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配信は舞台を殺したか?

これを書いている現在、宣言は解除され、感染者数は100を切り、街には少し活気が戻っている。
が、劇場には人が帰ってきているとは言い難い。先日発表されたぴあ総研の予測だと"政府の支援があって"2023年に回復と出ている
つまりまだまだしばらく苦難の時が続くということだ。
街や店には人が溢れているのに。はっきり言って絶望だ。

ここからは伝聞も中心になるが、このご時世でも客入りが衰えなかったり、宣言明けで一気に売上が上がった公演もある。具体例は出せないが、やはり原作のゲームに人気があったり、音楽と連動しているパターンが多い。このコロナ禍においても影響の少なかった(むしろ恩恵を受けた)ゲームや音楽との連携で作品全体から離れさせない正のスパイラルを生み出したと言えるのではないだろうか。

転じて芝居が中心の中小規模の公演は次々と中止の憂き目に遭い、無事公演できたとしても地方で行うことも、地方からのお客さんを呼び込むことも難しくなった。感染対策だってかなりの金額がかかるのも原因にあるかもしれない。その中で俳優たちから聞くのが「地方のファンからの反応がなくなった」の声だ。
確かに、その俳優にも作品にも触れることがなくなれば何となく習慣から外れ、観なくなることも多い。あんなに応援していたスポーツチームだって、仕事で忙しい間に追っていけなくなって気づいたら何年も観てないな、なんてこともよくある。もともと要らなかったと言われればそれまでだが、それぐらい習慣化は大きな味方だ。

しかしここで一つ気になることがある。ファンの皆さんは全く作品に触れられなかったわけではないのだ。
ここ1年ほどでいつでも目にする機会が増えた"配信"だ。

配信はありますか?配信決定!アーカイブ配信、生配信。舞台公演にはいつでも配信の一言が付き纏うことになった。
僕らは元々映像制作チームなので、撮影はできるし(依頼お待ちしてます)、やるならば配信はセットで考えているフシはある(依頼お待ちしてます)。そしてここ何度か自社だったり外注だったりで配信に取り組んで思ったことがある。

配信はあまりファンの維持には適していないんじゃないか

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理由は・・・
・まず、SNSなどの反応に比べて視聴者数が少ない(ことが多い)
これはまず配信でも絶対に見たいファン以外追ってきてない証拠。
ふと観たいと思った時に覗くプレイガイドも定着していなければ本公演ほど宣伝が打たれるわけでもない。期間が短ければ売れないし、長ければいつでも観れると先延ばしにされる。そりゃ今買わなくてもってなる。そして徐々に減ったのではなく最初から少なかったってことは配信はファンの期待に応えるツールではない可能性が高い

・そもそも舞台という生の感覚を味わいたい客層と矛盾している
舞台を生で観る魅力を感じている人は、何度か配信を見て気づくはず。
生の方が確実にいい。そしてオンライン視聴は予想以上に疲れる。自分で見る(舞台上の)場所を選ぶ自由さを奪われる。
いくつかのメリットはあるものの、舞台観劇の良さは結構な範囲で奪われてしまう。そして最大のデメリットで、生の本人を観ることができない。舞台のファンにとってこれは致命的になる。代替行為にもならない。

・生観劇のシークレット感が奪われてしまう
映画をはじめとして他のメディアは忘れる頃まで発売されない。どんな内容までを知るのにかなりのラグがあるのだ。
劇場でやってる映画が今夜テレビでやるのなら、そっちで見る人は多いだろう。それが有料でもまだ見る人はいると思う。足を運ぶって予想以上にパワーの要ることで、それをこの自粛社会で気付いてしまった人が多いからだ。

それが配信によって”あの場にいたから味わえたこと”のほとんどが(少なくとも何度が劇場に行ったことのある人であれば)余すことなく共有されてしまう気になってしまう。しかも、ほとんど日をおかず、場合によってはリアルタイムに。
なので行った人たちだけが知っている時間がほとんどない。劇場に行ったとて本人に話したり差し入れを渡せる機会もほぼないから、行かなかったことで味わえないことが減ってしまっているのだ。

これがファンたちと大声をだして一緒に応援することに価値のあるスポーツやライブだと話が別かもしれないし、もちろん劇場で見ることで感動なり受ける迫力はかなり変わると思う。でも参加し続けることに意義があったりどんな役だったかを知りたい人にとっては目的が果たされてしまうのだ。しかも魅力が幾分も削がれた状態で。それはつまり、舞台観劇という体験がどんどん下方修正されていくということだ
そりゃやがてこんなもんだったかな?ってなってもおかしくない。なった時はしっかり切られるだろう。そこまでチケットは安くない。

これを、撮影と配信と合わせれば下手すると100万円を超えてくるようなお金を払ってやるわけです。このご時世で貴重な100人以上のお客さんのチケット代が、体験の下方修正のために使われる。そう考えると配信自体の是非が問われる事態なのかもしれない。


配信が舞台を殺す。

結論から言うとそうとは限らない。
だけど確実に負の側面はあるので、出し方や使い方は考えるべきなのかもしれない。

例えば初期の配信は、公演を行えなくてやむなく無観客でやった配信が多かった。
先日の無観客のオリンピックのサッカーなどは見ただろうか?
練習試合にしか見えない。選手たちも無観客は辛いと散々訴えていた。同じようにもしかしてノリきれない配信での芝居を見たファンが、「配信の芝居って面白くないな」と感じて離れたのかもしれない。

僕らもこの公演では配信を予定してはいる。だからこそその時感じたものは見過ごさずに考えたい。

そして結局のところ、少しだけ見にきてくれと言いやすくなった今だから言います。
生で観に来て欲しいです。

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舞台版 あやかしむすび
10/13-10/17
渋谷区伝承ホール

ヨリミツ:富永勇也
ツナ:橋本全一
黒天丸:秋沢健太朗
南天:釣本南
紫陽:天野眞隆
スエタケ:伊藤節生
サダミツ:阿部快征
キントキ:横田陽介
石熊童子:二平壮悟
茨木童子:松波優輝
酒吞童子:本川翔太

花園の姫:音河亜里奈
馬頭:渡辺誠也
牛頭:内田隼人
瞋鬼:熊澤玄徳
痴鬼:白岡優
小豆洗い:土井康平
豆腐小僧:神谷春樹

語り部:和泉元彌


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