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今と未来とを見てみる アトレティコvsポンフェラディーナ 2022.12.14

W杯も佳境、アルゼンチンvsフランスの決勝にはアトレティコからもデ・パウル、モリーナ、コレア、グリーズマンが出場する。3位決定戦のクロアチア代表にもグルビッチがいる。

そんな中でも再開に向けてラリーガクラブは練習を開始しており、アトレティコはこのタイミングでセグンダのポンフェラディーナとのトレーニングマッチに臨む。

ちなみにセグンダはW杯期間中も普通に試合をしており、ポンフェラディーナは12日にルーゴに1-0で勝っているし、今週末18日も普通にミランデスとアウェーゲームがある。なんで試合してくれたんだ?ちなみに今18位。降格圏間近ですが。本当に大丈夫ですか?
ちなみにこのチームにはルカクの弟がいる。この日はメンバー外。



●スタメン
・アトレティコ

オブラク
ディエス / サヴィッチ / エルモソ / ヘイニウド
コンドグビア / バリオス / ルマル / カルロス・マルティン / カラスコ
エティアン・ゴンザレス


アトレティコは4-1-4-1に配置してスタート。W杯出場選手からはカラスコがスタメン出場。ヴィツェルは登録外。ヒメネスもいない。おそらく傷心旅行中、あるいはFIFAの関係者に手作りのカップケーキを作っているところだと思うのでそっとしておきましょう。Amazonの欲しいものリストがあったほうがいい場合は気軽に言ってくれよな。

Bチームの選手がちらほらいるが大体見た事のある選手。
トップのエティアン、と読むのか?Ethyan Gonzalezは2002年生まれの20歳。今季はBチームで13試合3ゴールという成績の185センチのFW。テネリフェからレンタルで借りている選手だが、先季はテネリフェBでも全然試合に出ていない。


ポンフェラディーナ側は、大変失礼な話だがなんと読むのはわからないお名前もちらほらあり、そして選手交代もものすごく多かったので選手名の表記の間違いはご愛嬌ということで。よろしくです。




とんでもない豪雨の中試合開始。


●前半
まずアトレティコが保持で取り組んだ事は両サイドでのトライアングル形成。特に左。ヘイニウド、ルマル、カラスコで構築する。

実はこれは、おれが個人的に後半戦でアトレティコが意識するだろうなと考えている事そのものである。前線はモラタとグリーズマン。左右にトライアングルを作ってグリーズマンがトップ下のような立ち位置からプラス1サポート。モラタはCB間で駆け引き。という形を軸に戦うんじゃないかなと思っている。なので、別にこのタイミングのトレーニングマッチは使える選手も限られるしこの日の配置が何かの参考になるわけではないが4-1-4-1ないし4-2-3-1のような配置は想像していた。

とはいえグリーズマンがいない試合で意識してもそんなに意味はない。意識しなくてもできるべきだし。ルマルが代わりにそのタスクをテストするのかと思ったが明確にそんなチャレンジもなかったので。一応23分にはそのルマルが右側のトライアングル(ディエス、バリオス、マルティン)に関与してポケット進入、バリオスに決定機を作った。まあこんな形でしょう。標榜しているのは。あとはこの日はアンカーポジションにコンドグビアが入ったが、彼は右から来たボールを左、左から来たボールを右、が別に上手くないので攻撃のやり直しをコントロールするにも至らず微妙な出来になった。
それに、点になるかどうかは置いておいてもヘイニウド、ルマル、カラスコなら無限に進軍できるし押し込める。相手が2部のチームなら尚更である。あまりピンとくるテスト要素はなかった。


一方で非保持。ポンフェラディーナがGKと2CBからの地上戦ビルドアップを基本形としていた事からも、アトレティコは前線からのプレスの掛け方が前半の主な議題となった。

ポンフェラディーナは24番のサビット・アブドゥライの右落ちがビルド開始のポイント。3-1でのビルドアップ構築を基本形とする。アトレティコはトップのエティアン一人では制限が効かず、序盤はルマルがサビット目がけて中盤ラインを外れる。カラスコはそのまま相手右SBの2番アウダイールを監視。
で、結局ポンフェラディーナのビルド隊はみんな上手いですねという話でなかなか前進を制限できない。4人vs2人で外されつつ、さらにGKの足下技術がかなり高いので何度もやり直しをされ、追いかける意味が微妙になってゆく。
ちなみにこのチームはスペインのセグンダあるあるなのかもしれないが前線の選手は特に特徴がなく、どこでどうやって突破しようかという狙いがあまり見えない。セグンダは本当にこういうチーム多い。そこに盛りを過ぎた電柱が突然ハマったりするのもセグンダあるあるなのかもしれない。それこそストゥアニとか

