進化するシメオネ・アトレティコver3.3くらい 15節 アトレティコvsカディス(A) 2021.11.28

さてラリーガ。気を取り直してね


CLでミランに無気力と表現したくなるような試合内容で負けたアトレティコ。崖っぷちである。ただ、あと一歩で奈落の底に落ちそうでも、試合はある。気を取り直して、と簡単に書いたが、実際には気を取り直す時間は与えられない。サッカーは続いていくのだ。やるしかない。

対するは、開幕前おれが降格予想していたカディス。現在16位。プリメーラ2年目はどこからも点が取れない厳しいシーズンに。
アトレティコは先季、ホームで4-0アウェーで4-2と派手に勝っている。

今季も相変わらず最後まで頑張れるチームで、最後の最後にセットプレーで、みたいな試合もいくつかあるが、やはりそれだけでは厳しい印象。前節は最下位ヘタフェに両サイドから好き放題放り込まれまくってボロ負け。最後はハイメ・マタに見た事ないスーパーゴールを叩き込まれて0-4で負けた。ちなみに今季はまだホーム未勝利だ


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
サヴィッチ / ヒメネス / エルモソ
コケ / デ・パウル / ルマル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / スアレス


CLミラン戦と同じセット。闘魂注入、次の試合も同じ11人でやれ。また腑抜けた試合をしたらわかってるだろうな?とチョロが言って送り出したはずである。たぶん
現実的にボール保持の課題解決をしていきたい一戦になる。どうなるやら。


・カディス
レデスマ
イサ / ハロヤン / カラ / エスピノ
ヨンソン / アレックス・フェルナンデス / サルビ・サンチェス / アルベルト・ペレア
ロサーノ / ソブリーノ

全マッチレビューした13節と同じスタメン(アトレティックに0-1勝利)
両SHで決定機創出できるかがカギ。前節放り込まれ放題だったサイドの守備に何らかの対策はあるのか、あくまでも中央で跳ね返すのか、見ものである

スタメン



●前半

さてミラン戦と同じメンツで入ったアトレティコだが、構造は大幅に変わっていた。個人的にはかなりビックリ。

じっくりと見ていく。

まずは配置。
ルマルがいつもの左ではなく右へ。ビルドアップ配置もイジってきた。

画像1


2-3-5。突然近代化するシメオネ・アトレティコである。
コケが右に大きく移動。エルモソがCHの2人と並列になる形で立つ。コケがジョレンテの後方をサポートできると同時にサヴィッチのビルドアップタスクを軽くできる良い配置だと思う。カディスがCBまでプレスに行く意思がなかったので良いトレーニングになった前半だった。

ルマルを一つ前で使う事は、決定力の点で大幅にリスクを伴うので、個人的にほぼ頭から排除していた考えだったが。ここで試した。面白いねぇシメオネって。

ルマル


ルマルらしいプレー。カラスコが持ったシーンでグリーズマンがファーに消える。カラスコがスアレスとのワンツーを使っている間にルマルが背後へ侵入。


後述するがこの日のアトレティコはグリーズマンが頻繁に降りてきてボールを引き出す動きが憎い。目が何個付いてるんだっていう視野範囲で驚く。特にデ・パウルがボールを持った時は自信を持ってボールを受けに来る。


●カディスの話
対するカディスの攻撃。基本的に真ん中をこじ開けるような狙いはなくサイド攻略。CH2枚はネガトラ対策とバランス。そして大外へのロングボール。

右はサルビ・サンチェスに一人でよろしくね。という形。ここのサルビ・サンチェスvsエルモソはスピードのミスマッチがとんでもなく際立っており、何度か単独突破を成功させた。

左はこのチーム随一のボールキープ力のあるアルベルト・ペレアと、このチームで一番元気なエスピノのコンビで攻略を狙う。こちらも良いコンビ。

個人的にこのチョコ・ロサーノとソブリーノの2トップコンビはお気に入りである。どちらもサイドに流れる動きを厭わず、なりふり構わず頑張る選手。このチームには適しているだろう。特にソブリーノはサルビ・サンチェスを外側からサポートしたり逆サイドまで流れていったり、サンチェスが攻め残りする時は当たり前のようにサイドの守備に降りてきてまたカウンターで走って、という元気キャラ。ファンにシンパシーを与えられるタイプの選手だと思う。今季まだ無得点だが報われてほしい。


