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示した設計図の出来は 1節 アトレティコvsヘタフェ(A) 2022.8.15

開幕です。
シーズンプレビューはこちら

さて今季も、一試合一試合やっていきましょう。お付き合いください。

開幕戦の対戦相手はキケ・サンチェス・フローレス2季目となるヘタフェ。前回対戦はこちら。

CL Round16ユナイテッド戦直前。この試合の2試合後にシステム変更があった、というタイミング。先季アトレティコが一番ふわついていた時期かもしれない。
ヘタフェはキケ先生が作った5-3-2(5-2-3)のボールプレスでアトレティコの前進を効果的に封鎖。アトレティコはコケの根性可動でどうにかプレス回避した。非保持もヘタフェの後ろに重い3-4保持に苦戦した。
今季のスカッドは、マティアス・オリベラがナポリへステップアップして行ったが最終ラインには降格のグラナダからドゥアルテ、リーベルプレートからアンギレリを補強。中盤にはポルトゥ(←ソシエダ)やルイス・ミジャ(←グラナダ)など気合と根性ポイントの高い選手を補強している。課題の前線もボルハ・マジョラル(←マドリー)に€10m使った。残留に向けて覚悟を感じる。ちなみにおれは先季のエネス・ウナルは確変だと思っているがどうだろうか


●スタメン
さあ開幕戦のスタメン

・アトレティコ
オブラク
サヴィッチ / ヴィツェル / ヘイニウド
モリーナ / コケ / ジョレンテ / ルマル / サウル
フェリックス / モラタ

プレシーズンマッチで見ていた配置の通り。
グリーズマンとジョレンテがどっちなのか以外はそんなに悩みどころもなかったのかなと。
ちなみにヒメネスはお腹が痛いらしく欠場している。

・ヘタフェ
ソリア
イグレシアス / ジェネ / ミトロヴィッチ / ドゥアルテ / アンギレリ
マクシモヴィッチ / アランバーリ / アレニャ
ウナル / マジョラル

右SBはダミアン・スアレスが怪我。ドゥアルテとアンギレリは早速スタメン起用。ルイス・ミジャも開幕には間に合わず。


さて、ワクワクしながら。試合が始まる。


●前半
前半。アトレティコの形はプレシーズンマッチでみた通りだった。まずはボール保持の基本形、ネガトラ、非保持の基本形、ゴールキックの時の考え方辺りをまとめる。

保持基本形

まずは保持の基本形。
ヴィツェルを真ん中に配置して後方3枚。CH2枚とWB2枚。モラタを頂点にフェリックスとジョレンテがライン間。が平均配置。

ここからズレを生むポイントはジョレンテとサウルの2人。配置に選手の特徴を上乗せした形で前進を目指す。

まずはジョレンテ。当然彼の特徴はチャンネルへのランニング

この日はヘタフェが最終ラインに5人並べていた事もあり、チャンネルラン自体が相手を切り崩す重要な手段では決してなかったが、ジョレンテのそれは相手の枚数やクオリティに関係なく得点に繋げられる手段である、という事は周知の通り。それがわかっているから、モリーナにボールが入るとコケとサヴィッチも近づいてきて選択肢を準備した。この試合だけを見ると、モリーナが”ジョレンテがチャンネルに抜けるなら自分は何をしよう”という回答は得られず。まあ正直ジョレンテにパス出してくれていれば点になる確率も高いし、深く考えなくて良いかも


押し込んだ際、ジョレンテのクロスにサウルがファー詰め、ルマルもセカンド回収ポジションを取っているのでネガティブトランジションがしっかり機能するかは今後の確認ポイントとなる。

続いてサウル。

大外立ちを起点に。状況に応じて内側にも立とうとしていたが、この日はヘタフェが5-3-2なので主に大外、CHのアレニャの脇で起点になる。一度サウルが足下で触る事で相手選手を動かし(イグレシアスとアレニャ)、その動きに応じてフェリックスがポジションを選択する前進を見せた。ルマルのサポートポジションも良かった。なぜ”サポート”ポジションと表現しているかというと、左サイドのビルドアップでルマルの役割は
・サウルにボールが入った時の平行サポート
・フェリックスにボールが入った時の後方サポート
・サウルにボールを出せない時にヘイニウドに選択肢を用意
であったからだ。ボールを受ける事ではなく選択肢をサポートする事が役割だった。可動域の広いルマルにぴったりの仕事。

そしてヴィツェルの存在によって、やり直してサイドチェンジの選択肢を常に保有出来ている。余裕があるのでサヴィッチはドリブルで一つ持ち上がって複数の選択肢を持ってプレーする。サヴィッチは選択肢さえ限定してあげれば良い縦パスが入れられる選手。

