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過失は他にある 18節 アトレティコvsヘタフェ(H) 2023.12.19

2つ続けて中2日でのミッドウィークはヘタフェ戦。前回対戦。

この引き分け以降、ホームゲーム20連勝中。

今季のヘタフェは現在9位と好調。特に7節以降は1敗しかしておらず、その間4勝6分1敗と勝ち点を重ねている。
ちなみにアウェーゲームの勝利は週末のセビージャ戦が今季初めてで、ディエゴ・アロンソにトドメを刺している。
エースのエネス・ウナルが先季終盤の大怪我が原因でまだ出場無しだがボルハ・マジョラルがたぶん監督も期待していなかった絶好調で、すでに10ゴール。ファンミ・ラタサはわけのわからない競り合いの強さでしぶとい戦いをリードしている。ちなみに2人ともマドリー産。
あとは一か八かで獲得したグリーンウッドがチームに馴染み、時折り物議を醸すラフプレー上等の粘い強い守備で荒っぽくポイントを獲得している。日程が厳しいアトレティコにとってタフな相手。



●スタメン

・アトレティコ
オブラク
サヴィッチ / ヴィツェル / エルモソ
ジョレンテ / デ・パウル / コケ / リーノ / リケルメ
グリーズマン / メンフィス

リーノとリケルメが初めて同時先発。メンフィスは3節ラージョ戦以来のスタメン。

・ヘタフェ
ソリア
イグレシアス / ドゥアルテ / ガストン・アルバレス / ディエゴ・リコ
マクシモビッチ / ルイス・ミジャ / ハイメ・マタ / グリーンウッド
マジョラル / ラタサ

前節セビージャ戦からは怪我をしたジェネ→ドゥアルテだけ交換。最近継続しているFW4人いる4-4-2。ボルダラス監督は累積でベンチ外となった。




●前半

FW4人体制のヘタフェの守備。前の4人で配球を止めよう、ラインは高く保とう、という取り組みだったので、図らずも前節対戦のアトレティックと非常に似た配置になった。

アトレティコはデ・パウルがコケの並列。前節もそうだが、ここまで4枚で圧力をかけられるとエルモソがあまり中盤の並列になるような位置取りができない。
ヘタフェはコンパクトに中央を圧縮するが、アトレティコ最終ラインへのボールプレッシャーはそこまで強くは来なかった。シンプルにアトレティコは出し手が多いのでどこを止めたらいいねんとなる為。ここはアトレティコの最近の配球の強みである。
ラインが高い、出し手への圧力は弱い、と揃えば当然最終ラインの背後を狙うロングボールが生きる。受け手になったのは左のリケルメ。

ヘタフェは背後を使われる事も織り込み済

何度かフアン・イグレシアスとの1vs1を作ったが決定機演出にはそれなりの試行回数が必要な様子。リーノがここにどのように関わるかの設計も甘かった。見守り段階。

一発で回答を出せそうなのは当然右のジョレンテになるが、この前半はデ・パウルもグリーズマンも単独で抜けそうなジョレンテにボールを出せないシーンが目立った。特にデ・パウルはメンフィスの足下を狙う配球に固執し、ここ数戦通りにメンフィスのクオリティに問題がありチャンスを生めなかった。メンフィスの背後、ジョレンテの裏ランに正確な配球が出来ていたのはサヴィッチで、この辺のバランスは難しいところ。サヴィッチが出し手になるならデ・パウルが邪魔になりかねない環境。

ところでラインが高く出し手にプレッシャーが掛からなければ背後を狙われるなんていうのは当たり前だがヘタフェもわかっている。ヘタフェはここを許容できているのがチームとして強みでしょう。そもそも撤退を怖がらない。攻撃の選択肢が限られていながら、その選択肢の精度が高くシュートチャンスを作れる自信があるので押し込まれる事を何とも思わない。

そのヘタフェの攻撃の設計。シンプルでリスクを冒さないが、シュートまでいける。というかシンプルでリスクを冒さず点になるならそれが一番合理的に決まっている。だから今のヘタフェは強い。

CBの選択肢はSBの足下かCHの足下。駄目なら蹴っ飛ばす。蹴っ飛ばされる前提だとあまり前から圧力を掛けるとセカンドボールの回収が難しくなるジレンマを相手に問う。
このチームのビルドアップの終着点はSH(グリーンウッド&ハイメ・マタ)にボールを届ける事なんだが、感覚的にはハーフウェーライン付近でCHの前向きを作れば大体完了。

ここから選択肢は近いSHの足下か、遠いSHへのロングボールになる。前者はグリーンウッド向きで後者はハイメ・マタ向き。グリーンウッドは試合を見るたびに躍動感が増しており、リケルメもなかなか止められず苦労していた。ハイメ・マタはラフなハイボールを収めるのが上手すぎる。あと異常に荒い。

