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隙を生んだ要因は 32節 アトレティコvsエスパニョール(H) 2022.4.17

ラリーガ。来週もミッドウィークに試合がある厳しいカレンダーだが、CL圏確保へ一つずつ。

対するはエスパニョール。先週のセルタ戦の勝利(1-0)で残留はほぼ確定の勝ち点39。年明けから引き分けが多くなかなか勝ち星が遠かったが、ここに来てホームでは3戦連続のクリーンシート勝利。なんだか異常に怪我人が少ないイメージ。良いシーズンを送っている。

前回対戦。

長いロスタイムの最後にルマルの決勝点でアトレティコが勝利。相手監督自らスローインの時間稼ぎをしていた事などで個人的には後味の悪い試合だった。すっきり勝ちたいところ(フラグ)


●スタメン
・アトレティコ
オブラク
ヴルサリコ / サヴィッチ / ヒメネス / ロディ
コケ / コンドグビア / ジョレンテ / ルマル
コレア / フェリックス

ロディが最終ラインに入る4枚。普段とは逆の右側で可変する配置となった。グリーズマンはベンチスタートでコレアが3/6のベティス戦以来のスタメン。

・エスパニョール
ディエゴ・ロペス
オスカル・ヒル / セルジ・ゴメス / カレロ / カブレラ / ペドロサ
バレ / ダルデル / ヴィリェナ / プアド
ラウル・デ・トーマス

3CBで3-4-3のような配置。
色々なパターンを持っていて、あらためて昇格組の選手層ではないなという。

スタメン


●前半
珍しい噛み合わせ&珍しい対応をした前半をまとめてゆく。

■非保持形
アトレティコの非保持の形。
試合前にこんなツイートをしていまして

なんか予言者みたいになったが、別に右で可変させる事が目的ではなかったのかも。
おそらく、スピードがずば抜けて速い左SBペドロサに対して、攻守に渡ってジョレンテにランデヴーしてもらう意図があった配置。前回対戦でトリッピアが泣きそうになっていたスピードスターの相手に、こちらのスピードスターをぶつけると。ところで彼は疲労は溜まっていないんだろうか。やっぱり馬鹿は疲れないんだろうか。

非保持

ジョレンテは最終ラインで5枚を作るのではなく、ペドロサとのランデヴーが優先。

ランニング

プアドがその後ろを使おうとするが、アトレティコとしてはSBのヴルサリコが対応出来る箇所。

後方は5枚で構えるというより4枚+右大外ジョレンテのランデヴー
中盤が3枚でスライドするなら確でコンドグビアがスタメンというのもどうなんだろう、と思いつつ、この日はこのメンバーになった。

エスパニョールは後方3枚。エスパニョールの試合のサンプルがあまりないので想像の範疇だが、アトレティコとの前回対戦でもSBを大外対応に引っ張られたくない意図があったエスパニョール。

エスパニョール撤退

前回対戦。
大外の対応はSHにやらせていた。じゃあ最初からDFは3枚でいいよね、という事なんだろうか。たぶん

前線はR.D.Tが真ん中というよりはプアドが真ん中で縦挙動でボールを引き出していた印象。非保持でR.D.Tとプアドが前2枚だったので、それぞれに得意なタスクが与えられている様子。上手く作り込まれているチームだ。去年こんなのと戦わなきゃいけなかった2部のチームが不憫でならない

ダルデル

エスパニョールの良かった前進。
ダルデルが右大外まで動いてWBのオスカル・ヒルを押し出す。この形だとアトレティコとしてはジョレンテがペドロサを消している意味がほぼ無意味になり、ただのボールに行けない5-3-2になる。やめてほしい形だったが、特に標榜している構築ではないようでその後再現されなかった。

ルマル

ダルデルが中央にいてくれる分にはルマルは前進出来る
ルマルが前進出来る=相手の3CBに3枚で当たれる、という事になるのでエスパニョールはもう少し警戒しても良かったかも。まあアトレティコも前プレで何かを起こせる様子はなかったが。たぶんコンディション差もあったと思うがエスパニョールのビルドが普通に上手い。

