見出し画像

加速させるローテーション 17節 アトレティコvsアトレティック(A) 2023.12.16

CL6節ラツィオ戦から中2日。寒そうなビルバオでのアトレティック戦。前回対戦。

アトレティックは前節アウェーのグラナダ戦。日曜日の試合だったが、前半17分付近でスタンドのファンの方が亡くなってしまうという悲しい事故があり、試合が中断。翌日に再開する事となった。
もちろん仕方のない事である上でだが、アトレティック戦からするとアウェーで2日連続で試合の準備をした上、先制した試合(6分に先制していた)を翌日に追い付かれるという切ない結果に。しかも弾丸オウンゴールで。チーム状態が良いだけに残念だった。



●スタメン

・アトレティコ
オブラク
ソユンジュ / ヴィツェル / エルモソ
モリーナ / ジョレンテ / コケ / サウル / リーノ
グリーズマン / モラタ

ソユンジュがようやく初スタメン。真ん中はヴィツェル。デ・パウルをベンチに置いてあとは普段通り。

・アトレティック
シモン
レクエ / ビビアン / パレデス / ユーリ
プラドス / アンデル・エレーラ / サンセ
イニャキ / ニコ / グルセタ

デ・マルコスが怪我でレクエが右。怪我から復帰後は途中出場が続いていたユーリが10節バルサ戦以来のスタメン。
ベスガがベンチに戻ってきたが今度はルイス・デ・ガラレタが怪我した中盤は前節グラナダ戦がプリメーラ初スタメンだったプラドスとアンデル・エレーラ。




●前半

上手くいかなかったアトレティコを振り返る。ボール保持から。

後ろは3枚。中盤サウルがコケと並列。ジョレンテが縦挙動とモリーナとのリンク。グリーズマンが近づいていく。モラタは2CBと駆け引きし、リーノが左大外固定。
アトレティックは上質な4-4-2のブロックを準備。サンセとグルセタが協力して中央ルートを消して守る。ヴィツェルの配球に気を掛けながらコケを警戒していく。両WGは左右差をつけて、右のイニャキはエルモソのマークに注力。エルモソに近づく事によってボール奪取時のスタート位置を高くして一気に背後を取る、少なくともそういう危機感をアトレティコに抱かせるには十分だった。左のニコはソユンジュの対応をグルセタに任せて外のモリーナの位置を気にしながらジョレンテへのパスコースを優先的に封鎖していく。
中盤のエレーラ、プラドスのコンビは、エレーラがジョレンテ&グリーズマン付近を警戒し、プラドスはサウルまで圧力を掛けにいく。
これらの対応の結果ツケを払うのはSBになるが、アトレティックのSBはこれができるのが特徴であり強み。ユーリはモリーナ&ジョレンテが背後を取りに来る動きに対応。右の対人の化け物レクエは、ビルドアップフェーズではグリーズマン付近の様子を見ながら、ロングボールが出てきてからリーノの対応へ飛んでいき、結果的には完璧に封じ込めた。
では最終ラインからモラタへのロングボールは、というところでビビアン、パレデスがラインを下げて対応するのが上手く、モラタのポストプレーを発動させなかった。セカンドボール回収は五分五分だったが、後述のカウンター発動を考えると五分五分で利益があるのはアトレティックの方。アトレティコはなかなか選択肢が難しかった。

アトレティックの4-4-2は丁寧かつソリッドに整理されており、かなり好みである。別に特定の選手を貶すでも誉めるでもないのだが、アトレティコはこの日のスタメンでは突破するのが難しかった。せっかく最近ゲームモデルが染み付いてきて「今日は誰を使おう」というチームになれそうなフェーズに入っているので、話しておこう。

難しかった箇所は山ほどあるが、まずリーノから。単独でレクエを振り切れない環境で、その他何ができるかというと何もできなかった。グリーズマンがラツィオ戦同様右サイドのサポートに飛ぶ機会が多く左サイドで孤立していった。
そしてソユンジュ。ラツィオ戦では45分間のプレーの質も高く(3CB中央)、この日のスタメン起用に繋がったが、アトレティックの守備構造に放置され、突然”配球のポイントになりなさい”と言われてしまって難しいタスクを背負う事に。オサスナ戦でヴィツェルがされた放置にやや似ているが、アトレティコ側がソユンジュを中心に前進する意図がなかったので火傷はしなかった。
続いてジョレンテ&サウルのIHコンビ。サウルがコケの並列に立つポジションとなった。敵陣のライン間ハーフスペースでは良いボールの引き取り方ができるサウルだが、ビルドアップ局面では対して貢献できず。ダイレクトフリックばかりではなく飛び出してくるプラドスを引き付けてグリーズマンを浮かすような仕事が出来れば良かったが。大外に逃げて立つ形も納得感がない。