それでは、制限がかからないならもう一枚、という事で右IHのバリオスまで高い位置に出て左CBを捕まえにいく。ここで両SH(カラスコとカルロス・マルティン)がIHの2人、及びコンドグビアとどう協力して守備ブロックを作るのか、が次の議題となった。じゃあ両SHが前プレに参加してIHは中盤に残って4-3-3でええやんとも思いつつ、多分話の発生順序が

①IHが前に出て限定・ポジトラの起点ポジション
②SHはSBとの縦関係を整理

という順番に出てきたのでまあこれはこれで仕方ない。テストマッチだし。結果的に全然良くなかったけど。ポンフェラディーナは4-2-2-2って感じで2列目の21番アレックス・ディアスと17番ヘリベルト・タバレスが内側に立ってコンドグビアの左右で結構浮いてた。先制点もそこから取られている。そしてバリオスは相手選手を背中に置いてボールを受ける事に長けているわけでもなさそうなので前プレの流れで高い位置にいてもあまり効果的にボールに関われず、起点になりたいならもう少し低い位置で前向きにボールを触りたいところ。ここは可哀想ではあった。



で、31分に失点する。
前線が追いかけるもののGKマカリーゼを使ってリセットされる、を序盤から連発していたが、この場面も同様でプレスが掛からなかったところでカルロス・マルティンまで最終ラインを深追い。そのくせフリーで配球され、コンドグビアとディエスの間で微妙にコミュニケーションのエラーな様子もありつつ裏抜けを許し、17番ヘリベルト・タバレスに決められた。良いシュートだった。登録名はヘリなのかな?
まあ連携やらコミュニケーションエラーは別にこの試合で指摘する意味もないのでどうでもいいが、前プレの方向性はちょっと変えた方が良いんでしょうねという失点。



●前半終了
0-1で前半終了。やっていた事は書いてきた通りだが、少し残念だったクオリティの話を。

相手ビルドアップを追い込んでロングボールを選択させた際に、右サイドのディエスとカルロス・マルティンの箇所でハイボールを跳ね返せないところがややネックになっていた。この2人とバリオスの3人で作る(作りたい)右サイドのトライアングルはトランジション局面でのプレーの正確性も微妙で、カウンターに行けずにパスが引っかかるところも散見。まあコンドグビアも似たようなもんだったが。各所にスキルは見せた選手達だったが、バリオスも狭いエリアでの1stコントロールは特筆するレベルのものは見られず。なにもロドリゴ・リケルメのレベルでやれると思っていたわけではないが多少期待値よりは低い出来。前半のプレーを見た感想ではボール扱いで一番違和感がなかったのはディエスかな。良いミドルシュートも打てていた。バリオスも一本あったけど彼の評価基準はもう少し上でしょう。


●後半
アトレティコはレギロンとサウルをin
ルマルとエティアンを下げた。
これで配置を変更。

3-4-2-1かな。そしてポンフェラディーナも信じられないほど選手を替えたがあんまりよくわからないので間違ってるかも

後半のアトレティコは相手のビルドアップに前3枚をガツンとぶつける。ハーフタイムにシメオネに2人くらい殴られたんじゃねえかくらいの勢いで出足が良くなった。相手最終ラインも前半のメンツよりは技術的に劣る選手達だったのかもしれない。

ボール保持に関してはサウルがちょっとレベルが違った。このクラスの相手だと反則級に質が高く、たぶん全部サウルにボール預けていれば勝てるレベルで簡単に前進できるようになってしまったので色々参考にならないかもしれない。わざと相手に近づいてマークを引きつけて、そのままボールを引き取って前を向けてしまうんだからどうしようもない。そしてレーンを横断してボールを進め、大外の高い位置に簡単に1vs1を用意した。サイドでレギロンが勝負すれば止められるはずもないので放り込んでれば勝てそうな気配もありつつ。でもあんまりBチームの選手達のテストにならないかもねという状況に。


と思いきや55分、2点目を取られる。なんでやねん。ちょっとアトレティコの前プレも落ち着いたところで、右SBアウダイールからアバウトなロングボール。これも先ほど指摘したカルロス・マルティンとディエスの間に飛んできたボール。サヴィッチが仕方なく対応しようと気を利かせたが中途半端に入れ替わられ、そしてヘイニウドは何故か最終ラインにいなかった。お前さては話聞いてなかったな?ちなみに最後かわされたエルモソは信じられないほど軽かったが見なかった事にする。雨のせいにしよう。諸々全て。決めたのはまたもヘリベルト・タバレス。


