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LOCAL PRODUCE BOOK (8) 「仲間の集め方・チームの作り方論」

LOCAL PRODUCE BOOKの書籍化に向けて書き進めてきた記事も8つ目となりました。おそらくこの記事も含めてもう4〜5本ほどで完結すると思います。引き続きよろしくお願いいたします。

今回は、プロジェクトマネージメント(以下、プロマネ)について。

いわゆるプロマネ。企画したものを「動かす」パートに入ります。ローカルに限らずプロジェクトや仕事で何かの案件を動かす場合には必ず必要なスキルですが、人もないお金もないローカルでプロジェクトを動かす時には色々と考えないといけないことがあり、より広義なプロマネが必要になってくると考えています。その辺りの考えをお伝えします。


広義のPM、狭義のPM

まず、プロジェクトマネージメントと調べると大体以下のような説明があります。

「プロジェクトマネジメント」とは
 

プロジェクトマネジメントとはプロジェクトを成功裏に完了させることを目指して行われる活動のことである。これにはプロジェクトを構成する各活動の計画立案、日程表の作成、および進捗管理が含まれる。

wiki

そうだよね、という感じですが、プロマネを山登りに例えてみましょう。

山を登るとなれば、まず日程を決めて計画を立てますね。そして、道具を用意して準備する。そして、いざ登るとなれば、どのぐらいの時間がかかるのかというスケジュールを確認し、どのような道・経路で行くか、どのポイントが危険そうで何をあらかじめ準備しておく必要があるかなどのタスクを確認しておきます。熊が出そうだから熊鈴は持って行こうねなど。

そこまでの作業はプロマネでは一般的かと思いますが、加えてローカルのプロマネに必要なのは、「応援してくれるファン」や「チーム」を意識することです。

人が少ない状況の中でチームを作ったり、人の距離が近いためケアしなければいけない地域住民の皆さんがいたりするため、そうしたことも含めた広いプロマネが求められるのです。この狭義のPMと広義のPMを組み合わせながらプロジェクト全体を進めていきましょう。


それでは、広義のPMを説明していきます。


書籍の中では、リアルでタフなローカルプロジェクトのプロマネについて言える範囲で紹介したいと思います。大なり小なり色々な山を越えてプロジェクトは世にでています。細かな配慮、根回しも含めてプロマネ。失敗もたくさんしていますし、今でもすべてが完璧では決してありません。

実例を示すと分かることが多いが、それは書籍の中で紹介したい


プランニングよりプレーヤー

では話を進めます。

まず、大きな前提「プランニングより、プレーヤー」について説明したいと思います。

地域では、よく大学の先生がやってきて地域の課題解決ワークショップが開催されます。実際、僕も何度か呼ばれて参加したことがあります。その場では色々なアイディアが出され、「こうした施策をこれからやっていけるといいですね」となんとなく楽しい雰囲気で終わります。しかし、その後何か実現しているのを見たことはほぼありません(なんなら地域サイドはワークショップ疲れをしているところもあります)。
また、地域の組織の長たちが集められて、特定の課題を話し合う協議会も発足しては消えていきます。アイディアが出ても、それを誰が責任を持ってやるか、というところに至ると、地域に人手が少ないこともあり途端に話はふわっと終わるのです。

もう一つ例を挙げると、地域にいると、地域外の方々から「こうしたら遠野はもっと良くなるのでは?」と色々なアイディアを提案してもらいます。そうした提案を拒むつもりは全然ないのですが、結局「それ誰がやるんですか?」と聞くと、話はそこで終わることが多いのです。
地域の課題はすでに地域側の人間は気付いていることが少なくないです。
気付いているものの、そこまで手が回らないのがリアルな状況です。

つまり、いくらいいアイディアがあったとしても、いいプランニングをできたとしても、それを「誰が」やるのかという、「人」と紐づいていなければ何も実現しないのです。必要な人員を募集する必要もありますし、まず、現状動けるプレーヤーで全体の計画を調整した方が良いとも思います(若手の育成も含めて)。

遠野市で2023年に設立された組織「観光マネジメントボード遠野」は、まさに実際に動ける30〜 40代のメンバーが中心に構成されています。これまで8年間、遠野で様々な観光系プロジェクトを見てきましたが、ようやく機動力のある組織ができた実感があります。

【参考】ボードが中心になって、16年ぶりに刷新された遠野市の新たな観光構想はとてもよく出来ている。富川もメンバーの一員で、観光ビジョンのコピーを担当した。https://www.city.tono.iwate.jp/index.cfm/25,68909,c,html/68909/20230712-084153.pdf


