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羅針盤を握るのは 13節 アトレティコvsエスパニョール(H) 2022.11.6

気を取り直しましてラリーガ。ホームでエスパニョールと戦う。前回対戦はこちら

先季は2試合とも、アトレティコのロスタイムの決勝ゴールで勝っている。


エスパニョールは監督も変わり、17ゴールのラウル・デ・トーマスもいなくなった。先季は昇格初年度ながらグッドチームの印象だったがなかなか苦しんでいる。エンバルバやオスカル・メレンドもいなくなってしまった。ヴィリェナはサレルニターナで元気にやってます
新加入ではホセル(←アラベス)が移籍してもなお孤軍奮闘。バルサから来たブライスワイトが相変わらず変なダンスを踊っている。
ブライアン・オリバン(←マジョルカ)、中盤のヴィニシウス・ソウザ(←ロンメルからレンタル)、そしてGKのルコント(←モナコからレンタル)がスタメン定着。そして昇格を逃してついにエイバルを離れたエスポージトがさすがのクオリティを見せている。アルメリアから加入したホセ・ラソは前節マジョルカ戦で見事なシュータリングを決めている

さあ、まずは己と向き合いたいアトレティコ。W杯前に何かを掴んでおきたいところ。

●スタメン
・アトレティコ
オブラク
モリーナ / サヴィッチ / ヒメネス / ヘイニウド
コンドグビア / デ・パウル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / モラタ

ジョレンテが10/4のブルージュ戦以来一ヶ月ぶり、9試合ぶりの復帰。中盤はヴィツェルではなくコンドグビア。2トップはグリーズマン&モラタに戻った。

・エスパニョール
ルコント
オスカル・ヒル / カレロ / カブレラ / オリバン
ヴィニシウス・ソウザ / バレ / ダルデル
アレイシ・ビダル / ブライスワイト / ホセル

4-4-2ではなさそうなメンツ。プアドとエスポージトはベンチから。




●前半
アトレティコは色々と取り組みを変えた試合。
先に言っておくと勝った試合ではないので、機能性にフォーカスを当ててしまうと"駄目でした"という評価が並んで終わりになってしまうので、やめておきたい。おれも楽しくない。この試合で何にチャレンジし、その理由は何だろう。という観点からこの試合の取り組みを評価してみよう。

・ビルドアップパターンの変更
最近の試合で言うとカディス戦とちょっと違うように見えて実はそんなに変わらないので、頭を整理する。
この日のアトレティコがやろうとした事はまず5レーンを埋める事。カディス戦では右からモリーナ、コレア、モラタ、サウル、カラスコで埋めた。真ん中は2トップ+任意のIH、大外をWB。

カディス戦

この日は4-4-2配置であるが、5レーンを埋めたのは右からモリーナ、ジョレンテ、モラタ、カラスコ、ヘイニウドだ。真ん中はトップのモラタだがハーフレーンはそれぞれSH、大外は両SBだ。

特徴的なのはヘイニウドを前線のユニットに組み込んでいる点。意外であり不思議だったところ。ここは後ほど。

で、後方ビルドアップ配置。普段は4バックだろうと3バックだろうとヘイニウドが後方3枚に残る形が多い。彼は配球も上手くなければ持ち上がりも得意ではないし判断も良いわけではない。このポジションでエルモソに起用の可能性がまだ残っている一因である。一因というか全てかもしれない。

この日はサヴィッチ&ヒメネスCBコンビは最後列。その前にCHのデ・パウルとコンドグビアがいる。

さて、この日のアトレティコの狙いを可視化したい。


①グリーズマンの解放
まずは前線ユニット。5レーンの埋め方がこういう形なのは、グリーズマンを解放するためである。これは確定。
グリーズマンはCLレヴァークーゼン戦、CLポルト戦ではともに前5枚ユニットに組み込まれたが、コレアとの関わりでチャンスメイクした一方、自由度で劣った。そしてルマルがいない現状、グリーズマンを解放して縦挙動してもらわないと配置が固定化される恐れが強い。他に出来る人がいない。なので彼を前線ユニットから外した。
そのためにもう一人誰を前線ユニットに?となった時にCHのどっちか(この日ならデ・パウル)ではなく左SBのヘイニウドに高い位置へ移動してもらった。という流れ。理由はヘイニウドの方が後ろに残しておいて(守備では)有用だけどビルドアップタスクであんまり機能しないので、それなら大外高い位置にいてくれよと。正直レギロンにやらせたかったんじゃないかと思う。

この配置とエリアバランスで、割と驚いたと同時にちょっとワクワクしたのは後方の枚数バランス。CB2枚とCH2枚を残し、6枚は攻撃的なタスクを置いた。これはシメオネにしてはなかなかチャレンジな配置だ。そしておれがチャレンジして欲しかった配置でもある。ここはポジティブな評価をしておく。得点は入っていないが。