64分にさらに3枚替える。

フェリペが3CBの中央、アルベルト・モレノを右のトップに。そしてギスメラを中盤に入れてサウルを一個前に動かした。

配置上はおそらくバリオスが中盤に降りたのだが、ここから彼はかなり可動域を広くしてカラスコが高い位置に抜けて空いたサイドのスペースでボールを引き取り、さらにライン間ハーフスペースにポジションを取ってアルベルト・モレノと並列になるなど工夫した。普段一緒にやっているメンバーが増えてお互いやりやすくなった様子。反撃は76分、レギロンのFKにヘイニウドがフリーで飛び込んで決める。ヘイニウド、アトレティコでたぶん初ゴール。少なくとも公式戦では決めた事ない。


ここで最後の交代。3枚替える。

3CBの左右を入れ替えてマルコ・モレノとコスティスを入れる。どちらの選手も初めて見る。そして最前線にディエゴ・ブリを置いて、カルロス・マルティンを再度右大外に動かした。

ここからBチームの選手達が躍動する。80分に同点。良いポジトラでブリが前線で起点となりサウル経由で左大外のレギロンへ。縦突破して折り返しにアルベルト・モレノが振り抜いた。お見事。囲んで奪って、最前線を使って一気に押し込んだ攻撃。良かったです。

これでポンフェラディーナ側の糸が切れたのか、一方的な展開に。83分にはカルロス・マルティンが読みを効かせてビルドアップでボールカット。やっと高い位置で奪えた。アルベルト・モレノを使って戻ってきたパスをカルロス・マルティンがゲット。
86分には相手のFKを跳ね返してバリオス、アルベルト・モレノ、カルロス・マルティンの3人でカウンター完結。カルロス・マルティンの2連発で勝負あった。最後は良く走った。




●試合結果
道中わたわたしたが結果は4-2。8人を入れ替えて色々な選手を試した。最後はサウルと愉快な仲間達になり、Bチームの選手達も皆、普段着のプレーが出たのではないか。レギロンも特徴が出せた。

・未確認の課題
さて、この試合で個人的に注視したいと思っていたのはネガティブトランジションの局面であったが、あまりそういった試合にはならなかった。後半はボールカットから得点に繋げた場面はあったがどちらかというと相手の体力や集中力に問題があった場面で、アトレティコ側のトランジションの狙いは見えてこなかったのが少々心残り。
今のアトレティコが保持のバランスを整えるために必要なのはどう考えてもネガトラの意思統一であり、シメオネがどんな準備をするのかは興味深い。いつまでも保持を安定させるために保持の事だけを考えているようだと近年の堂々巡りから抜け出せない。アトレティコは今変わるべき時に来ている。ここからは改善が見られないのならしっかりと断罪していくフェーズだろう。目を離さず観察していこう。


・Bチームの選手達への評価
この日はかなりの大雨で、ピッチはスリッピーでボールの扱いも難しいところがあったかもしれないが、Bチームの選手達は全員ギラギラしたものを見せていたのではないか、という印象を受ける。それはある意味では当然で、今のトップチームの状況は彼らがアトレティコに入団して以降で最も壊滅的な状況である事は充分理解しているだろう。偉そうな物言いだがギラギラしてもらわないと困るのだ。チャンスだぞと。隙を見せても不足点を晒しても、それでも尚がむしゃらにゴールに向かった若者達の後半のプレーは高く評価し、未来に期待したい。

特に毛色の違いを見せていたのは後半途中から出場した32番のアルベルト・モレノ。Bチームの選手達は各々、彼のポジションを軸に指標としてプレーしていたように見えて、彼が入ってから明らかに配置とパスワークのバランスが向上した。きっとBチームでも中心なんでしょう。
特にバリオスはアルベルト・モレノに任せるところ、近づいてコンビネーションを使うところを明確にし、ゲームを動かし始めた。が、少し厳しい見方をすれば既にトップチームデビュー済のバリオスは前半のメンバーの時から自分で動いて同様のプレーをして欲しかった。Bチームのメンバーに囲まれた時だけ司令塔になれる、では話にならない。もっとできる。

当のアルベルト・モレノは同点ゴールを決め、その後のカルロス・マルティンの2発を共にアシストした。確信を持って振り抜いた右足は未来に繋がるはず。得点に関与できるアタッカーは現在トップチームが探している選手である。期待値は高いだろう。

