり機能していたのでメンバーは違うがここは十分比較可能になるポイント。
アトレティコは普段通りのプレス回避を設定し、突破してグリーズマン、あるいは左大外のカラスコを使って前進する形が見られていた。あとはようやくスタメンで起用されたジョレンテが隙間で受けて一気に侵入した。しかしこの日は近くにコレアもいない、そして右WBのリケルメとの連携も終わってるレベルで揃わず、ジョレンテの日とはならなかった。

そのリケルメは不慣れな部分が大いに出た試合。まあジョレンテにだけ合わせればいいよって話ではないんだが、コケ→リケルメにパスが動くタイミングでジョレンテがチャンネルランしたらそこにボールが出るのがこのチームのセオリーだし、実際それが一番チャンスになることも明らか。ただしリケルメは1stタッチの置き所をどの方向にもボールを動かせる位置に置きたがり、2タッチでジョレンテの裏へ、という選択ができないケースが多かった。タッチライン側に置いて蹴っちゃえばいいんだけどね、絶対抜けてくれるんだから。一方リケルメが良かったのはジョレンテへのパスを警戒された際に内側へドリブルしていくプレーで、一応それを助けにグリーズマンが近づいてきてくれるようになってチャンスメイクはできていた。

さて敵陣侵入後の攻撃に関してはこの日は左IHに入ったデ・パウルのキックフィーリングが合わず(たぶんピッチコンディションの影響)、右前方へあまり効果的なロングボールは出てこなかった。また、オープンになった右CBのソユンジュもコントロールミスをいくつか犯し、苦手なプレーを可視化させていた。セビージャは撤退した際のバランスが非常に良く、ロイク・バデを中心にゴール前の我慢も効いた。アトレティコは深く抉ってゴール前中央に得点機をいくつか用意したが不運もありなかなか先制点は奪えなかった。そこまで問題意識はない。この3試合とことん縦挙動に拘ったコケがPA内まで侵入した形は良い印象。

非保持ではこの日も前から制限をかける形。特にジョレンテの二度追いでGKに蹴らせるような意図は強く見られたものの、近2戦と違って明確なアンカーポジションを用意していないセビージャの2CH相手にコケ&デ・パウルが圧力をかける形は、強度に関して多少手探りな面があった。行き過ぎてスソにひっくり返される形は避けたかったし、両サイド大外に2人ずつ配員してくるセビージャ相手に中央から人がいなくなる形はあまり望ましくなかった。また、セビージャの両サイドを狙った正確なサイドチェンジは健在で、右オカンポス、左オリベルが受け手となって簡単にPA付近まで侵入してきた。とはいえこれだけの質で両サイドにドカドカ蹴ってこられるチームって他にどこがあるかねと言われても微妙なところ。シンプルにこれがセビージャの強みとして受け止めて良かったと思う。余談だがどう考えても中央の選手であるオリベル・トーレスがワイドを棲家にしている理由はこのロングボールを蹴れることと受けられることの2点に尽きると思われる。突破ができる選手ではないが上手いんだよなこの辺が。
この両ワイドを使ってくる攻撃に対してもまずは右WBで使われたリケルメが問題なく対応できたのは良かった点。中央も問題なく跳ね返すことができていた。ちなみに後半から出てきた新加入のジブリル・ソウはとんでもないミドルシュートを装備していそうだったのでこの攻撃にハマりそうである。ラキティッチ、グデリもいるしな。
アトレティコはボールを奪うとセビージャの再奪回に晒されたが、ジョレンテを中心に真ん中を突っ走ってトランジションに繋げることはできていた。色々な箇所がチグハグだったがピッチも良くなかったし次回以降のお楽しみということで。

後半はアスピリクエタが出色の出来。特に右WBに入って以降、高い位置でジョレンテと上手くコネクトしてモラタに決定機を用意。そしてそのモラタが右大外でクロス体制に入るとゴール前に侵入して相手のエラーを呼び込んでコレアのゴールに繋げた。ちょっと凄すぎる活躍です。
バリオスはこの日はコケと併用されて右IHに。ボールへの強度と強気な縦パスは変わらない。特にコレアに前を向かせる縦パスはお互いタイミングが合っていた。明らかにこの3試合で先季以上の出来を見せている。ルマルも同様にピッチに苦戦する選手が多い中でスルスルとドリブルで解決していく場面が目立ち違いを出した。リーノは左足で際どいシュートを放った。ショートコーナーを受けて自分でシュート打ったところはめちゃくちゃ反感買うからせめてグラウンダー。ヴィツェルはラファ・ミル相手の空中戦だと分が悪かった点は指摘しておく。

アンカーポジションを置かない相手との試合だったこともあり、過去2戦とは違う対応が見られた。序列も微妙に見え隠れした。個人的にはヴィツェルのいるいないはあまりビルドアップの質に影響していない気がするんだが、その辺りをどう考えるのか。一番悩ましいのはロドリゴ・リケルメ。モリーナがいない間の代役として特段問題があるとは思えないが、ベストな起用法ではないのと、本人の気持ちがどうでしょう。アスピリクエタがこのポジションを上手くやれてしまっているのもある。そもそもBチーム登録のままでいいのか?
3CHと2FWの考え方は特に先季と変わらない。モラタorメンフィスの序列くらいだろう。中盤はそれぞれの特徴通りにプレーして必要な場面を感じさせている。特にバリオスは十分なパフォーマンスを見せた。是非出場時間を増やしてほしい。コケを脅かすのがカンテラーノだなんて胸が熱くなる。