リーノではなくリケルメだったら内外のタスクの受け渡しができたかもしれないが、効果的ではなかった。
モリーナとモラタは普通にパフォーマンスが悪かった。

バルベルデ政権になって、保持と崩しの局面で大幅に力をつけたアトレティックだがこの日は4-4-2のブロックと高速カウンターに活路を見出した。4-4-2ブロックを仕込んだのは前任のマルセリーノ(現ビジャレアル監督)だと思うので、バルベルデは儲けもんなのか、それともバルベルデも引き続き構築していたのか、それは知らん。

アトレティックはボール奪取するととにかくサンセを探す。アトレティコは再奪回を狙うがこの日はそもそも失い方が悪く、むしろ”再奪回に行かずラインを下げるとウィリアムズ兄弟のスピードで一気にいかれる”というネガティブな環境。後ろ向きな発想のトランジション。どこかで言ったがトランジションで大事なのは「やったら良い事がある」という確信である。その確信が出足を良くさせるし気合が出る。ポジティブにネガトラをしないといけない。

ここでサンセを捕まえる事ができず、ただここにヴィツェルが出ていくと右も左もアホみたいなスピードで突っ走られているので何も止められなくなる。それこそウィリアムズ兄弟は「走れば良い事が起きる」実感を熟成させていた。それにしても速い。そしてアトレティコはそういうところ出身の割にはこういうサッカーにいつまで経っても弱い。

5分にイニャキに抜け出されて最後はグルセタのシュートをオブラクがとんでもないセーブ。12分にはヴィツェルのロストからイニャキが突破しポスト直撃のシュート。その後もニコに単独で抜け出され、サンセにフリーでシュートを打たれ、34分にはトランジションで抜け出したニコがPKゲット。サンセが外してどうにか耐えた。41分にはニコのとんでもないコントロールから決定機を作られている。



●前半終了

山ほどチャンスを作られ、アトレティコのシュートはグリーズマンの枠に飛んだミドルシュートが2つだけ。
採用されたスタメンについて書いたが、この日程を乗り切るための全体感でありそれ自体は何も否定はない。 "この日のメンバーはアトレティックにはハマらなかったね”という感想。
一番改善したかったのは中盤のボールの引き取り方で、ここにデ・パウル(orバリオス)が必要なのは自明。技術でどうにかする選手が必要。こうなるとモリーナ&ジョレンテがハマる試合ってどんな試合だったっけとなってくる。
突然配球を要求されたソユンジュは気の毒だったが「想像よりは上手いな」的な感想になれたら良かったがそんなこともなく、概ね予想通りだった。別に期待していなかったので落胆もない。シンプルに3枚の真ん中で強度が必要な場面の方がニーズがある。それだとヒメネスが健康な限り出番はないがどうするのか。

リーノが大外で質優位を持てないのは個人的には事前にわかっていた。ラリーガのSBで対人最強は左メンディ、右はレクエである。こういうツイートを試合前にしろよ。
この日のリーノに関しては突破を押し付けられない試合で何ができるかを中心に見ていた。それは中継点になるでも良いし、守備貢献でも良い。何ができるでしょうね。たくさん考えて欲しい。

チーム全体で相手のカウンターを止められないなら何をする必要があるでしょう、の回答も後半に求めたかった部分。正直一番簡単なのはCKかなんかで先制してしまって撤退する事だが、最近CKから点を取れるイメージがないですね。



●後半

後半からアトレティコは2枚替え。必要箇所の修正を早めに行った。
ロングフィードを蹴れるヒメネスを入れて3CBの真ん中に。やや放置されていた右CBにヴィツェルを置いてポイントを作ろうと模索する。そして低パフォーマンスだったモリーナを下げてデ・パウルをコケの隣に置く。

後半スタート時

理想はこのタイミングでアスピリクエタを入れる事なのかもしれないがモリーナを下げる関係で色々ややこしくなった。この日はデ・パウルのプレータイム制限があったので仕方ない。贅沢は言えない。

ビルドアップは形は変えずに人だけ入れ替えた。ヒメネスが中央左側からロングフィードを準備。右に移動してややプレッシャーから浮く事ができるヴィツェルからの配球を狙う。ヒメネスはミスキック連発だったが。
デ・パウルがコケの隣に入り、ヴィツェルと近い位置。早速ドリブルゲインを見せてくれた。そのために出てきたので良いプレー。直後に肘を振っていきなりカードをもらったけどまあいいでしょう。ところでモリーナの代わりにニコのマークを担当したジョレンテがいきなり縦に振り切られたのは衝撃だった。そのレベルまで来てるんだな。