SHにボールが入るタイミングでSBが必ずサポートに入りシンプルにゴール前へのクロスを狙う。必ずラタサがファーに逃げて助走をつけて飛び込むタイミングでクロスを入れる。クロスを入れればいいからサイドのコネクトは割と単純かつ、ここでもリスクは犯さない。困ったらさっさとクロス。
ラタサはFWなので勝率自体は50%そこそこだが、空中戦勝利数は18節終了時点でラリーガ断トツトップの96回を誇る。2位は77回のブディミル(オサスナ)。ハイボールに圧倒的な自信を持ち、それが助走つけて飛んでくるんだからそりゃ怖い。

さて38分にアトレティコはサヴィッチがトランジションでハイメ・マタに肘打ちをお見舞いして2枚目のイエロー。退場となる。擁護するポイントは特にないがハイメ・マタはデ・パウルの足を踏んづけたりしていたしイラついていたんでしょう。でも退場しちゃ駄目だったよ。残念です。

これでアトレティコは前半のうちにメンフィスを下げてアスピリクエタ投入。余談だがメンフィスはどうせ45分で替わっていたと思う。
そして44分、右に移っていたリケルメのピンポイントクロスにグリーズマンが飛び込んで先制した。わからないものである。正直この右サイドの突破に関しては退場者が出てデ・パウルがいなくなり(左へ動き)、ジョレンテとアスピリクエタの距離が近くなる事で明らかに循環が良くなった。各々が考え直した方がいい。



●前半終了

退場者を出し、その後先制点を取って1-0で折り返した。ジョレンテの背後になかなかボールが出なかった環境があまりよくわからず共感が少ない。どれだけオフサイドになるんだ。勝手に自分達で試合を難しくしていった。むしろ連戦で疲労が溜まっているからクローズドゲームをやろうとしていたのだろうか。いや、シメオネに限ってそんなことは。
疑念の中でも先制点を取れた事は収穫で、まだ希望を持って後半へ向かった。



●後半

ヘタフェは後半開始から右SBをフアン・イグレシアスからダミアン・スアレスに替えた。

メンフィスを下げているアトレティコはグリーズマンが前に一枚になる5-3-1で配置。相手のCBからの配球を止められない事自体はそこまで致命傷にはならない相手だが、やむ無く押し込まれる。

同点ゴールは53分。右サイドでグリーンウッドの仕掛けにリーノが振り切られ、角度のない位置からのシュートの跳ね返りをマジョラルが決めた。上手いヘディング。
アトレティコからするともう少し1-0で時間を過ごしたかったところ。ヘタフェが点を取りに来る選手交代を見てから優位に試合を進めたかった。点を取りに来る交代なんてあるのか知らんが。たぶんないが。

同点になったので、逆にアトレティコが点を取りに行く交代をする。57分にデ・パウルに替えてモラタ。配置云々よりもFWを増やしたという認識でいいでしょう。10人なので。


・サイドの苦戦
ヘタフェの低い位置で受けるSBをフリーにすると雑なアーリークロスが飛んできて、むしろこういうボールが一番対応がややこしくてアトレティコのWBはこの対応に引っ張り出される。また、カウンター局面でWBが先頭を走る事を求められ、これをひっくり返されてエルモソがグリーンウッドの対応をさせられる、そして一瞬で抜かれる、などでピンチを招いた。
しかし勝ち越し点は我慢をしたアトレティコに入る。63分、きっかけはハイメ・マタのパスミスを引っ掛けたところからだったが、いつまで経っても裏にボールが出て来なかったジョレンテの長いランニングにアスピリクエタがロングボールを放り込んだ。あとはもう個人技でガストン・アルバレスを振り切り、ピンポイントでモラタに合わせた。ジョレンテのやばすぎるフィジカル能力とシュートしか狙っていないモラタの動き出しがピタリとハマった。
直後にヘタフェはセットプレーの競り合いでダミアン・スアレスが誰も幸せにならない顔面パンチをお見舞いしてPK献上。本当にありがとうございます。しかもOFRの画面にレッドカードレビューって出てたのでPKは確定だったっぽい。退場しろよ。

これを決めて、グリーズマンはアトレティコで通算173得点目。ルイス・アラゴネスの記録についに並んだ。おめでとう。

公式より

2点のリードを得て残り20分。あとは逃げ切るだけとなった。退場者が出た後に3得点というのもなかなか珍しいのではないか。


・解決策の見えないサイドの守備
この時間帯アトレティコはグリーンウッドの仕掛けにとにかく苦しんでいた。縦に行かれればそもそも人数が少ない環境で低いクロスを入れられ、内側に行かれると両足から強烈なシュートが飛んでくる。この選手はウスマン・デンベレ以上に左右差のないキックが蹴れる。
まあエリア外からのミドルシュートならどうにかするのがアトレティコ、そしてオブラクなんだが、ルイス・ミジャに良いシュートが出たところでオスカル・ロドリゲスまで出てきてややこしくなってくる。ヘタフェは地に足が付いた采配だなと感心した。ボルダラスはいつもスタンドで見てた方がいいんじゃないか。

