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配置の左右差を語る 21節 アトレティコvsグラナダ(A) 2024.1.22

スーペルコパで20節を飛ばした事もあり久しぶりのラリーガは21節。アウェーでグラナダとの対戦。前回対戦。

開幕戦でホームゲーム。

降格圏で年を越したグラナダは冬に積極補強。特に失点の止まらない守備陣にGKのバタジャ(←リーベルプレート)、最終ラインにブルーノ・メンデス(←コリンチャンス)とカミル・ピョンツコフスキ(←ザルツブルク)を連れてきてカディスに2-0勝ち、ベティスに0-1負けとそれなりの成果も出している。中盤には先季後半戦にバジャドリードでスタメンに定着していたマルティン・オングラ(←エラス・ヴェローナ)も獲得した。また、ウルグアイのペニャロールにレンタルしていた21歳のアタッカー、マティアス・アレソを呼び戻した。やっぱりグラナダは南米の選手が多い。



●スタメン

・アトレティコ
オブラク
サヴィッチ / ヴィツェル / エルモソ
モリーナ / ジョレンテ / バリオス / サウル / リケルメ
グリーズマン / モラタ

サヴィッチがスタメンに入り、ヒメネスはベンチから。
中盤はコケがターンオーバーで、バリオスのスタメン出場は11月25日の14節マジョルカ戦以来。

・グラナダ
バタジャ
リカルド・サンチェス / ブルーノ・メンデス / ミケル / ネバ
グンバウ / セルヒオ・ルイス / ビジャール
サラゴサ / ウズニ / ボイェ

最終ラインは勝った19節カディス戦と同じ並びに。中盤はサラゴサを右に置いて変則4枚。



●前半

グラナダは中盤のグンバウ、セルヒオ・ルイス、ビジャールの3人が横並びになって両サイドを押し上げ、2-3-5なんだか3-3-4なんだかよくわからない配置を作り出す。

このよくわからなさが案外ポイントだった気もして、特にセルヒオ・ルイスはCB間サリーから2トップのサポートまでどこで何をしてるのかよくわからなかった。これで開始5分間はアトレティコはボールを触るどころか誰がどこまで追いかけるのかもわからず静観。
一応、グラナダの生命線はやはり右サイドのブライアン・サラゴサで、リカルド・サンチェスと2人でクロスまで行ってほしいという任務。リカルド・サンチェスはこのためにスタメンだった様子。アトレティコ産。

アトレティコがボールを持つとようやくグラナダの非保持は4-4-1-1風なんだなという事が見えてくる。右のサラゴサはあまりブロックに入らなかったが、エルモソ周辺を見張る意味では割とこの辺でフラフラしてる事が効果的だった。

ポイントだったのはビジャールがモリーナにほぼマンツーマンでついていった事で、これによりジョレンテのポケット取りをカルロス・ネバが警戒して開始早々"ここの突破は無理そう"となったアトレティコ。次なる選択肢がなかなか出てこなかった事は課題だが、この日の中盤はバリオスとサウルが下がり気味にポジションしており、サウルの位置がエルモソ&グリーズマンとバッティングしがちだったのが悩ましいところで、こうなるとリケルメの効果的な使い方も見えてこない。

徐々に抜け道を見つけていったのはサウルが内側、エルモソが外側を確定させてエルモソがサラゴサの向こう側を取りにいく形で、これは擦り続ければいつか決定機を作れるかもしれないが「それならデ・パウルを中盤に置いた方が話が早いですね」となってハーフタイムの選手交代に向かっていく。そんなこんなで前半のバリオスは周囲の選手達の工夫と移動を見届けて真ん中に留まる事が仕事だったが、時々リケルメを使ったトランジションを発動させていたのでまあ良いでしょう。

グラナダの攻撃は得意の"サラゴサいつの間にか左に動いてます現象"を生み出しバグメイクを狙うが、これは毎度発動タイミングがノリなので逆にジョレンテに裏を取られかけるなどした。ボイェの空中戦とポストプレーはサヴィッチがほぼ完封して地上戦の解決策を作らせなかったアトレティコの守備は計画通りだったと思われる。グラナダはミドルシュートに解決策を見出そうとしている雰囲気もあったがさすがにそれはちょっとという感じ。アトレティコは先制できていれば満点だった、と言いたいところだが結果論的に言うと先制していたら前半終了時点で2枚替える話にはならなかった可能性もあるので一概には言えないのではないか。



●前半終了

スコアは0-0。出来ていた事と出来なかった事があったが、グリーズマンもマドリー戦後"くそ疲れてます数日動けへん"と発言していた割にはチーム全体で良いリカバリーが出来ていたという感想。普通に動けるが念のため省エネで過ごしたような印象を持った。グラナダが突破箇所にしようとしているところに優位性を与えず、自分達の考え事に時間を使えた事は評価したい。具体的にはサラゴサのところだが、別に特別な対応は不要と判断していた雰囲気もあり"26番足速いよ"くらいの対応に見えた。
保持の悩みはIHの左右差によるグリーズマンの立ち位置が根本原因で、これは選手交代でデ・パウルを入れてサウルが高い位置にいけば解決する話。
噂のアトレティコ・マドリー冬の通信簿にこの話を書こうと思っていたんだが本当に時間がなくモチベーションもなくて永遠に書けていない。どうしよう。と思ったのでここで書こう。まじか

●ピックアッププレー IHの配置左右差

アトレティコは保持配置で、IHが片方アンカー(コケ)の横、もう一人はライン間タスク、という振り分けをする。ライン間タスクというかWBサポートをするハーフスペースタスク、と言った方がより正確。