・結果的には
で、3バックでアトレティコの配置と戦うならば前進で浮くエリアはルマルの脇。この位置をダルデルが取ると厄介、というのがさっきの話。でもあんまり取らなかった、基本的にはWBのオスカル・ヒルが立っているが、この日のオスカル・ヒルは見ている中でも凡ミスが4,5回はあり、10点満点で2.0くらいの採点になりそうな酷い出来だった上に前半で腿逝きで交代、代わりに出てきたアレイシ・ビダルが背後を取られて失点、と災難のような試合になってしまった。


■保持形
アトレティコの保持。結果的には良くなかった。シティ戦とは違って前プレはしない。そもそもやっても取れなそう、という事と、さすがに保持は出来る相手なので後方から構築。しかしCBコンビがこの2人な上、ビルドアップでは無力になるコンドグビアが真ん中に陣取る配置で嫌な予感が漂う。
こうなるとアトレティコの前進は基本的にルマル、コケの機動力でプラス1を作るか、ジョレンテにどうにかしてもらうの2パターンに限定される。今季よくある嫌な前半戦を過ごした。

・パターン
相変わらず真ん中を攻略する攻撃は出来ないのでこの日も左からor右から

左

まず左。
ルマルがボールを引き取ってロディとフェリックスがグルグルする。このグルグルの弱点はシンプルにロディが内側では何も出来なくて実質グルグルしていないところなんだが、それに加えてこの日はフェリックスのパフォーマンスが微妙で単独で大裏一発のパスをもらう方が効果的。効果的なビルドアップが出来なかった(35分にコンドグビアの裏パスで一発決定機を作った)。ついでにルマルが結構長引きそうな腿逝きで前半で交代

右

右。
相手が5-3-2ならここで引き取れますね、というところにコケが気を利かせてヴルサリコ、ジョレンテとトライアングルを作って背後狙い。ある程度使えてはいたが、シンプルに裏を取りに行くとコレアがプラス1を作れず消えてしまっていた。これがちょっと残念だった。相手が4バックならこれでもいいんだけど、5枚いると背後を取ったところで厳しい。
で、背後を取ってクロスをあげてもフェリックスしかPA内に入れない謎の攻撃を連発。切ない前半となった。


●前半終了
双方のうまくいってないところ展覧会のような前半になった。エスパニョールは"昇格組にしては"という注釈をつければかなり良いサッカーをしているが、正直そこに留まるチームではないだろう。目標はもっと上のはず。はっきりとしたビルドアップの狙いも見て取れる上に、4バックでも3バックでも機能するメンバーを揃えている割にはノーチャンスな前半戦だった。

アトレティコはお疲れ云々を抜きにすれば、今季の勝てない試合の特徴オンパレードのような45分。ルマルに加えてフェリックスまで怪我でハーフタイムに交代する事になるが、この2人がいるとビルドアップのルートは変えられないので、なんというか後半は別の選手で突破口を見つけたいね、という感じ。いや怪我はよくないんだけどね
ルマル、ロディ、フェリックスのトライアングルは、相手がボールを取ろうと考えてくれる試合ならばかなり効果を発揮するんだが、この日のエスパニョールのように同数でぶつけて突破はさせない、という守り方をされると正直何も出来ない。ルマルとフェリックスの上手さも、ロディのしつこい裏抜けチャレンジも、ある程度の相手ラインの高さとボールへの食いつきが必要で、失礼な言い方だが格下相手には対して機能しない。それならカラスコやジョレンテ、クーニャの理不尽な突進の方がいい。それでもこの3人で攻略したいと言うなら、やはりプラス1がいる。コンドグビアにその役割は厳しいので、この日なら当然コレアにお願いしたいが、驚くほど何も出来なかった。どうしたんだ。結果的に無得点な事は変わらなかったかもしれないが、グリーズマンだったらこうはならなかったはず。右のトライアングルにせよ左のトライアングルにせよ、この日のエスパニョールを崩すにはプラス1が必要だった。その役割はコレアがやるべきだった。という前半の印象。


