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アイドルオタクに刺さる!はずが実は小劇場の演劇好き向けらしい作品、Re:flag vol.1 「sacrifice」

プロデューサーの安藤です。
無事公演も終わりましたので、備忘録も兼ねて記していきたいと思います。
アメツチプロジェクト Re:flag vol.1 「sacrifice」
演劇プロジェクト"アメツチ"として立ち上げた僕らですが、映像や配信も行う制作会社として稼働していることもあり映像を使った公演が多めです。で、そうではない作品もやりたい思いはありまして、何かスタンスごとの看板を提示できないかと演出の山田英真と話し合い立ち上げた社内ブランド"Re:flag"の第一弾です。

アメツチと言えば映像を使って派手にエンタメ!みたいなイメージがややありますので、いや、地味な完膚なきまでストレートなものもやりますよ!というのが一番分かりやすい説明なのですが、それ以外にもスタッフの肩書きや動き方なども少々調整してます。それはうちうちでの話なのでさて置いて。

「sacrifice」はこんな作品

国民的アイドル”ハイリガ”のコンサート終わり、ツルタ達”オーヴィス”と言われる熱狂的ファン達はいつものファミレスに集い感想などを言い合っていた。
そんないつもの光景は誰かの言葉をきっかけにファン同士のいさかいに発展していた。

一方その頃どこかの国のどこかの町。
とある神の教えをめぐってお互いの主張が対立し、争いがはじまろうとしていた。
信じる者対信じる者の争いが2つの時代を超えていま、はじまる

sacrifice公式サイトより

壮大なキービジュアルに壮大な音楽、そしてこの文章で結構難しい話かと思われたのですが・・・

要は、アイドルという神的存在を崇拝するオタク達と神を崇拝する信者達
同じものが好きなのにちょっとしたスタンスの違いで揉めちゃうよね!ってのをあるあるを交えてハイテンポで言いあいするような、笑いも交えつつ(コメディとはいわないアメツチ2人)のストレートな芝居です。

短時間でハイペースなセリフの応酬で結構見やすい作りで中世の方も現代の人にとっても等身大でわかりやすく仕上がっていると思ってます。

キャスティングについて

普段のアメツチのキャスティングは演出の意見も当然伺うし話し合うのですが、基本的にプロデューサーである僕が決めています。この人使ってよーって時もあります。
しかし今回は僕が探した人も山田と話し合い、山田英真の意見をかなり反映しています。
山田は基本的にレシーバー(僕や役者の持ってきたものを受け止めるタイプ)のため、基本的にこちらが聞いてもないのに「この人でないとダメ」とか「この役はこの人で」などの言葉はほぼ出てきません。これまでの会話だったり、過去にリストアップされた中から今回の話にはこの人なんじゃないかって形で提案したりしています。
また、今回は完全オリジナルで台詞の飛び交うストレートな演劇。綿密に演技プランを話し合う必要があるため、その辺りのコミュニケーションが円滑にいかないことは致命的だという判断でそこを最重要視しました。
観てくれた方はわかるかも知れませんが、実際、稽古場ではリズム感も含めてかなり細かく話しながら稽古しています。

まずはアメツチには欠かせないぐらい重要な役を担うことが多い本川翔太。
あやかしむすびの酒呑童子といい、山田英真演出で悪役的ポジションと言えば、ぐらいの役割になっています。
演技力はもちろんルックスも良いし、山田とのコミュニケーション、運営との付き合いも深く、なるべく欠かしたくない存在です。あとはもっと売れていい優れた役者なので世間に正当な評価をされれば完璧です。歳を重ねてももっと良くなると思いますので皆様、本川翔太をよろしくお願いします!笑

その他にもアメツチ常連組(ともに3作出演)の神谷春樹、松波優輝がいて、彼らも山田にとってコミュニケーションの取りやすい役者です。彼らは運営の事情も汲み取って宣伝にも動いてくれたりするタイプで、非常に助かってます(今回もありがとうございました)
ただ、神谷君は今作を最後にしばらく休止するようで、残念ですが。色々才能ある人なのでいつかまたどんな形であれアメツチに帰ってきて欲しいです。

さて、話を戻して・・・
アメツチ初出演組は湯本健一、生田輝、氏家蓮、龍人、縁川睦。
このうち湯本、縁川の2人は山田と過去に別現場で仕事をしています(作品は僕も拝見してます)
湯本くんについてはインタビュー(参考)でも答えたのですが"そのうちお声かけたいリスト"に入っていて、今回オファーしてみたら即答していただきました。前回山田とお仕事をした時にやり易かったからと答えてくれたのは今回のコンセプトとのもあっているので安心感がありました。顔合わせの際に脚本を読んでオファーを受けて良かったと思ったって言ってくれてとても嬉しかったのを覚えてます。
縁川睦くんに関しては他の7人と違い(年齢設定的に)脚本が変わると入れ替えが難しいところなので、山田に確認したところ「縁川睦」との返答があり、アメツチに出たいと言ってくれているとの話も聞いたのでお願いしました。彼自身企画やプロデュースもされるのでとても頼りになる存在でした。毎朝りく君と話していた気がします。本当に助かりました。

残りの3人。氏家蓮くんは僕がプロデュースした別の公演でご一緒してました。寡黙だけど芝居には熱くて、ファンも芝居に熱心な印象だったのでこう言ったストレートな演劇でも本人・ファンともに受け入れてくれるのではないかとの目論見もありました。山田も一緒に何度か芝居を見ているので把握はしているかなというのもありました。今作でまたいろいろ話しましたが、やっぱり本当に熱い男でした。今回のような笑いを起こすポジションにも全力で取り組んでくれて、やっぱり素敵な役者だなと。