●前半終了
アトレティコは変更点が多かった中、枠内シュートが打てない等はあったものの、良いチャレンジだった。1点取れておくと楽だったけど、後半も同じ仕組みで見られるなら文句はない。

カディスは多分守備対応を変える必要が出てくる。
大外よりもライン間使われない事が必要と思われるが、さて


●後半
後半はカディスのセット守備の対応が変わる。具体的にはSHの矢印が前(コケ、エルモソ)を向くように変えた。

後半

ライン間を止めるよりも球出しを止める、という強気な対応。僕は4-4でセットした方が良いと思いますが。強気すぎるかなと。


後半は良い点、書き残しておきたい点が複数あったので、いくつかまとめて書いていく


・先制点の意義
アトレティコの先制は56分。
左大外のカラスコを頻りに使っていた後半。
最後はPA内に4枚。
決めたのがルマルなのは本人の自信的な意味でも良かったと思う。64分に1対1を普通に止められたのはご愛嬌

この場面、左大外レーンをカラスコとエルモソが取り、”絶対にクロスが上がってくる”環境を用意した事によって強気に4枚がエリア内にラッシュした。最近クロスからの得点の気配が一切なかったのでお気に入りのゴールだ。

先制


ポイントにしたいのは逆側WBのジョレンテがPA内(どころかゴールエリアまで)侵入した事。この4枚目の動きはこの得点において重要だった。が、それ以上にジョレンテにとって非常に意義のあるプレーだったと思う。
右WBでプレーする彼はどうしてもトリッピアと比較される。僕もいつもそういう目で見ている。この日のジョレンテはこのシーンも、ワンツーを使って右サイドを切り裂いたこの次の2点目もだが、”トリッピアには出来ないプレーで勝利に貢献した”。これはとても、とても重要な事だ。
ジョレンテはナルシストなくらいがちょうど良い。馬鹿で良いのだ。迷いながらプレーするべきではない。この日の成功体験で彼がWBでも自信満々にプレー出来るようになるなら、もしCLポルト戦で、マドリーダービーで右サイドを切り裂くようなプレーが出来るなら、この日の勝利は3ポイントよりももっと大きな意味を持つ。そんな勝利になっていたら嬉しい


・ルマルとジョレンテ
普段は左側でカラスコと近い位置でプレーするルマルがこの日は右サイド。ジョレンテと近い位置でプレーした。2点目を引き出したのはこの2人のワンツーでの突破だったが、この日は非常に良いボールの引き出し方をし、普段左からの前進が多いアトレティコだが、この日は右からの前進を多めに構築した。
前述の通り、この日はコケが右側に降りて球出し。
後半に多かったが、この時のルマル、ジョレンテのボールの引き出し方が非常に巧みだった。


特に後半SHのペレアがコケへ強めに寄せるようになると、どうしてもジョレンテがボールを呼び込む位置は低くなる。

右1

この場合、ルマルは大外へ移動。SBエスピノがジョレンテについていけばフリーで受けられる、ルマルを気にしてエスピノが留まれば、ジョレンテがフリーで前を向ける。というプレーを繰り返した。

右2


もう一つグルグルしてジョレンテが裏を狙う形もあった。良い関係性だ。
また、コケがCBと並列くらいまで低くボールを受けてぺレアを引っ張り出すような受け方を意識していた。外へ開いてボールを受けるだけでも重労働だと思うが、チームのために最善を尽くす良いプレーだった。さすがコケ。


70分の2点目はこの2人の関係から。

裏取り1

逆サイドからの展開。コケが内側で受けて、大外で待つジョレンテへ配球。ルマルが裏を狙うアクションにエスピノとロサーノが過剰反応。

ロサーノが”エスピノは出てくるな”とジェスチャーし、ここでルマルが立ち止まる。

裏取り2

押し下げられるCBに対し、留まったエスピノ。使いたい背後のスペースが空く。ここをワンツーで解決して、クロスにグリーズマンが合わせた。理想的なコンビネーションによるサイド攻略だった
そしてコケがジョレンテの背後をカバーするスピードをちょっと見直してみてほしい。異常。