●後半
それでは後半。
エスパニョールは負傷したオスカル・ヒルに替えてアレイシ・ビダル。
アトレティコは3枚替え。
クーニャ、カラスコ、グリーズマン。
交代は怪我をしたルマルとフェリックス、そしてなんとヴルサリコだった。

後半

この交代は相手監督も驚いたかもしれないがおれも驚いた。ジョレンテとペドロサのランデヴーをやめる意図で、前線の人数を増やす交代。

開始1分、いきなりクーニャに決定機を用意したのはグリーズマン。

プラス1

ロディの縦パスに反応した。クーニャのさらに向こう側で足下でもらう動きに、相手は反応出来ず。クーニャはオフサイドだったが、結局はこれがプラス1だ。コレアにやって欲しかった仕事。

あとはヴルサリコに代わってSBをジョレンテがやっているので、単純に前線の枚数が1枚増えている。エスパニョールは完全に引き切るような守備はしないので、アトレティコは背後を狙うロングボールを多用。エスパニョールはCBがハイボールにも背走にも強く、良く我慢出来ていた。特にカブレラがお気に入り。

・アトレティコが先制
51分にアトレティコが先制。カウンターでカラスコが仕留めた。
カウンターの起点になったのはグリーズマン。トランジションマジシャンの能力を最大限に発揮した。この先制点、というかその前のお粗末な守備対応をピックアップする。


この先制点の後、アトレティコはヘイニウドを投入。素直にロディと交代。
もうヘイニウドは出てくるだけで”守備が安定するな”とわかる選手になった事に、見ているこっちも驚きである。
交代の趣旨というかメカニズムは、

・前半はジョレンテが右大外で5枚目になる配置。この日は5バックというよりはペドロサとランデヴー。
・後半、ヴルサリコを下げてジョレンテが4バックの右。シンプルに前線の枚数を1枚増やした。
・先制したので、ヘイニウドを4バックの左に。左にカラスコが落ちてきて5枚になるいつもの形。

という変化。おれはこの辺から”ヴァスは?”と思って見ていた。


そしてエスパニョールも2枚交代。
監督の判断が速いのもそうだが、選択肢がそもそも多い。なんで2部にいたんだまじで。

60分

なんかこんな感じに。今のアトレティコに守備組織に対してライン間の人数を増やしましょう、みたいな配置はどうなんだろうと思ったが、どうなんだろう。

5-3ブロック

1点必要なエスパニョールは前線2枚は守備をしないで5-3でブロック。
セカンドボールはどう考えてもアトレティコが拾えるので、ずっとおれのターン状態になり、カラスコ劇場が始まるがこの時間帯に2点目は取れず。エスパニョールは結局、保持だ崩しだよりも前が開いたダルデルのロングボール一本でR.D.Tという形で決定機を作っていた。これまたエスパニョールの強みでしょう。この2人はそう簡単には止められない。

で、71分にコンドグビアの謎ハンドでイエロー2枚目、退場。
正直ハンドのルールを完全に理解しているわけではないのでノーコメントとする。これを機にそろそろちゃんと学ぼうかと。とか言ってるとまた夏に変わったりするんだよな。

そしてこのFKをR.D.Tが決めて同点。なんだかなあ。
アトレティコは3ポイントが遠のく。


アトレティコはコレア→デ・パウル。
他に選択肢があったわけでもないが、どこまでも冷静な交代だなと。

4-4-1というか4-2-3に。コケは楽できないねえ。
エスパニョールはCBを1枚削って前節決勝点のウー・レイ投入。
完全に結果論だがこの交代は外れ。相手の人数が減ったからCBを削ってFWを入れる、という選択は普通の、というか強気のように見えるが、シメオネならやらないだろうなという選択肢。