■まとめ

要点をまとめる。
3CBはご覧の通りメンバーが豊富。怪しかったのはソユンジュがビルドアップで何度かはやらかしそうだなという事前の予想通りの部分と、セビージャ戦のようにエルモソが頻繁に大外に引っ張り出させると不安な所。あとはサヴィッチがアバウトなボールで裏を取られることだが、全部元々わかっていたことなので特に言うことはない。
WBの守備については右はアスピリクエタ、リケルメ共に問題無し。怪我で離脱中のモリーナにも問題があるはずもなく、盤石と言える。攻撃に転じた時、IHのジョレンテとのコンビネーションを考えるとリケルメはやや劣る現状。ただし事前準備なしに起用されていたと考えるならば良いパフォーマンスではあった。
左はカラスコがトランジションゲームと仕掛けで圧倒的。リーノもマンチェスターシティ相手にポジティブな印象を残せた。ハビ・ガランは現状では使い道が不明だが、ソシエダ戦の後半70分以降に4-4-2(4-5-1)で配置したのは狙いがありそうだった。効果はわからん
そして終盤の守備固めでハビ・ガランを入れる、という考えは今のところ考えにくい。それなら右モリーナ左アスピリクエタとかの方がしっくり来る。まあ長いシーズン、まだ何かしらの可能性はあるだろう。

中盤はアンカーのコケが相手アンカーを捕まえに行く形が印象的。そのため相手SBの持ち出しをある程度許容し、この辺で待ち構える形が基本的となりそう

このへん
両HVが足下で受けようとするFWに飛び出して行く対応を意識していたのはこの辺りの配置に起因していると思われ、矛盾なくやれているならそれで問題ないという感想。コケが飛び出していく分、両IHが深く押し込まれるタイミングがあり、コケがスプリントで中盤ラインまで引き返す際に相手アンカーが空く。ここをグリーズマンが引き受けているが、コレア&メンフィスの2トップの時はメンフィスがこの役割を担当していた。
結果的に、低い位置でのプレス回避を意識して地上戦で解決する機会が増える一方、単純なクリアを待ち構えている選手が前線に一人(モラタ)しかいない機会はこれまで以上に増えることが予見される。ここはカラスコやリーノ、ジョレンテの気合でスプリントしてもらうことにどこまでの期待を込めるのか。プレシーズン段階ではアスピリクエタがこの仕事をやってくれていたが、君は守備的なのかと思いきや攻撃的なのでしょうか。

セビージャ戦に多かったが、敵陣深くまで押し込んだ際の選択肢が少なくなり、止まってしまうことが多々あった。ここは左サイドのカラスコの仕掛けをどうサポートするかに依存してくるのと、逆サイドで待つリケルメに説得力がなかったのが悩ましい。結局こうなった時に一番期待値が高いのは鬼パスをピタリと収めて前を向けるコレアであり、その重要性と能力的希少価値は変わらない。ある種いないと成り立たない選手である。

先季終盤戦を欠場したオブラクは問題なくプレーし、相変わらずのシュートストップとハイボールの安定性を誇る。ビルドアップのやり直しも丁寧かつ正確に左右に蹴り分けて、心配ながらも出来ることを確実に遂行していく。更なる積み重ねを期待したい。無理はせずにね。

開幕時点で、"先季のベースを生かして"という話ができるのがそもそもレビューを始めた19-20シーズン以降で初めてのことである。ずっとスクラップ&ビルドしてた気がする。今季は純粋に先季からの上積みを確認していく形となる。中間にEUROがあったでもなく、シーズン途中にW杯があるわけでもなく、コロナ中断の影響で極端に短いオフシーズンでもなく。ようやく通常の形でシーズン開幕を迎えることになる。

アトレティコはここ数シーズンで積み上がった物や積み上がらなかった物を見渡しても、まあ集大成でしょう。何の集大成と言われても困るが、コケ・グリーズマン・オブラクを軸にサヴィッチやコレア、ヒメネス、サウル、カラスコを中心としたチーム作りの、到達点になる。先季の選手名鑑にて、コケの重たい荷物を一緒に持ってくれるチームメイトが揃ってきたと書いた。まさにそういうチームになれているんじゃないかな。なれるといいね。

オブラートに包み続けてきたけど、恥ずかしがらずに言いましょう。今季は大きなチャンスがある。ラリーガを、CLを。取りに行くシーズンになる。ワクワクするね。

これにて準備完了。2023-2024シーズンを始めましょう。今季も一年、partido a partidoでよろしくお願いします。モチベーション高めてさあ、行きましょう。




最後に。


Vamos Giuliano.
Stay strong.

Vamos.

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