生田、龍人の両名は全くの初。ですがお二人とも話は前から聞いてましたし、出演作も見たりして、どこかでお願いしたいなと思っているところでした。今作は女性があまり女性性が強すぎるとちょっとブレそうだなと思い、中性的な魅力もある生田さんを提案してみました。
ちなみに、当初の女性キャスト案は中世パートのモデルとなっている宗教改革におけるルターの妻が最有力だったのですが、脚本開発上の流れでなくなりました。
この時点では実は中世パートと現代パートは別キャストの可能性もあったので、一旦浮いてしまったのですが、現代・中世で2役やってもらった方が面白いかもという話になり、先輩店員・里奈という役が生まれました。
結果的に里奈と中館のコンビはお客さんが連日きていただくきっかけにもなり、店長も加えた3人はとても連携が取れていて、よかったなと思ってます。
龍人くんは芝居が繊細で、真面目で、身体の使い方も本当に上手いなと思いました。オタクなんだろうなっていう動きとか。どちらかと言うとサポート役の神谷君と龍人くんが達者に忠実にキャラクターを演じてくれたからこそ、しっかりと全体が調和したんだろうなあと思ってます。

そうそう、今作は基本的に現代パートの方に中世パートの方のモデルの名前が引用されています。キャラ名とか、場所の名前とか。劇中で出てくる舞台名や人物名も一応元ネタや意味があります。
例えばツ「ルタ」とか。贖宥の札を配った人の名前とか。関係者の名前を見てみると現代パートの名前と似た人たちがいます。興味持ったら調べてみてください。店の名前とスタジアムの名前にも元ネタがあります。
最初の発表時に気付いた人もいて驚きました。みんなの考察本当凄い。

芝居についても細かいところがどんどん追加されていて数日間稽古から目を離していると全然別物になっていたりして本当に楽しんでました。
セリフの応酬が読み合わせの時とは全く違っていて、しかもシチュエーションがどんどん追加されてて、毎回稽古場で笑ってました。

注意したこと

僕からは、"ただでさえちょっとセンシティブな題材を扱うので、リアルでこう言うことは無いようにはしてくださいね"、とは伝えました笑
とはいえ普段の振る舞いというのはあちこちから聞こえてきますし、そう言うのが無さそうな人達を意図的に選んでいますので心配はしてませんでした。実際のところ今回のネタほど舞台俳優たちはそう言うことをしているイメージはないです、僕は笑 まさにスキャンダルの数に比べて「どれだけ舞台役者がいると思ってるんですか」です。

あとは山田英真の脚本もそうだし、僕のスタンスでもあるんですが、例えどちらかに偏った意見を持ったキャラがいたとしても別の意見も入れるという点。今回は様々な立場からの代弁者がいました。でもこの役者がこのセリフ言っていいのか、とかどう受け止められるかなとか、稽古でも舞台裏でも随分皆で話しました。ある程度は好意的には受け入れられたようには思います。
もちろん「そうは思わない」とか「面白くない」という賛否はあったし、あって然るべしだと思ってますのですが、ただ我々の悪意として出した作品とだけ認識されなくて少しホッとしました。

同じく宗教面でも。無知ゆえに知らず知らずに喧嘩を売ってるみたいなことになっても困るので、モデルとなる宗教が一応明確にならないような美術やキービジュアルになるべくしました。例えば劇中で十字架は出てこないなど。名前を変えるかどうかも含めて議論もしました。推し活を宗教と並べる事、それを商売にしている側がネタにすることもかなり難しいところだと思ったのですが、オタク側視点で言うと制作側も大概オタクだし、宗教視点側も喧嘩を売っている訳ではないので何かの言い回しなどが引っかかって怒られるぐらいなら仕方ない、ぐらいの勢いで最終的にはあの形となりました。

ちなみに実際のアイドルも何人か観に来てくれましたが、笑ってくれたり怒ってたり(冗談でですが)反応は様々でした。

狙い通りと狙い外れ

ユニカビジョンは宣伝効果としては正直なところ大きな期待はしていませんでしたが、小劇場ながらメジャー感というか、こう言うところで宣伝しているというアメツチのブランディングとして打たせてもらいました。狙い通り?キャストもファンの皆様も喜んでいただけたようで、僕らもテンションが上がって良かったなと思っています。

公演自体はファンの皆様からもアイドルオタクからも好意的な意見を頂きました。ただ、予想外だったのは「小劇場の演劇ファンの方が刺さるんじゃないか」との声が予想以上に多かった点です。そう言えば(どっち付かずになってもってのもあり)あまりそちら側へのアピールしてなかったな・・・という反省というか、後悔というか・・・もっと呼べたのかな的な・・・。


ですので、演劇好きの皆様、演劇好きにも刺さるようなので、配信でご視聴よろしくお願いします!

再配信について

7/16(土)19:00~7/30(土)23:59まで #舞台サクリファイス 再配信の販売が決定しました。
皆様の感想をもとに一部アングル変更や画質アップなど、再編集された完全版です。

主なところでは、
・特徴的なリアクションがあったところを挿入。
・セリフ応酬のシーンでスイッチングが間に合わなかったところを調整。
・画質の向上。
また、作品だけ興味あるという方のために、特典映像をカットした本編のみバージョンをご用意しました。もちろんその分値下げをしております。

特典付き →https://ametsuchi.zaiko.io/item/358101
本編のみ →https://ametsuchi.zaiko.io/item/358103

https://twitter.com/sacrifice_stage こちらからも情報発信します!

中野ザ・ポケット