配置の左右差の話

左右差の話をすると、右はデ・パウルの時はコケの横、ジョレンテの時はライン間タスクとなり、左はサウルが両方出来て、デ・パウルがやる時はコケの横。本来ならルマルの場合はライン間タスク。ちなみにバリオスはよくわからん&シメオネもよくわかっていない説がある。

で。3-2-5配置をベースに5レーンを埋めるという考え方で言うとグリーズマンの立ち位置は基本的にIHの左右どっちが高い位置に出てくるか、に依存する。まあここで長々話すのも面倒くさいんだが、グリーズマンは右にいる方が最近バランスが良いですね。という感覚。左WB(リーノorリケルメ)にはボールを触りに来るグリーズマンよりもスペースメイクするサウルの方がやりやすいというのもある。というのがここ最近の推論と考察。ここから先は別のところで書こうかね。

この試合で言うと、グラナダは4-4ブロックから右SHのサラゴサがあまり低い位置で守備に参加しない事で左WBリケルメは相手SB(リカルド・サンチェス)と1vs1を生む土壌はあったが、サウル&グリーズマンの立ち位置の都合でそういうプレーはあまり見られなかった。なのでこの日のリケルメは別に悪くなかった。配置の都合。
左がそんな感じなのに、右のモリーナ&ジョレンテのラインはすでに書いたようにきっちり対策されており、じゃあこの11人でどんな解決をするの?というのが前半の項の"次なる選択肢がなかなか出てこなかった"という言い方に繋がっている。コケがアンカーならヴィツェルの隣まで落ちてHVからの侵入経路を準備したり自分の可動域でプラス1を作りに行ったり、という工夫に自発的にチャレンジするところだが、現状別案の発想をバリオスに求めるのはまだ難しい。おれも求めていない。まずは真ん中に立っていればいい。



●後半

という事で後半。この日はコケを休ませる主題が存在する以上、バリオスを真ん中から動かさずに別案を準備する必要があり、IHの左右差を替える。ジョレンテ→デ・パウルをシンプルに入替。リケルメ→リーノは45分ずつの2分割が最初から決まっていたと思われる。

後半

こうなった
これでグリーズマンは右に移動。彼とデ・パウルが近い距離にいれば構築も展開も上手くいくのは当然の事で、左へ大きく展開してリーノが1vs1を選択し、サウルが内側をサポートする形もすぐに確定させた。同時にグリーズマンとデ・パウルは2人で右ハーフスペースを解決し、左SBネバを内側に呼び寄せてモリーナがクリーンなボールをゴール前に送り込む環境を準備した。

その結果として、

49分にサウルが裏に抜けてロングボールを呼び込みリーノのシュートに至ったシーン
54分のモラタの先制ゴールのシーン
59分にサウルの向こう側でリーノが決定機を作ったシーン
61分にサウルがヘディングを決めるがオフサイドだったシーン

この4つは全て同じ原因から成る事象だった。
デ・パウルとグリーズマンが右ハーフスペースで距離を近づけて立ち、グラナダの4-4ブロックの警戒箇所を変えさせた事と、サウルがモラタの向こう側でトップポジションを取り、自分とブルーノ・メンデス、リーノとリカルド・サンチェスの1vs1の環境をピッチ全体から切り離した事の2つ。

グラナダ目線で言うと後半開始から約15分間に渡り、アトレティコの変化に対応できず陣地を押し返すチャレンジも撤退してまずはゴールを守る作業も出来なかったのは痛恨であり、だからなかなか先制する試合を作れずにこの順位なのかな、という感想。今のラリーガはこの対応力がないとしんどい。

FWにマティアス・アレソを入れるが、ウズニとはややキャラ被り感があり、あまり変化点はなかった。エリア外でボール触ってシュート打ちたがる意識が強まったくらいの差。アトレティコは明確にペースを落とし、ゴール方向の矢印を減らしていく。モラタとリーノ以外全員ビルドアップに参加するくらい極端に切り替えて時計を進めた。
グラナダにドラスティックな変更が発生しない事を確認し、76分にコケとコレアを投入。サウルを下げてバリオスがIHに動いた。

ゴール前でごちゃついて失点しそうな場面もいくつかあったが基本的にどこかを崩されるような形はなく、80分にはヒメネスを入れてクローズ体制を整える。グラナダは最後まで有効な解決策を見出せないまま、1-0で試合を終えた。



●試合結果

年明けから4試合で13得点12失点とびっくり箱のような試合を繰り返してきたがようやく正気を取り戻し、1-0勝利。実家のような安心感。
普段の試合よりも時計を進める時間が多くなったのはスケジュールによる疲労を考慮されてのものだったと思われる。前半に無理やりペースを上げる事をせずハーフタイムに人を替えて解決し、リードしてからも追加点を急ぐ事なくペースを落としてクローズした。1-0は実家のようではあるが、普段の1-0とは少し意味が違ったようにも思う。省エネで終えられたのは良かった点。国王杯もあり、まだまだ週2試合は続く。出会いと別れの季節です。先へ進みましょう。


1/22
ロス・カルメナス
グラナダ 0-1 アトレティコ
得点者
【アトレティコ】'54 モラタ


●ピックアップ選手

サヴィッチ
パーフェクトな守備対応と、デ・パウル&グリーズマンの近くで正確な配球を繰り返した。彼らしい活躍。

バリオス
久しぶりのスタメンで、与えられた役割はこなした。こなしているだけで満足なのかどうかは今後の話。

リーノ
スイッチを入れる役割と大外に飛び込む役割。試合ごとにタスクが増えていく感じは見ていて心地良い。

モラタ
こういう試合で決勝点を決められるのがモラタの良いところ。

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