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高まる鼓動を抑えながら 1節 アトレティコvsグラナダ(H) 2023.8.14

待ち侘びた開幕戦。やっていきましょう。
開幕戦の相手は昇格組のグラナダ。21-22シーズンの降格から一年で戻ってきた。

前回対戦は21-22シーズンの33節、ホームゲーム。

ハビエル・セラーノがプリメーラ初スタメンとなった試合。45分で替えられた試合ね。そしてジュリアーノ・シメオネのプリメーラ初出場の試合でもあった。そのジュリアーノは怪我をしてしまったが今季の所属は同じ昇格組のアラベスです。
日程が一番キツくコンディションの底だった試合。ちなみにめちゃくちゃ言葉を選びながらセラーノのことを詳しく書いているが正直"無理だな"と思ってました。こういうのはどこまで正直に書いていいか毎回悩むよな。ぶっちゃけた話をする場が欲しいなと思っている今日この頃。

22-23シーズンのセグンダを優勝してきたグラナダの監督は元レバンテ監督のちんちくりんおじちゃんパコ・ロペス。11番のミルト・ウズニは23ゴールで得点王。アルバニア国籍だそうです。
21-22シーズンにとても良かったCBのラウル・トレンテは先季全然出てないですが何があったんでしょうか。そしておれのホセ・カジェホンにも注目。お帰りなさい。先季42試合全部出てます。元気な36歳。




●スタメン

開幕戦のスタメン。

・アトレティコ
オブラク
アスピリクエタ / サヴィッチ / エルモソ
コケ / デ・パウル / ルマル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / モラタ

アスピリクエタが早速先発起用。唯一揺らぎがありそうだった右WBはジョレンテ。グリーズマンの相棒はモラタでスタート。

・グラナダ
フェレイラ
バジェホ / ルビオ / ミケル / ネバ
グンバウ / セルヒオ・ルイス / メレンド
ウズニ / オモロディオン / カジェホン

3-4-1-2で配置。トップ下にメレンド。エスパニョールにいた選手ですね。カジェホンとネバがWB。
トップで起用されたサム・オモロディオンは19歳。193センチあるFW。


開幕戦のスタメン


ラリーガ開幕カードの最後10試合目。満を持していきましょう。開幕。


●前半

アトレティコはプレシーズン通り、そして先季後半戦通りの5-3-2で配置。対するグラナダはオスカル・メレンドをトップ下に置いた3-4-1-2の形。彼の位置がコケと噛み合うので、両チームとも最終ラインの3枚に対して2トップが対峙し、中盤の枚数がハマり合う形となる。また、両WB同士も1vs1で向かい合う機会が増えるため、ここの対人とスペースの使い方も主導権争いの軸となっていく。シンプルに選手の質に優位のあるアトレティコからするとやりやすい展開ではある。開幕戦でもあり、一つ一つのプレーを丁寧に確認している様子があった。6分にコケが交代するアクシデントがあったが、バリオスにタスクを丸々引き継ぐ形もプレシーズンで繰り返した通りであり、ピッチ上に不安は特になかった。

双方の噛み合わせについて、攻守とも確認する。まずは守備から。

グラナダは3CB+GKでビルドアップを開始。アトレティコの2トップが程良い距離感で配球を制限していく。中盤の3vs3をマンツーマンで対処し、ここへボールを入れさせずに進行方向を限定していった。WBへの浮き玉か、FWのオモロディオンへのハイボールしか選択肢がない状態。オモロディオンはポストプレーを頑張っていたがなかなか相手が悪いかなという様子

ミドルゾーン。ルマルがセルヒオ・ルイスのマークを捨ててバジェホまでジャンプ。トップ下のメレンドにはアンカー(コケ→バリオス)が張り付いたまま、WBに後ろ向きでボールを持たせて背後からプッシュした。事前の準備と相手の配置を見てしっかり守れていて印象が良い。カラスコがカジェホンに出し抜かれる可能性くらいしかリスクは感じなかった。あとはクロスがオモロディオンにピッタリ合った時どうなるかくらい。グラナダはWBが前を向くタイミングでメレンドが大外まで流れてきてポイントを作ろうとしていた。



続いてアトレティコのボール保持。この日はデ・パウルがグリーズマンと近づいてタスクを分け合う形が効果的に機能し、ポケットを狙って侵入していく。その動きを引き出していたのは新加入のアスピリクエタの持ち出しだった。

アトレティコの3CBに対してグラナダは2トップで対応。ここはアトレティコと同じ。アトレティコは、メレンドにマークされたままバリオスがCBライン付近に位置して、IHのデ・パウル&ルマルはやや大外レーン寄りにポジション。人がいなくなった中央にグリーズマンが降りてきて、グラナダの対応を問う展開となった。主に左CBミケルがそのままグリーズマンについていくことが多く、このグリーズマンが空けたスペースの活用がアトレティコの序盤のテーマとなる。

まずは当然デ・パウルがランニング、あるいはデ・パウルが大外に止まってジョレンテが使う形を基本とするが、噛み合わせに余裕があり前方にスペースを得たアスピリクエタがドリブルで持ち出す機会を得た。