ちなみに、こんな言葉もあります。「If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.」早く行きたければ一人で行け。遠くへ行きたければ一緒に行け。というアフリカのことわざみたいですが、その通りだと思います。

個人的な取り組みや短期的な取り組みの場合、一人で完結することもありますが、たとえ一人で始めたものだとしても、続けて行く場合や長く続ける場合は、誰かに協力してもらいながら進めていくことになります

ネット上の画像を引用させてもらいました

「人を巻き込む」「地域を巻き込む」というと大袈裟ですが、人が少ない地域で協力者を増やす、または仲間をうまくマネジメントする、または地域の方々と良好な関係を築くことはローカルプロジェクトにおいては非常に重要です。「地域への入り方」の章で具体的な方法を書いたのでご参照ください。

組織に必要な役割とは?

まず、プロジェクトや仕事における役割や職種、必要なメンバーはどのような人たちがいるでしょうか。例えば、ある大きな会社組織の役割を細分化すると以下のようになります。

このように人員の多い組織に所属している方々には、この章の内容ははあまり必要ないかもしれませんね。小さな地域では、そもそもこんなに多く人がいないので、営業も発信も企画も製造も自らするような、役割を一人で兼ねることも非常に多いです(自分もそうです)。


ちなみに、弊社「株式会社 富川屋」のケースをご紹介します。

複数かつジャンルの異なるプロジェクトが同時に動いていて、プロジェクトごとにメンバーを編成してチームを作っている状況です。遠野在住のメンバーがメインですが、岩手県内に住んでいるメンバーとも頻繁に一緒に仕事をしています。
社員は厳密には富川一人で、都度外注費をお支払いして業務委託的に仕事を依頼しています。「ギルド」式と呼ばれることもありますが、それぞれがフリーランスで活動していたり、組織に所属しながら参画してくれていたりしています。

なお、しっかりお伝えしたいところは、最初からこういう状況ではなかったということです。ひとりでやってきた期間があり、途中で苦しくなって、これは大変だ…!と都度色々な人にお声がけしたり、メンバー募集をしたりして、この様な状況に落ち着いています。その辺りの苦労や黒歴史も書籍の中では紹介したいと思います。

2023年頃の状況。10人ぐらいが富川屋のまわりで活動してくれています。


大きな組織を作る必要は全くないですし、僕もなるべくスリムな組織でいたいと常に思っています。ただ、地域の中で何か活動をする場合、信頼できるいい仲間を集められるといいですよね。仕事やプロジェクトがよく進み、かつ精神安定的にも非常に大切な部分です(仕事のストレスはほぼ対人のストレスです)。

ということで、地域における仲間の集め方を紹介します。

(そもそも「情報発信論」を思い出して、仲間が必要なことを発信してみましょうね。まずはそこからです)


自分だったらどんなチームに参加したい?

「仲間を集める」際に、まず考えてほしい問いがあります。それは、そもそも自分だったらどのようなプロジェクト・チーム・組織に参加したいかです。その組織の種類、要素、雰囲気、カラー、スタンスはどんなものでしょうか?

この章の内容を研修でお伝えする際も、まずはこの質問から始めていまして、色々な意見が出て面白いです。「雰囲気が良い」「意見を聞いてもらえる」「リーダーがしっかりいる」「いい意味でゆるい」「似た感覚の人がいる」などなど。それは裏を返すと、そうした要素を持っているチームを作ることが、仲間集めのためには重要である、ということです。

この要素は色々あっていいと思いますが、強いて挙げるとすると「ビジョン」「楽しさ/やりがい」「お金(対価/評価)」かなと思います。

どこに向かっているか分からない船には乗りたくないし(沈没するかも)、シンプルに楽しいことも大切だし(または落ち着くか、精神安定が担保されているか)、またお金でもなんでも良いですが、頑張った代わりのしかるべき対価は用意されていてほしいですよね。



ビジョンを発信する

人が集まっている組織に目を向けてみると、わざわざメンバー募集の段階で頑張っているというより、そもそもの普段の活動やスタンス、目指すビジョンや世界観が仲間を集めるフィルターになっていると感じます。

岩手のヘラルボニーはまさに。かっこいい人材がすごく集まっているのは、そもそもの組織としてのスタンスがかっこいいからだと思う。また成し遂げようとしているビジョンも明確。画像お借りしました。
自分も、仲間を集めたいから発信してる訳ではないが、こうした世界観が好きで集まってきたり、一緒に何かやりたいと思ってくれる人は多い。