先制点はここから。持ち上がったサヴィッチ→モリーナ→コケとボールが回るところでロストしたが、そのまま高い位置でサヴィッチが回収。中央ルートを進んで最後はモラタの見事なフィニッシュだった。刹那のタイミングではあったが、スペースがあれば中央を突破出来る事はとても重要。手間がかかりそうなヘタフェの守備に対して、15分で先制点を取れた事は非常に大きかった。

さて非保持。
先季よりも大幅に整理され、優先順位の約束事も明確になっているように見えた。一枚の図にまとめる。

非保持基本形

優先順位の話をする。先季は2トップのボールの追い方などで大いに矛盾があった話は何度かしている。この辺りをちゃんとルールに落とし込んだ。
この試合で許容した事は
・相手CBにある程度フリーで球出しさせる事
・両WBにクリーンにボールを入れさせる事
はOK。一方で優先して封じたのは
・アンカーの経由
・CBの持ち上がり
の2点。真ん中を通過させず、外回りを誘導する。高い位置でボールを奪うという意図はなく、ブロックを用意してこちらの望む形でボールを持たせていた印象。

アンカーを封じられ外回りを強いられるとヘタフェのパスルートはWBの足下になる。ここを右はモリーナ、左はサウルがまず"抜かれない"事を設定する。そしてCHがボールラインくらいまで下がってくる。横パスを封鎖してバックパス以外の選択肢を排除していく守備。

もう一つ、CBの持ち上がりを牽制する事で、ヘタフェCBはある程度余裕を持ってくさびのボールを打ち込める。しかし距離が長く、これだけ時間的余裕があればアトレティコのCBは相手FWに前を向かれる事はない。このボールに合わせて中盤ラインを下げてFWにボールキープさせずバックパスさせる、という狙い。


ベストな構造になっているかは試合を重ねて選手を入れ替えた後に検証したい。例えばこれでヴィツェルが強度的にお話にならない、なんて事になると根本から考え直しになる。この試合ではとりあえずそういう事はなかった。アトレティックが開幕戦で良い4-1-4-1保持をしていたので対戦が楽しみだ。WGがスピードでWBの背後を取ってくる形とも当たってみたい。


続きまして特徴的だったゴールキックの開始について。

ヴィツェルが中盤の選手である長所を全面的に活かそうという配置。アンカー的に立ってオブラクから左右への球出しをサポートした。一点言いたいのはオブラクは非常に勇気を持ってチャレンジしていたという事。最大限に評価したい。もちろん両SBまで正確なボールが蹴れたら尚良いが

WB(モリーナとサウル)にボールを入れると、ヘタフェのWBが縦スライドしてくるのでその後方でジョレンテが派手にランニングして前進を助ける、という場面が何度もあった。
ただ、試合終盤にはオブラク→サヴィッチと渡ったところでヴィツェルを消されるとヘイニウドへちょっと危ない横パスを出してそこで詰まる、という形が連発したのでちょっと考えた方がいい。なんか危なっかしかった。今後の改善が待たれるという意味も含めてこれを後ほどピックアップします。


●前半終了
まずは先制出来た事。これが大切。モラタが自信を持ってフィニッシュしたのは良い傾向です。

大外からの放り込みでいくつかヒヤッとするシーンがあったが、ヘタフェはそういうチームなので頑張って守りましょうというところ。放り込みに対してヴィツェルの存在がネックになるなら色々考えものだが、ここまではそんな事もない。


●後半
後半も、前半と概ね変わらない印象のまま入った。
要因は前半のヘタフェがそもそも悪くなかった事だろう。ヘタフェ的にも別に変えなきゃいけない事はそんなになかった。放り込みから再現性のありそうな決定機も準備していた。後半はアトレティコの保持が上手くいっている事で、敵陣でのプレーが多くなり結果的にロングカウンターをもらうなど新しい面も。

アトレティコは59分、相手のバックパスにジョレンテが前プレのスイッチを入れてフェリックスが回収。とんでもないスルーパスをモラタに通して2点目。適切な例えかわからんがグティみたいなパスだった。これで2-0。


・豊富な交代策
アトレティコはここから選手交代を使う。デ・パウル、グリーズマン、カラスコの3枚の印象を上げていく。

・デ・パウル
先季の12節ベティス戦などでの特徴的だったが、やはり後方からボールをもらって循環させる役割は抜群に上手い。ボールを預ける安心感が桁違い。ネガトラのファイトも含め、先季以上の活躍が期待出来る。

・グリーズマン
どの角度からどのスピードでパスが来ても問題なくプレーする。65分には彼の縦挙動がモラタの裏抜けを引き出すなど、いるだけでチームに違いをもたらした。先季はスピードに劣る場面が散見されたがこの試合では一切問題なし。3点目のシュートは難しいように見えてグリーズマンなら当たり前のように決めるシーンを何度も見ている。