4:40の場面
アスピリクエタの長い距離の持ち出しにグンバウが対応させられ、グリーズマンが簡単にポケットを取る。最後はモラタに決定機が来た。
アトレティコは右側から進む際、ルマルが常にセルヒオ・ルイスの背中を取ったポジションをしている点も見逃せない。グラナダの対処はどんどん難しくなっていった。

アトレティコの先制点は時間の問題にも思えたが、グラナダの撤退の速さでアトレティコのカウンターを発動させなかったのは良い点だった。アトレティコの攻撃はブツ切りで、そしてモラタが外し続けた。
また、グラナダはジョレンテ&カラスコにボールを持たれてもWBが良く我慢し、周囲のサポートも速く突破を許さなかった。あとは2トップがロングボールを収められれば、というところで19歳の大型FWがスタメン起用されたんだな、という流れである。エルモソのファールが増え、39分にセルヒオ・ルイスと競り合った際にイエローをもらってしまったのである程度グラナダのロングボールもリターンを得た前半と言っていい。ちなみにグラナダは再奪回に来ないのでエルモソのビルドアップの仕事はあまりない前半であった。

このまま0-0と思われたロスタイム、CKを跳ね返されてもう一度アスピリクエタがアーリークロス。最後はバジェホに当たったボールがモラタの前に溢れて流し込んだ。


●前半終了

点が取れないこと以外に何も問題のなかった45分。最後に1点取れて気分良く終わった。

アトレティコはグラナダの配置を見ながらボールを動かし、両IHのポジションとアスピリクエタの持ち出しで急所を狙っていった。グラナダはグリーズマンのダイレクトフリックを捕まえることができず、ボールの取り所を設定できないまま時間が過ぎた。当然カラスコをフリーにするわけにはいかず、セルヒオ・ルイスの背後で暗躍するルマルを放置するとまたラインを下げる羽目になった。

攻撃ではオモロディオンのポストプレーが収まればもちろん良かったが、さすがにそんな博打に全プッシュしているわけではなく、時折カジェホンとウズニが共鳴して背後を狙う攻撃が出せていた。もう一人リンクできる人がいればもしかして、というところで後半のビジャール投入に繋がっていく。実際のところパコ・ロペスからすれば0-0で折り返せれば100点の前半だったとも言えるが、そう簡単にはいかなかった。


●後半

選手交代なしで後半。
ウズニがサイドに流れてボールを引き取った形をきっかけに早速ネバから良いクロスが入り、オモロディオンの頭に合わせる。ようやくPA内で存在感を出した。アトレティコはルマルの夢のないミドルなどで反撃する。

58分にアトレティコはメンフィスとソユンジュを投入。同時にグラナダはメレンドに替えてビジャールを入れた。アトレティコの選手交代については後述する

この交代で、グラナダは2CH+トップ下(メレンド)だったのがアンカー+2IH風に変化する。

この変化で、バリオスがアンカー風のグンバウを捕まえにいくかどうか安定しない時間帯に同点ゴールが生まれている。

別にそれが原因の失点ではないんだが、これまで再奪回の狙いをほぼ持たなかったグラナダが高い位置でカラスコを捕まえたのと、その位置にビジャールがいたことはこの選手交代でサイドの深い位置を複数人で取りに行ってIHも協力して再奪回に出るという設定はあったんじゃないかな、と思う。あまりにも狙い通りすぎるので微妙だが。何にせよ62分に、カラスコのプレス回避を引っ掛けたビジャールの速いクロスにしっかりインサイドの面を作って合わせたオモロディオンの同点ゴールが生まれる。出来すぎた巡り合わせだが、会心のゴールである。この試合、プレス回避という作業自体が存在しなかった中、初めてと言っていいサイドの深い位置からのトライでいきなりのボールロスト、失点に繋がったカラスコは反省。


さて得点が必要になったアトレティコ。まずはカラスコが明確に高い位置へ出ていくようになり、グラナダは勇気を持ってカジェホンを高い位置に動かして牽制する。良いチームですね。
そんなこんなでアトレティコからするとトランジションの頻度が増えたのは助かった。67分、ウズニの突進をソユンジュが止めて前進。前が空いたメンフィスがロングシュートを決める。あれは取れない。今季のベストゴール候補がいきなり出た。

目まぐるしく展開は変わり、もう一度得点が必要になったグラナダ。ここでアトレティコにとってややこしかったのが、この日の主審がなかなか笛を吹かなかったこと。グリーズマン周辺でファールをもらえそうだったがなかなかプレーが止まらず、勢いに任せて突撃したいグラナダに有利な展開になっていった。
74分グラナダはプエルタスとリカルド・サンチェスを入れる。大外の単独打開ができる人選。
アトレティコはサウルを入れて中央の強度を補完し、グリーズマン→コレアを交代。先季はフル出場が多かったグリーズマンだが、休む時間を作れた。
グラナダは81分、オモロディオンを下げてドリブラーのサラゴサを入れる。オモロディオンは良くやれていた。面白電柱。同時に中盤にペトロビッチを入れたのが最後のカード。サラゴサはキレのある突破を見せていたが右サイドではサウルが、左に移動するとアスピリクエタが対処した。アトレティコはメンフィスを中心にロングカウンターを何度か発生させるがグラナダも気合で耐えていた。普通に残留できるチームですねこれは