ボール奪取と走力で取ったゴールを4得点大勝!と言う気もないしテストマッチの2失点をグチグチ言う気もない。ただ最後のロングカウンターを走り切った3人中2人がフル出場の選手だったというのは良い成功体験にもなったのではなかろうか。プリメーラでも是非活躍してほしい選手達だった。

同時にトップチームの選手達の取捨はより一層加速していくはず。一試合単品で評価を上げ下げするわけではないが、CLもなくなったシーズンでベンチに座りっぱなしの選手を置いておく余裕もチームにはないだろう。この日出場したトップチーム各選手の未来も、アトレティコにあるのか、ないのか。もちろん全選手好きな選手なのでしがみついてほしい気持ちはあるが、この冬に判断される事項は少なくない。



12/14
ポンフェラディーナ 2-4 アトレティコ
得点者
【ポンフェラディーナ】'31 '55 ヘリベルト・タバレス
【アトレティコ】'76 ヘイニウド '80 アルベルト・モレノ '83 '86 カルロス・マルティン




●出場全選手短評
オブラク
普段通りのプレー。気遣う場面が多かったが普通にプレーした。

ディエス
ボールコントロールとボディコンタクトは特に問題なし。
ハイボール対応とトランジション時のクオリティはまだまだ。
その分後半のWBでのプレーで時間とスペースを得ると活き活きとプレーできた。

サヴィッチ
ロングボールのフィーリングが合わずに苦労した。駆けっこに付き合わされる場面も多く忙しかった。

エルモソ
結局ビルドアップはエルモソをスタメンさせれば概ね解決する。中距離のインサイドパスの質が抜群に良かった。さて、弱点をどう隠していくかだ。

ヘイニウド
4バックのSBでは相変わらずチャンスメイクは限定的。2失点目はおそらく認識ミスだと思われる。
後半にはセットプレーからついにヘディングでゴールを決めた。

コンドグビア
このレベルでも保持の基準点にはなれず。得意な展開ではなかったのはわかるが。

バリオス
前半は遠慮がち。後半自分自身で配置を選べるようになると自在にボールを動かした。90分最後まで走り切ったのも見事。

ルマル
与えられたタスクは中央でのリンクマンとカラスコを動かす仕事の2点。この相手ならどう考えても簡単な仕事に思えるがノーインパクトに終わった。どこに課題があるのか指摘しづらい。

カルロス・マルティン
4-1-4-1のSHではクオリティを出せず、途中のトップを経て右WBでらしさが出た。ゴール方向に向かえるドリブルは魅力的で、最後までボールコントロールはブレなかった。最後の2得点は集中してプレーしたご褒美。

カラスコ
W杯関連のイラつきもあったのかもしれないが、このクラスの試合でもなかなか周りを使う事ができず個人技に終始。右サイドでバリオスとアルベルト・モレノに使われる立場になった後半にようやく質が出せた。

エティアン・ゴンザレス
最前線で使われたが特徴的なプレーは出せず前半で交代。足下で欲しそうだったがなかなか出てこなかった。

レギロン
縦突破はこのレベルでは守備不可能なレベル。セットプレーでアシストも記録。後半戦のキーマンとなれるか。

サウル
ちょっとレベルの違うクオリティで後半の行く末を変えた。コンディショニングに成功しているなら助かるがどうだろう

アルベルト・モレノ
攻撃陣の配置、流れを一気に変えてみせた。こういうオーラのある選手は多分シメオネの好みである。自分で決め切ったところも評価されていい。今季中にトップチームで起用される存在。

ギスメラ
中盤に安定をもたらし、ボール奪取も怖がらず戦えた。アトレティコは育成段階ではこういうMF多いよね。一発で飛び込んで抜け出されたシーンは反省。2004年生まれの18歳でこの日の出場選手でも最年少。

フェリペ
ハイボールが飛び交った時間帯の投入で期待通りの活躍。さて、移籍か残留か。

ディエゴ・ブリ
得点は巡ってこなかったが前線で身体を張ってボールを収めて同点ゴールの起点に。必要な役割をしっかりこなした。投入されてからチームが逆転したFWを評価しない理由がない。高く評価できる。

マルコ・モレノ
明らかに身体がでかく、ボールコンタクトも力強かった。Bチームでは今季2点決めているとのこと。

コスティス
ボール関与はほとんどなかったが、左利きのCBが不甲斐なかった試合でミスなく試合を締めた。

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