②第一ライン突破手順
初期配置でエスパニョールの2トップの第一ラインのプレッシャーを、アトレティコの2CBが自発的に掻い潜れるはずもなく。逃げ道として両SBを残しつつ、じゃあどうしましょうというところでサリーした。

コンドグビアのCB脇サリー
おれは別にこれ自体を良いとも悪いとも言わない。事実ベースのお話であって、アトレティコには珍しいねって話でもある。やってたのはトーマス&サウルの時期のサウルの左落ちとかかな。最近はコケが右大外まで落ちてSB(WB)にハイポジションを取らせるためにやってるけどあれはサリーというか数的優位作成可動力って感じで。配置でバクらせてるんじゃなくて体力でバクらせてるというか、体力がバグってるというか。そんなこんなでサリーは珍しいね。魔法使いコンドグビアちゃんなわけです。

エスパニョールは保持は4-1-2-3(or4-2-1-3)だったが非保持はダルデルを押し出した4-4-2ブロック。アトレティコはコンドグビアがプラス1を作って2トップのプレッシャーを外そうという狙いと、さらに右SHに入っているアレイシ・ビダルを釣り出して欲しかった。その背後を使いたいという様子がある。コンドグビアはリスクヘッジをしすぎてかなり低い位置まで落ちるのであんまり釣れてなかった。出来るならもうちょい高い位置に立ってほしい。

③カラスコのハーフレーンへの移動
そんな形でコンドグビアからの配球が中心となった前半。そして前方はヘイニウドが大外という事はカラスコはハーフレーンにいる。不思議配置ではあるが、理屈を考える。


シメオネは、この試合限定の取り組みではなく、割と本気でこの配置を使っていこうと考えているのではないか。この日のメンバー依存、人依存の策ではなく、スタメンが入れ替わってもこの形を使おうとしているのではないか。と見る。

つまりカラスコの位置はフェリックスが代替出来る仕事で、ヘイニウドの位置はレギロンが代替出来るように作っている配置なのではないか。フェリックスが4-4ブロックの守備に参加出来るかは知らんが

④弊害は右サイド
ジョレンテの復帰は喜ばしい事だが、彼とモリーナは相変わらず狙いがハマらない。そもそもモリーナに大外を駆け上がってもらうためにジョレンテを内側に置くのはリターンが少なすぎる。色々と出場選手の制限がある試合だが、コレア&ジョレンテで並べたいところだ。


●前半終了
という事で前半は0-0。触れなかったが28分にモラタのとんでもないスピードの抜け出しにカブレラがDOGSO。一発退場となり早速、数的優位を得た。エスパニョールはバレを下げてCBのセルジ・ゴメスを入れる事になり、4-3-2のような4-4-1のような配置になった。これでアトレティコは第一ラインの突破が簡単になり、カラスコに縦パスを入れてヘイニウドが抜け出す形を再三作っていった。クロスが悪いのか中の入り方が悪いのかは微妙なところで、たぶんどっちも悪いんだが無得点。守備ではロングボールの対応でヒメネスがホセルを完封するさすがの存在感でチャンスを作らせなかった。


●後半
開始からデ・パウル→コレア。

さて、ここまで書いてきた通りの狙いがあるのなら当然勝つべき試合だが何故勝てなかったのかを見ていく。

コレアの投入でアトレティコの配置が変わっている。4-1-4-1風になった。

エスパニョールは後方5枚並べる。

こうなるとグリーズマンの使い方、それが最適ではないですよね感は出てしまう。ただこの後半はモリーナ&ジョレンテ&コレアで右サイドを突破する事がメインで、グリーズマンは主にカラスコのサポートをタスクにした。あとはモラタの次にPA内に入る仕事。

そんなこんなで50〜60分あたりに得点機を連発。まあ決まらなかったんだが、大外を深く抉って折り返しのパターンは一人少ないエスパニョール相手にはかなり有効で、やり続けて良い形ではあった。決まらなかったけど


・ふいに失点
が、先制点はエスパニョールに入る。62分。

ラインを超えて降りてきたダルデルを、捕まえるのはグリーズマンの仕事だったが簡単に振り切られた。やや淡白だった。グリーズマンの対応も大概だがカラスコの距離の詰め方も大概だし、そもそもコンドグビアより前にいる選手全員何もしていなかったのでダルデルにボールを持たせたらこうなる。

そして右サイドからの放り込みに、ホセルが上手い事大外へ忍び込んでモリーナと競り合う。折り返しに再度ダルデルが飛び込んできてコンドグビアが捕まえ切れなかった。

調子の良くないチームというのは、こういう失点をしてしまうものですね。という失点。防げたと思うし、注意も足りていなかった。ただまあピンポイントを2つ続けたエスパニョール側を褒めたい気持ちもある。まだ時間は残っている。


