ハナから総力戦のつもり〜アトレティコ・マドリー最新スカッドを読む〜 2022.08
どうもです。始まってますね、22-23シーズン。SPOTVだのAbemaだのに振り回されながら。
一週遅れて開幕のラリーガは引き続きDAZNorWOWOWで。今季もよろしくお願いします。
ツイートもしましたが今季、ロゴが変わりました。
マイフレンドゆうせいに描いてもらった激イケなホセ・マリア・ヒメネスです。髪切れ。
ちなみにヒメネスのインスタのアカウントと今季のユニフォームの画像だけ送って描いてもらいました。プロってすげえなオイ
※無断二次利用おやめくださいね、よろしくです。
さて、シーズン開幕前に。今季は珍しくプレシーズンもバッチリ見てるのでね。移籍市場も毎日transfermarktの最新の移籍ページを見てメモ取ってましたよ。なんでも聞いてくれよ。
■補強
まずはスカッドの変更点。
レンタル→レンタルみたいな選手は未記載。ネウエンとか
という感じ。ソレールは来なかった。代わりにフリーでヴィツェルが来たり、待望の右サイドにモリーナを獲得。悪くない夏だったのではないでしょうか。モラタを売るんかい、売らないんかい、がSNS上ではメインに騒がれていて誰も悪くないのに騒々しかったね
では補強を踏まえて、各ポジションの配員を。
では、プレシーズンから読み取った今季のアトレティコの形を話してゆく。
■基本形
プレシーズンで見て取れた基本形。
怪我人とかそのへんの事もあるのである程度は雰囲気で捉えてもらいたい。
では一つずつ見ていく。
・最終ライン
まずは最終ラインの考え方。ヴィツェルを真ん中に置いた。サヴィッチとヘイニウドの役割は先季とそんなに変わった印象はない。感覚値だが、"3人でカバーするエリアを少し広くする"意識を持っているように見える。HVとWBの役割というかカバーエリアをきっちり策定してきている印象があった。ここは注視していく。
・中盤と前線
中盤から前は、もう非保持の形を見ながら話してしまうのが早い。
5-2-3、あるいは5-3-2のように人を置いた。この形は相手チームのビルドアップよりも自軍の人選に依存するように見える。理由はカディス戦でコレアが出場した時間帯
5-4-1での配置を確認済。(メンツ違うかも)
点差と時間帯を踏まえて(3-0か4-0くらいでリードしてた)前に2枚置かなかっただけかもしれない。一応5-4-1は亜種という事で、5-2-3(5-3-2)の非保持の話をしておく。
グリーズマンは中盤ラインへ落ちる意識を常に持っている。
まあ、引き続きフェリックスとサウルの間にボールを運ばれた時どうするのか、が微妙にあやふやに見えたが、ここにボールを持って侵入してきてもらうのが狙いみたいな雰囲気もちょっとあるので注視していく箇所。
で、先季と違う狙いがありそうだったのは取り所の設定。
まず、前線2枚は目の前のホルダーにほぼ正対する。アンカーは割と空ける。大外も消す意識はそんなにない。正対する事が最優先。
正対
で、アンカーが前を向こうとしたところで5-3-2の3-2でプッシュ
ここを詰める
これ、狙ってやってた。で、こうなると当然中盤ライン超えたボール使われるんじゃないの、と思ったらユベントス戦で既に使われていた。
使われる。ヴラホビッチあたりに縦パスを入れられてた。
で、ここで前を向かせない程度の圧力で微妙に近づく対応をする。CB相手に突っ掛ける形を作らせなければいいよ、という形で対応。
つまり、中盤を越えるボールをある程度許容していた。面白いね。まあ5枚いるしな。
多分だが、この中盤を越えるボールの使い方が相手に問うていく箇所かなと。前線が4枚以下のチームだったら縦パスが入っても5対4で守れる。もっと前線に人数をかけてくる相手なら、前プレの圧力を変えるとかね。この許容がどう変化していくかは面白そうなポイントである。
■考え方
・ビルドアップ
ユナイテッド戦の前半を戦った右からジョレンテ、コンドグビア、ルマル、カラスコの組み合わせが絶望的にビルドアップ出来なかったところから始まっている。そこから印象が段々と良くなっていった。
まず、WBにボールが入ったところ(ユナイテッド戦ではカラスコ)でパスコース皆無のノッキングを連発。お話にならない状態であったが、左WBをサウルが務め、CHがコケとデ・パウル(だったかな)に変わると、ここから前進が改善した。
まず平行サポート。コケとデ・パウルはもう身体に染み付いているのだろう。当たり前のようにやる。ここでノッキングが起きない。ちなみにルマルは相棒がコケの時は右でも左でも平行サポートでボールを引き出せている。点になるコケと衛星のルマル、という組み合わせは悪くない。