最終形

最終ラインが4になった事で、アレイシ・ビダルとペドロサ(87分からディダク・ビラ)の攻撃参加がなくなり、前3枚で解決しようとする攻撃に終止。これなら最終ラインは4人いるアトレティコならある程度どうにかなるし、そもそもウー・レイではヘイニウドを攻略出来ないだろう。保持で侵入する事が出来てきたのに相手の人数が減って縦に急ぎ始めるのは矛盾していたかなと思う。おれがシメオネの選手交代方法に毒されすぎかもしれないが。
攻撃が怖くないならアトレティコからすると相手の最終ラインが1枚減っただけだった。結果論ですけどね。詰めは甘かったんじゃないかなと思う。

バランス崩壊しそうだったアトレティコだったが、最後はデ・パウルのロングボールをカラスコが納めて単独カウンター。際どいシュートを放ち、得たCKからR.D.TのハンドでPKゲット。カラスコが沈めて、勝利。ギリギリの、勝利。


●試合結果
見放されたかと思う試合だったが、最後まで3ポイントを追い求めたアトレティコにギリギリで勝利の女神が微笑んだ。エスパニョールの最後の交代策が隙を生んだ感はあったが、よく勝ち切った。

エスパニョール戦は前回対戦に続き、またもロスタイム+10分に近い時間の決勝点で勝利。勝ててはいるものの、またも歯切れの悪い試合であった。

個人的にはヴァスを見たかった、など色々あるが、まあ新たな狙いと、出来ないところが見えた試合だったなと。ミッドウィークは違う試合を見たいのは正直なところ。
目標に届くまではまだまだ気は抜けない。一つずつだ。


4/17
ワンダ・メトロポリターノ
アトレティコ 2-1 エスパニョール
得点者
【アトレティコ】'52 '90+10(PK) カラスコ
【エスパニョール】'74 ラウル・デ・トーマス


●ピックアッププレー
51分の守備対応をピックアップする。そろそろ「こいつコンドグビア嫌いだろ」と思われそうだがこのシーンをあげないわけにはいかない。

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エスパニョールの保持。サイドを押し込まれたアトレティコ。カレロに戻ったボールにコンドグビアがプレスを外れて前進する守備。何故かわからん
ちなみに既に書いているがオブラクが止めてカウンターでカラスコが先制点を取った場面だ。

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コンドグビアが空けたスペースをバレに取られるが、誰も埋めない。ボールは出てこなかったが、よくわからない対応。

画像16

再度カレロを経由して、どフリーでダルデルがついにこのエリアを使って前進。ダルデルは大外にいるアレイシ・ビダルを使ってエリア内侵入。際どいシュートを放っている。
ちなみにクーニャがアンテナを張ってPA内まで守備に戻っている。この辺は明確に彼の長所と言える。

コンドグビアが何故飛び出したのかわからないし、コケが何故埋めろと指示していないのかも、何故自分で埋める動きをしないのかもわからなかった。あまりにもアラートが低い。集中していなかったのか?この試合はそこまで気を張っていなくても良いと思って守っていたのか?舐めていたのか?

シティ戦では出来ていた事だ。だから気に入らない。あの試合だけの良い対応なんて無意味だ。普段の試合に還元出来ないのなら、シティと良い試合をした事などなんの意味もないではないか。だからこのシーンはイライラしながら見ていたし、カウンターからカラスコが先制点を決めてもおれはまだイライラしていた。

"好セーブからのカウンターで先制点"ではなく、"雑な対応をしたが相手が外してくれて、アレイシ・ビダルの甘すぎる背後の管理で取った先制点"だ。おれの目にはそう映った。


●ピックアップ選手
カラスコ
2発。存在価値を証明。
押し込む展開で特徴が出た。

グリーズマン
プラス1を作るポストワークで決定機演出。
プレスバックも流石の働き。勝利を引き寄せた。

ジョレンテ
無尽蔵のランニングで大外を駆け回った。1人少なくなっても関係なし。疲れてる中でよく頑張った。

ヘイニウド
彼の投入はポイントだったと思う。素晴らしい対人対応。
攻撃参加も頑張った。

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