その流れのCKから、逆サイドでボールを拾ったイニャキに2枚振り切られ、アンデル・エレーラからオートマチックにファーポケットに落としたクロスにグルセタが反応した。アーリークロスとファーポケットはバルベルデアトレティックが先季からずっと仕込んでいる形。グルセタの侵入を確認もせず振り抜かれたので仕方ないとも言えるが、あの角度なら絶対ファーポケットに来るとわかってるんだからもうちょい警戒できた気もする。ボールウォッチャーとまでは言わないが対応できても良かった。広義でボールウォッチャー。エレーラのボールは完璧だった。

アトレティコは60分頃にコレアとメンフィス投入。グリーズマンが左IHに動くかと思ったがここで交代させたのは意外だった。

これで4-2-4風にしてスクランブルを起こしたかったアトレティコだったが、ハイボール回収が上手くいかずに右まで出張してきたニコにゴラッソを献上。反撃ムードを止められ、ここでゲームプランは崩壊した。しかし前半にあれだけチャンスを外していたアトレティックだったが、決める時は呆気ないものだ。この日のニコは手が付けられなかった。アスピリクエタをSBに入れてジョレンテを前に出すところまでテンプレだったが機を逸した。

人を前にかければ当然トランジションはアトレティックの思うままになり、ヒメネスがサンセに振り回されてイニャキに決定機。オブラクがいなかったら5点くらい取られていたんじゃないか。

失点後の最大の誤算は、アンデル・エレーラとプラドスの2CHに試合をコントロールされた事。対人強度もトランジションのボールコントロールも、落ち着きも思い切りも何もかも上回られた。プラドスはまだこれがスタメン起用2試合目だがスタメン取りそう。最後まで走力を保てた事も評価されるし、サンセと相性が良さそうなのが厄介だ。

アトレティコはプレシーズンからこんな感じのメンツでよく試合をしていた気がするが誰が何をするんだかいまいちわからないまま反撃の勢いを上げる事ができず終戦。



●試合結果

0-2敗戦。今季一番のわかりやすい負け方をした。惨敗です。チームは過密日程のローテーションの最中で、残念ながらラツィオ戦以上に優先順位を上げる事はできず、アトレティック相手にベストなソリューションを準備できない試合となった。4月のホームゲームでは完璧な試合をしたい。

まあおれは変なポジティブなので、"スクランブルにも練習は必要"の考えに基づいて練習してくれればいいなくらいの気持ち。逆立ちしても負けは負けである。

ともあれ、これでマドリー、ジローナからはまたポイントを離される事になる。これ以上はさすがにまずい。ここからヘタフェとセビージャ。ジローナとの直接対決まで落とせない年末となる。

アトレティックは不運な事故でしんどい試合をした先週から気合を入れ直してホームでベストパフォーマンスが出た。これで7戦負け無し。今季負けたのはマドリー、ソシエダ、バルサだけだ。アトレティコにも負けろ。
中盤に怪我人を抱えながらポジティブなローテーションを見せている。バルベルデの仕上げはジェライとムニアインをチームに組み込む作業になる。


12/16
サン・マメス
アトレティック 2-0 アトレティコ
得点者
【アトレティック】'51 グルセタ '64 ニコ・ウィリアムズ


●ピックアップ選手

リーノ
レクエにシャットアウトされて厳しい攻防に。
それ自体はいいが、"高い位置を取れないとリーノの特徴は出ないよね"をどこまで許容するかだ。このチームのWBはそういう風にできていない。

ソユンジュ
ラツィオ戦のパフォーマンスが良かったが、ニコが突っ込んでくるエリアの守備はそんなに得意には見えず、放置されたビルドアップでの貢献も薄かった。45分で交代。

デ・パウル
ドリブルで運べというタスクを背負ってピッチに入ったが効果は限定的。連続失点の流れに飲まれて仕事ができなかった。

サウル
パス交換のペースを上げようと工夫していたようだが、本当はもっとサウル自身が保持のポイントになるべきだった。オフザボールの質に逃げるな。

メンフィス
プレー時間を伸ばしてきているが、今のところモラタとの差別化もコレアとのコンビネーションもよくわからない。必然性を自分で作らないといけない立場でしょう。

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

ラ・リーガ

with U-NEXT

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?