そして最終ラインから球出しを行うヘイニウドも、サウルへのボールを第一の選択肢としつつ、その向こう側、大外目掛けてランニングしていくフェリックスを効果的に使えているのが印象的。
ここ
ヘイニウドは1stタッチの置き所が良く、長短どちらの選択肢も持てるボールの持ち方が出来ている。長いボールの質も悪くない。モザンビーク海峡パスと名付けようと思う
右側の前進はグリーズマンが中心。このシステムでは中盤ラインに入っての守備機会が増えているグリーズマンが、マイボールになった際に浮いてボールを引き出せる。
これはFWをやる時よりも彼が活きる部分かもしれない。彼をどの位置で使うのかが前進のポイントになる可能性は高いが、ボールの近くに置く選択が増える予感。
グリーズマンがターンすると右前方へモラタがランニングしてスルーパスを狙っている。ちなみにジョレンテがこのポジションをやっている時はモラタはあまり裏抜けを狙わない。
ジョレンテはジョレンテで、まず縦に速いのと、爆速のネガトラで再奪回を狙えるのと、守備能力が総じて高い事で、グリーズマンと違う特徴は出ている。が、あまり人々が期待している彼の長所が活きている感はない。なんとも使い道が難しいが、もはや彼はどこのポジションで使っても計算出来る選手になったので、シンプルに彼のプレーを楽しみたい。
そして待望の新右WB、ナウエル・モリーナ。
現状は伝え聞いていた通りの選手だと思っている。プレス回避の役割も長い距離のランニングも、そしてクロスの質も高そう。顔は若い頃の萩本欽一に見えてきた。
・ヴィツェルのタスクとは
おれは"アンカーを変えればチームのボール保持が変わる"とは全く思っていないので、ヴィツェル加入の評価も使い方次第だと思っていた。ビルドアップを変えるために変化が必要なのはあくまでもCBとGKであると考えている。これは別にアトレティコに限った話ではなく、もっと一般論の話。
そのため、ヴィツェルを3CBの真ん中に置くシメオネの起用法には納得感がある。ただ、まだプレシーズンという事もあり、相手チームの前線からのプレッシャーを回避していく、という場面は皆無。ヴィツェルを真ん中に置いているメリットもデメリットも、まだ未確認というのが現状だ。保持でも非保持でも持ち場を離れて前方にプッシュする動きがしっかり出来ているので、対人能力は置いといて彼のせいでシステムが機能しない、みたいなボトルネックになる事はないのではないか、と見ている。
個人的な理解としては、"常にアンカーがCB間サリーしている"くらいの認識で見守ればいいのかなと思っている
ヴィツェルはアンカー、と思えば
上で書いたCBの"3人でカバーするエリアを少し広くする"の意識改革には、保持時真ん中にヴィツェルがいる事は間違いなく大きく作用している。それだけでも効果はあるのかもしれない。
ともあれ"ヴィツェルがCBでいいのか"の結論はビルドアップの説得力よりも守備の強度の方で決定する可能性が高そうだし、まだ保留で。おもろい事やってるから見守りましょうくらいの感覚
・サウルは左WBに適任か
ここまでは適任であると言っておく。まず大外に置くにあたって、彼のヘディングの異常な強さと球際の狂気的な激しさはメリットを生む。後方からの強烈なスライディングはヒヤヒヤしつつも見慣れた光景が帰ってきた気持ちが強い。ラストサードの崩しを彼のドリブルで、というわけにはもちろんいかないが、上述の通りフェリックスが流れてスペースを使ったり、カディス戦の4点目の場面ではモラタが左大外へ流れてロングボールをもらったところから生まれている。全体でスペースの存在を共有出来ていれば良い。
最終ラインに吸収される動きも非常にスムーズ。今まで見ていたものはなんだったのか。
足の速い選手にサウルの背後を使われる怖さはあるが、幸い今は隣に裏カバーの鬼ヘイニウドがいるので大きな問題にはならなそうだ。左CBがエルモソの時はちょっと心配だけど、エルモソもヘディング強いからな。
そして前進する時はコケやグリーズマンと阿吽の呼吸を見せて内側へ侵入してくる。球離れが良く、スルーパスを狙っている点も、今季のFW陣と相性が良さそう。フェリックスがボールを触りに落ちてきた時にすかさずポジションを上げて配置をいじっている場面もすでに確認済。彼の長所を活かせるチームになっていると思う。
カウンターに少し遅れて追いついて強烈なミドルを捻じ込むシーンを、何度も見たい。お帰りサウル。見返してやろうぜ。
・FWの使い分け
フェリックス、グリーズマン、クーニャ、コレア、モラタと5人いるFW。スタメンで起用するのは2人or3人になりそう。ここに、WBの役割から解放されるカラスコが絡んでくるイメージ。贅沢なメンツですな
当初、
左:フェリックスorカラスコ
真ん中:クーニャorモラタ
右:グリーズマンorコレア