最後はロスタイム+8分、コレアとジョレンテがしつこく追いかけ回して3点目が転がってきた。ジョレンテは最後まで良く走りました。彼は自分が点を取ると調子が上がっていく気がするので良い傾向。


●試合結果

まずは開幕戦勝利。先季の開幕戦、ヘタフェ戦(3-0)に続く3得点での勝利となった。今季開幕戦で3点取ったのはアトレティコのみ。

前半から相手の配置を見て正しくプレーし、先制点も得た。前半の45分を過ごすにはIHはデ・パウル&ルマルのコンビのバランスが良く、今後も軸になる。モラタも引き続きフル出場は少ないだろうが、結果も出した。メンフィスと質の高いレギュラー争いを続ける。

最終ラインは選択肢が多いこともあり、ベストな並びはまだまだ探していく段階。右のアスピリクエタはMOM級の出来で、WBに移動した後の対応もさすが。対人守備とポジショニングはもちろんのこと、効果的な攻撃参加が光った。後ろ向きの相手を追いかけ回すのが上手くて面白かった。自身のインテリジェンスの高さとそもそも内外制限なくプレーできる能力が高く、空いた場所に立っているだけで効果的だった。あとスローインが上手い。地味に助かる能力。

この試合唯一の懸念はコケの負傷だが、プレシーズンで再三テストしていた通りバリオスがほぼパーフェクトに対処した。連続起用にどれだけ耐えられるか未知数なところはあるが、彼が一つ壁を越えるチャレンジが早速訪れている。ヴィツェルも控えているので思いっきりやってほしい。

・選手交代の疑問
58分の選手交代で発生したあれこれについて。このタイミングでアトレティコは2枚替え。モラタ→メンフィスを交代し、もう1枚はソユンジュを投入。交代はルマルとなった。

こうなった
この交代の意図は疑問が残る。右CBで非常に良かったアスピリクエタをわざわざ右WBに押し出した形。当社比で攻撃枚数を1枚減らすような交代に見えた。

推察をできる材料はあるので書いていく。まずはプレシーズンであった形だが、ジョレンテを右IHにする時はグリーズマンが左に動くというもの。そのため、ルマルが不要になる。しかしこの試合では選手交代後もグリーズマンは左側へ動くことはなく、相手3CBへのプレスも右からジョレンテ、グリーズマン、メンフィスの順で行っていた。なのでこれは違う。余談だがジョレンテのIH起用はグリーズマンの可動域をやや制限する嫌いがあり、個人的にはそれがあまり好きではない。

そして、右WBがジョレンテ→アスピリクエタになることが守備力向上かと言われると、おれはジョレンテの守備能力を過剰なまでに評価しているのであまりシメオネに同意できない。結果的にはアスピリクエタがイエローをもらいながらも途中出場の26番サラゴサを抑え込んだので結果オーライではあるがまだ1-0、まだ相手の交代プランも見えていない時間帯に同点にされたらゲームプランを変えなければならなくなるような選手交代は少しびっくり箱な気がした。結果はご覧の通り。

個人的にはシンプルにイエローをもらっていたエルモソ→ソユンジュで良かったと思っているが、コケのアクシデントで前半に交代機会を1回使っていたためその後のプランのために早まった交代をしたのかなと。

グラナダについて。昇格初戦だが普段着のサッカーで説得力を見せた。19歳のオモロディオンを組み込んで得点に繋げたのは望外の結果だったかもしれないが、素早い撤退と複数人でポケットを取りに行く攻撃はプリメーラで問題なく通用する雰囲気。メンフィスのゴールはあんなのどうしようもないし3失点目はロスタイム。どのポジションの層が薄いかなどは今後の確認事項だが、ポジティブな未来が見えるチームであった。次節はホームのロス・カルメナスにラージョを迎える試合になるが、まずはポイントを獲得したい。


8/14
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 3-1 グラナダ
【アトレティコ】’45+4 モラタ ’67 メンフィス ’90+8 ジョレンテ
【グラナダ】’62 オモロディオン


●ピックアップ選手

メンフィス
同点にされた直後のゴラッソは早速今季のハイライトになりそうな弾丸ミドル。トランジションとサイドの崩しで存在感を出した。

アスピリクエタ
3CBの右で信頼を得る守備と持ち出し、クロス。WBに移動してからも時間を使うプレーとジョレンテの裏抜けをサポートした。もうコケが休みの期間キャプテンマークを巻いていても誰も文句を言わなそう

ジョレンテ
対面するカルロス・ネバを抑え込み、右サイドを駆け上がった。なかなかチャンスメイクに至らなかったがロスタイムにチーム3点目をゲット。最後までよく走った。

バリオス
前半6分からの緊急出場となったがよく準備できていた。出場時間を得られる貴重な時期にしてほしい。バックパスの凡ミスはご愛嬌。

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