アトレティコはここからヴィツェルとフェリックス、その後にクーニャとルマルを投入した。

ヴィツェル、クーニャはそれぞれ同ポジションのコンドグビア、モラタとの交代で、フェリックス、ルマルはカラスコとグリーズマンのタスクを代替する事になる。前半のところで書いた通り。

78分に同点に。カディス戦の2発に続きこの日もフェリックス。ポジトラで簡単に裏を取るとルマルからのロブパスをパーフェクトな1stタッチから左足を強烈に振り抜いた。ニアを抜けていくボールにルコントも反応出来ず。見事な一撃。

ルマルがドリブルで持ち運び、フェリックスが大外を切り裂き、モリーナ&ジョレンテ&コレアが右サイドを攻略していき、2点目を求めて攻め立てたがなかなかゴールが遠い。エスパニョールもなかなかしぶとく耐えた。


●試合結果
なかなか結果が出ず。この日も勝ちきれなかった。
この試合で試した新たな試みは、書いてきた通りである。エスパニョールに退場者が出て有耶無耶になった部分もあるが、相手が11人の環境でも2CB+アンカーだけ残して両サイドを押し込むようなパターンを試そうとしていたのだとすれば、個人的にはかなりポジティブに見ている。そういう形はずっと見たかったし、シメオネはこれまでやらなかった。
そうなると、今後はカウンター対応で能力を発揮出来る+数的同数のビルドアップも対応出来るCBのニーズが高まってくる。両SBはスピードとロングランに特化した選手への要求が増えてくる、など違いは出てくるだろう。

守備に関してはボールロストだのふいの裏抜けだの、どうも"止められたのではないか"という疑問が残る類いが多い。スッキリしない。保持で前線に関わる人数を増やす取り組みをしているのだから、これまで以上にリスクを負う箇所は多めに出てくる事は間違いない。その取り組みの中で"ふいの失点"をしている場合じゃない。一試合に数度、決定機を作られるのは許容していくとしてもそれ以外の場面で失点するのは看過出来ない。気合根性を発揮すべきだし、シメオネはそこがブレないような基準を準備する必要がある。具体的には守備タスクに振り切れるアンカーと足の速いCBでしょうかね。様子を見てみよう。

いよいよ変化の時期が来る。目の前のCLを勝ち抜くために変えにくかった部分を変えるタイミングが来る。レビュワーの楽しみはここだし、腕の見せ所もここだろう。

チームが勝てていない。CLどころかELも駄目。首位と10ポイント離された。そんな環境の中で申し訳ないが、ワクワクしている。

さて、シメオネの次の選択は。


11/6
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 1-1 エスパニョール
【アトレティコ】’78 フェリックス
【エスパニョール】’62 ダルデル


●ピックアッププレー 〜SB狙いのハイボール〜
久しぶりに。エスパニョールに退場者が出てあやふやになったが、明確に狙いを持たれていた箇所を確認しておく。エスパニョールの狙いはアトレティコのSBを狙ったハイボールだ。

エスパニョールはバレとダルデルが低い位置に関与してアトレティコの2トップのプレッシャーを外す。両SBは大外高い位置へ。
ここでアトレティコの2トップの態度は、ボールホルダーとアンカー(ヴィニシウス・ソウザ)への警戒を優先し、バレとダルデルにボールが入るところは両SHが前進するという約束事に。

ここでアトレティコの守備陣の考えはこうだ。
まず、ホセルへのロングボールを警戒したい。主にヒメネスが担当し、自由を与えない事が出来ていた。エスパニョールはアレイシ・ビダルがややヒメネスに近づいた角度で顔を出す事で、コンドグビアが前向きに守備する事を牽制し、後方に釘付けにさせていた。この2人はお互いに攻守で駆け引きがあったね。

この手順でエスパニョールはボールを保持。そして狙いは逆サイドからの侵入。

CBを経由してボールは逆側へ。ダルデルを捕まえにジョレンテが飛び出てくる。ブライスワイトが誰のプレッシャーも受けない位置に留まり、大外目掛けてハイボールを使う。モリーナが2人を相手にしなければいけない場面を作られていた。エスパニョールはこういう構築が上手かった。


●ピックアップ選手
フェリックス
途中出場でまたも強烈な一撃。
充実のパフォーマンスでロスタイムにもチャンスを迎えた。
あとは相手11人、スタメン出場でどこまでクオリティを出せるかだ。

ヘイニウド
普段よりもかなり大外、そして高い位置でのプレーを求められた。
決定的なクロスもいくつか放り込んだが、守備の特徴を活かせるポジションではなかった。

ジョレンテ
ようやく復帰。前半はアイドリングしながら後半に入って徐々にペースアップ。
コレアが入った後半はらしさを発揮出来た。

ルマル
こちらも10/19のラージョ戦以来の復帰。このシステムならボールを進める役割でニーズがあるが、どうだろう

ヒメネス
シュート5本。決定機も2,3回あったが決めきれず、変なイエローをもらって累積5枚目。ある種彼らしかったが。

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