と考えていたが、グリーズマンのタスクがジョレンテと補完関係にありそうなのがややこしい。そして、クーニャは純粋なストライカーなのかという問題が。
先季を見てもスアレスの後ろでちょこまかやってる方が得点に関与していた印象もあり、シメオネが彼を9番と考えているかは微妙なのではないか。そう考えるとモラタの残留って既定路線だったよね、ともなる。
あくまでプレシーズンの印象だが、
左:フェリックスorクーニャorカラスコ
真ん中:モラタ
右:グリーズマンorコレアorジョレンテ
なのではないか。カラスコはユベントス戦では右のWBをやらされていた。まだ手探り。
前線は質の高いメンバーが揃った。楽しみにしていこうではないか。
・起用法が変わりそうな選手
まとめて書いていく。まずルマルは中盤で起用されそうだ。ユナイテッド戦は酷い出来だったが、コケとのコンビだったユベントス戦の印象は悪くなかった。周囲とのタスクの棲み分けを意識すれば出場時間は確保出来る。非保持のところで書いたアンカー狙いの囲い込みも彼の得意な仕事である。特徴を出していってほしい。
あとはカラスコ。今季はWBでの出場よりもフェリックスとのポジション争いになりそうな予感がある。守備タスクから解放されるというメリットがある一方、数字を出せなければ必要性が難しくなってくる(フェリックスにも言えるが)。ユベントス戦では右のWBで出たが、後方をヴァスが担当してカラスコを高い位置に押し出していた。良く言えば選手の能力に応じたカバーエリアの策定と言えるが、悪く言えばカラスコのためだけに非保持の形をわざわざいじっているのは、本当にチームにプラスなのか。
少しフェリックス寄りの言い方をすれば、フェリックスは連続起用した時にパフォーマンスが落ちる印象が強いので、そこを補完する役割をカラスコに果たしてほしい。その中でカラスコの長所をアピールすれば、自ずとポジションは彼に戻ってくる。勝負のシーズンになる。
最後にコレア。グリーズマンがやっている仕事もジョレンテがやっている仕事も、コレアがやってやれない事はない。これは断言する。ただ、コレアでなければいけない理由に乏しいのは事実である。彼ら以上に、コレアを優先しようとシメオネに思わせる何かが必要になる。そしてそれは、アトレティコ以外のクラブに行ったとしても必要だし、W杯で試合に出たいなら絶対に必要なものだ。いつだって彼の成長がチームの成長だった。伸び代を、まだ見せてほしい。
現時点で話したい事は以上となる。そして最後に戦い方と心構えについて。
今季前半戦最大のポイントはなんといっても過密日程にある。W杯が11〜12月にあるため、開幕から3ヶ月間でプリメーラ14試合とCLグループステージ6試合の計20試合を戦う。とんでもない日程だ。レビュー出来んのか
この日程において、はっきり言って誰がスタメン、誰がベンチ、なんて言ってられない。その日のベストのパフォーマンスが出せる11人を選んで試合をこなしていく。上積みやコンビネーションの構築よりもまずはその日の試合。アトレティコは得意とするところだろう。
・仮説と深読み
もしかするとここまで書いてきた今季の戦い方の基本形は、日替わりのスタメンになる事を意識して作っているのではないか。と仮説を立てる。このチームで替えが効かなかった選手といえばカラスコだ。だが今季前半戦の戦いにおいて、替えが効かないのは困る。プレータイムを分け合いながら、誰が出ても形になる基本形を用意する事、どのポジションにも複数のバックアップがいる事を意識して出来た基本形なのではないか。
カディス戦で右CBで出色のパフォーマンスを見せたヴァスは、WBでもCHでもプレーするだろう。今季のチームに必要なタレントだ。今季のチームの方向性は、そういった汎用性に傾いていくのではないかと予想する。役割が変わると書いたルマル、コレアはまさにこの"汎用性"にこそ強みがある選手。彼らの強みを再度、チームの中で発揮してほしい。
今季、特定のゲームプラン、必勝の得点パターンを選んでいくのは、W杯後で良い。まずは準備し、武器を増やす事。そして、目の前の試合の3ポイントを積み上げていく事。
何も変わらない。普段通り。partido a partidoだ。
22-23シーズンが始まる。マドリーは的確な、良い補強をした。バルサは大きく、強くなった。アトレティコは、どうだ。ワクワクしていようじゃないか。彼らがどんな準備をしていたって関係ない。赤と白を、せいぜい恐れてくれ。2強崩しは、アトレティコだけの喜びだ。これは世界で、アトレティだけの特権だぜ。
この記事をもって準備完了。我々の愛するアトレティコ・デ・マドリーの、勝利を願って。さあ始めましょう。
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