・カラスコ
低調なパフォーマンスに終始した。
もちろんボールを持って目の前の相手に仕掛けるような場面は良いのだが、これだけ前線に人数をかけている状況で足を止めた1対1がどれだけ効果的かは疑問。また、プレシーズンマッチでも指摘したがビルドアップで機能不全を起こしすぎる。ヘイニウドからボールを向かう身体の向きもボールにコンタクトするタイミングも非常に悪く、狙い所にされていた。途中出場であんなところにリスクを負う必要は一切なく、正直次はロディが使われてほしいという感想。
そしてサウルに比べて攻撃に偏重するカラスコを、1-0の状況で投入しようとしたシメオネの意図はなんだったか(※結局準備中に2-0になったが)
右WBのイグレシアスからのアーリークロスでいくつかピンチになっていた事を考えても不安な起用であった。


●試合結果
3-0快勝。願ってもいない好スタートとなった。
前線の3ポジション(モラタ、フェリックス、ジョレンテ)の機能性と交代の選択肢含め、よく準備したなという印象がある。気になったのはアーリークロスに対するファーサイドの対応くらい。あとはボールロストからカウンターをもらう時に足速いDFがいないなと。ここは背番号2がどうにかしてほしい。

この試合はまず今季戦う基本形を示した試合になった。前線の選択肢はもちろんだが、この形で守るならフェリペもエルモソも十分組み込めるように見える。特にエルモソの苦手なタスクが非常に減っているように感じたが、どうだろうか。はやく見てみたい。

次はホームでビジャレアル戦。他チームの試合も見ていてある程度思い入れがあるからそう思うのかもしれないが、楽な相手はいない今シーズン。日替わりスタメンを楽しみつつ、CLの準備をしたい

あらためて今季も、よろしくお願いします。


8/15
コリセウム・アルフォンソ・ペレス
ヘタフェ 0-3 アトレティコ
得点者
【アトレティコ】’15 ’59 モラタ ’75 グリーズマン


●ピックアッププレー
ゴールキックからのヴィツェルの使い方をピックアップ。
まずは良かった形を2つ。

72分。
デ・パウルに縦パスを通して、
相手2トップの間で浮いたヴィツェルの前向きを作って解決。
おそらくこれが理想の形。出し手(ヘイニウド)の勇気と受け手(デ・パウル)の技術が必要。後方ビルドに必要なのは何よりまず信頼関係。

次に74分。
ヴィツェルが間で顔を出してサヴィッチから直接引き取って前進。
フェリックスにくさびを通してグリーズマンのゴールに繋がった場面。たぶんヘタフェはこの場面のプレスが翌日のミーティングで出てくるはず。アンギレリが十分前進出来ているので、マジョラルはモリーナに出させるように立つべきだったかなと

で、それをやったのが83分。アトレティコにとってはよくなかった方。
オブラクからボールをもらったサヴィッチがヴィツェルへの選択肢を消されてヘイニウドへ足の長いパス。で、ここで詰まる。

ポルトゥが良い横スライドで選択肢を消して蹴らせる。右WBのイグレシアスも、セカンドボールを回収出来る良い位置で待っている。

要素はいくつかある。
まず、ヘタフェがヴィツェルへのボールを強く警戒している点。これは悪くない、というかアトレティコからしても想定出来る。そりゃ対策してくるよね。というところ。
次に、アトレティコはオブラクにボールを戻してやり直す、という選択を出来ればやりたくない、という点。

オブラクに戻せれば再び→サヴィッチ、→ヘイニウドの2択、さらにWBまで飛ばす、という選択肢を持てるが、サヴィッチ→ヘイニウドに直接蹴ってしまうとそうはならない。
これは仕方ないといえば仕方ないし、想定出来たといえば想定出来た。

じゃあどうするの?を色々と考えるべき。出来るかどうかは別にして、選択肢はある。まだまだチャレンジしてほしい。


●ピックアップ選手
モラタ
開幕戦2発。とにかくシュートが上手い。
圧倒的なスピードで切り裂いた。

フェリックス
3アシスト。見事なボールタッチで状態の良さを見せた。
最後はグリーズマンのプレゼントパスを決めきれず

サヴィッチ
空中戦勝利6回は圧巻。鋭い縦パスも刺した。今季も欠かせない。

ヴィツェル
アトレティコデビュー。
プレス回避と構築のやり直しで上質のパフォーマンス。
チームを変える存在になれるか

デ・パウル
プレス回避で圧倒的に一番良かった。彼の得意なプレーを発揮出来るチームになる予感。楽しみだ

グリーズマン
途中出場で文句なしのゴラッソ。
W杯へ向けて状態を上げる

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