・アトレティコのスクランブル
一方、スクランブルがお得意のはずのアトレティコの交代は上手くいかない。81分の最後の交代は限界だったジョレンテに替えてモリーナ、リーノを下げてサウルを入れてクローズに向かった。

個人的に、この選手交代に納得感がなかった。
この終盤にヘタフェが固執していたのはグリーンウッドの右サイドの突破と、ゴール前正面からのミドルシュートの2つ。サウルは入れたものの、この2つの対策を具体的には行わなかった。これは疑問。リケルメを左WBに動かしたのは信頼を通り越して過負荷だ。間違った選択だったと断言する。敗因は終盤の選手交代にある。おれがわざわざ言いたかったのはここだ。ここを読んでくれ。頼む。

・考えられた修理
左のWB、及び左HVにテコ入れし、IHサウルに大きな役割を背負ってもらって守り切る。アトレティコにはこれが出来たはずだ。まだベンチに手札はあった。まずは左WB。

ヘイニウドにまだ不安があったのなら仕方ない。しかしハビ・ガランがいた。守備にテコ入れするなら最初の選択肢だったはずだ。
ではハビ・ガランはこの環境で、2点リードのクローズですら起用できないほどの信頼の薄さだったとしよう。アスピリクエタを左に動かせば良かった。言い訳無用だ。なぜなら最近何度もやっている。

さらに、アスピリクエタを動かさないにしても、リケルメのフル出場に拘るとしても、エルモソではグリーンウッドとの対人を止められない。ソユンジュという選択肢はなぜ出てこなかったか。理想はモリーナ、ソユンジュ、ヴィツェル、エルモソ、アスピリクエタの5枚。そうでなくともモリーナ、アスピリクエタ、ヴィツェル、ソユンジュ、リケルメの並びだった。一人少ないのだから、必要なのはサウルをゴール正面の対応に回らせる事だったはずだ。
そしてコレアの出番もなかったが、もう一枚カードを余すならグリーズマン→コレアでも良かったし、残酷だが守備力を考えるなら2点差になった時点でモラタ→コレアでも良かった。一人少ないんだ。なりふり構わず交代カードを使って欲しかった。

結局、リケルメがグリーンウッドを止められず突破され、クロスの跳ね返りからオスカル・ロドリゲスのゴール(結果はオウンゴール)を許し、ロスタイムにはまた右からダミアン・スアレスのクロスがリケルメの腕に当たり、PK献上。クローズに大失敗した。



●試合結果

3-3のドロー。前半から自分達で試合を難しくし、退場者も出した。それでも狙いを持ったサイド突破でリードを奪い、追いつかれてもまたサイドから勝ち越し。相手のエラーでPKも得た。

サヴィッチの退場が云々でこの試合を終わらせる気はない。擁護するわけではないが、10人になってからアトレティコは3点取ったのだ。ポイントを落とした原因は2点のリードを守れなかった事にある。一人少なくても逃げ切れる内容だったし、逃げ切るべきだった。そもそもサヴィッチの退場よりダミアン・スアレスのPK献上の方がよっぽどマイナス要因の多いチョンボだろう。
そういう意味ではアトレティコらしくない後半を過ごした。ヘタフェ相手に個で違いを作れた選手は何人いたか。ヘタフェを対人で止められずにどうやってCLを戦うのか。11人いればグリーンウッドに抜かれる事はなかったのか?そんなのは甘えだ。
過密日程の中で様々な組み合わせが試され、選手を守るためのローテーションを行いながらもシメオネが"本番”で使える選手を見極める作業を行なっているように感じる。

アトレティコの日ではなかった、では済まされない後半戦がもう迫っている。


12/19
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 3-3 ヘタフェ
得点者
【アトレティコ】'44 '69(PK) グリーズマン '63 モラタ
【ヘタフェ】'53 '90+3(PK) マジョラル '87 オスカル・ロドリゲス


●ピックアップ選手

グリーズマン
ピンポイントで合わせた先制点とPKの2発。偉大なる173ゴール目をあげたが勝利で飾る事は出来ず。

ジョレンテ
ボールが出てこなくとも何度も繰り返したスプリントに頭が下がる。モラタのゴールを独力で準備した。

モラタ
後半途中から出てきて「点を取れ」という仕事を完遂。

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