・コレアとクーニャ
73分に同時投入された2人。多分この2人は相性が非常に良い。
ちょこまかと動き回るコレアと頻繁に立ち位置を替えるクーニャ。不思議と常にお互いのポジションが視野に入っているような角度でプレーしており、2人でこじ開けられそうな場面をいくつか見せた。なにやら新しい化学反応を生みそうなコンビだ


・グリーズマンの存在
ここをピックアッププレーで解説する。迷わずこの試合のMOMに指名したいプレーだった


・強固なCB
特に前半、カディスのクリアは主にセンターサークル付近への苦し紛れのハイボールだったが、一つも間違える事なく跳ね返し続けたサヴィッチ、ヒメネス(途中からフェリペ)は、頼もしい活躍であった。


2-0の時点でほぼ試合の行く末は決まった感があったが、その後中央を完璧に崩してコレアが決め、チョコ・ロサーノががむしゃらに蹴っ飛ばしたボールが奇跡のコースに飛んで入っちゃって、最後はグリーズマンのスルーパスをウィル・スミスに激似のクーニャが思いっきりぶち込んで、試合終了


●試合結果
派手に勝った。これでアトレティコは先季からカディス戦で3試合連続の4ゴール。

カディスも前半は両サイド深くからクロスを上げて勝負、という形を作れており、ここで先手が取れていれば間違いを起こせる可能性はあったが、やはりストライカーがいなかった。終盤に電柱界の巨匠アルバロ・ネグレドが出てきたが、その頃にはオープンゲームになっておりもはやセットプレーしか仕事は残されていなかった。


・完璧ではないが
ただ、アトレティコにしてみれば前半、嵌め込むような守備はほぼなく、カディスにクロス・シュートで終わられる場面が頻発。ボールへのプレッシャーもやや甘く、エルモソがサルビ・サンチェスに振り回され続け、ヒメネスは顔面エルボーでKOされた。
先制点の時のシメオネの喜ぶ以上に安堵したような表情を見ても、胃がキリキリしていた事は間違いなく、この11人をピッチに配置する事はおそらくシメオネの好みではないのだろう、と思った。


・チャレンジがチームを強くする
ただ、良いチャレンジだったと断言する。この試合で得た経験値がどこかでモノを言って欲しいなと願っている。良い試合、良い勝利であった。
ソシエダとセビージャが星を落とし、これでアトレティコは首位に立ったマドリーと4ポイント差の3位。冬の王者も射程圏に入ってきた


11/28
ラモン・デ・カランサ
カディス 1-4 アトレティコ
得点者
【カディス】’86 ロサーノ
【アトレティコ】’56 ルマル ’70 グリーズマン ’76 コレア ’87 クーニャ


●ピックアッププレー
ライン間最強プレイヤーとして存在感を存分に発揮した。グリーズマン。彼の特に良かったプレーは、”もう一つ落ちてくる動き”だ。

画像10


図はコケが持った場面。グリーズマンは中盤ラインの手前まで降りてくる。この時、コケは自分の視野内で後出しじゃんけんが出来る。

画像11

パターン1。
グリーズマンにボールを入れる。どれだけ速いボールを入れてもグリーズマンならコントロールミスはない。強いボールを迷わず蹴れる。
グリーズマンも複数の選択肢を持つ。前を向ける程度のプレッシャーであればルマルへパス。相手CBに対して3対2を作る。
プレッシャーが強ければレイオフポジションでフリーで待っている2人に落とす。

画像12


パターン2。
アレックス・フェルナンデスがグリーズマンへのパスを警戒すれば、ルマルへのパスルートが開く。コケはこの2択を後出しで選ぶだけで良い。
グリーズマンはライン間に立っているだけでなく、味方の球出しを楽にさせる動きを常に取っていた。この日は彼が一番活きるシステム、配置だったと言えるかもしれない


●ピックアップ選手

グリーズマン
神出鬼没の動きで縦パスを引き出し続けた。
右足で合わせたチーム2点目も簡単なシュートではなかった。MOM。

コケ
彼に依存する箇所の多い試合で神経を使っただろうが、タスク過多こそが彼の活きる試合だ。後半は相手SHを誘き出すような立ち位置でジョレンテとルマルを活かした。見事な働きだった

ルマル
いつもと違う右サイドでのプレー。彼自信、手応えのあるプレーだったのではないだろうか。ヘディングで合わせて先制点も決めた。1対1はご愛嬌だ

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