仲間を集めるための「ビジョン」は、ホームページやパンフレットにしっかりと明記しておきましょう。ビジョンの策定は「強みの見つけ方」パートで書きましたが、フレームワークを使ったり、信頼できるパートナーに意見をもらったりしながら客観的な視点を持って言葉に落とし込んでいきたいところです(そのためにコピーライター というプロフェッショナルもいます)。

加えて、noteのようにブログサービスを使いながら、しっかり長文で自分の想いやスタンスを書いておくことも重要です。どこに向かっている人・組織なのか可視化させておくことは、これから関わろうとする人にとっては気になるポイントです。

以下のように定期的にnoteに書いています。YouTubeとかポッドキャストでもいいと思います。



また、以下は、富川屋が求人を出した時の実際のnoteです。こうした文章を書き出すのは簡単ではないし時間もかかりますが、急がば回れで、自分の想いやスタンス、原動力などをしっかりと言語化することは仲間集めにおいても重要です(自分で書けない場合は、ライターさんにインタビューをしてもらって書いてもらうでもいいと思います)。


リアルな場所の重要性

しかし、こうした発信をしていたとしても、地域においては「何をしてるのか(どんな活動をしているのか)よく分からない」と言われてしまうことも少なくありません。

普段接触しているメディアが世代によってかなり違うために仕方ない部分もありますが、郷にいれば郷に従え。活動がうまく伝わらず、お互いにモヤモヤすることが少なくありません。

こうした場合に、地域では活動やビジョンを一瞬で伝えるためのリアルな空間を持っていた方がいいと思います。僕も事務所を駅前に構えてから、なんだか風向きが変わった気がします。まず、あそこに富川がいる、という
「実態」が見えることは想像以上に地域では重要なのです。

「仲間を集める方法」の文脈でこの内容を書いていますが、このリアルな空間を持つことは、地域で何か活動をする際には大切なことです。

大きい場所じゃなくていいし、最初は自分で持たなくても、間借りしたり、POPUP的な感じでいいと思いますが、「実態」として活動が見えることの安心感は結構大切なのです。

※一方、場所を持つと大変なこともあります。地域の人々にとっては、そこが「開いている ≒ 仕事をしている」、「閉まっている ≒ 仕事をしていない、その土地にいない」と思われてしまうからです。僕の場合、出張も多いし、外での打ち合わせも多いため事務所にいないこともあり、そうなると、途端に「遠野にいないの?」と心配されたりします。稼ぐためにはむしろ外に出ないといけないのでめっちゃ仕事してるのですが、その辺りはあまり理解されないことが多いです(最近はご近所の方も僕も慣れた気もします)。


野心の集合体をつくる

次に、「楽しさ/やりがい」で人を集める方法をお伝えします。
ここで僕が意識しているのは、野心の集合体をつくることです。どういうことかというと、仲間になってほしい人のやりたいことが、そのプロジェクトの中で達成されるように設計するということです。

例えば、とあるプロジェクトを始める場合、メンバー全員にこんなシートを書いてもらうようにしています。「〜〜〜」の中にプロジェクト名を入れて、自分は今回の仕事を通して、何をしたいの?また、それななぜなのか?を書いてもらうのです。さらに、今回のプロジェクトを自分の視点で一言で表すと「○○○○○○○」である。という風に、言語化してもらいます。

今回のプロジェクトを一言でいうと、何?
こんな感じで書いてもらう。合宿的にやるのもオススメ。


例えば、「こども本の森 遠野」のプロジェクトを始める際の富川のシートが以下です。これをメンバー全員に書き出してもらいます。

これをやると、チームメンバーがやりたいことや、目の前の仕事に対してどのようなスタンスで捉えているのかが可視化されます。こうしたプロセスを踏んでおくと、チームを作る側やマネジメントする側はもちろん、チーム全体にとってもお互いを理解できてすごく良い相乗効果が得られます。オススメです。


参加者から主催者へ。舞台を用意する。

また、他に意識していることとしては、「参加者から運営サイドに入ってもらうこと」です。イベントに普通にお客さんとして参加するのも楽しいのですが、ちょっとした当日の手伝いだけでも運営側に入ると、帰属意識が高まり、なんだかちょっと楽しくなることがありますよね。

「○○さん、これやってみませんか?」「これお願いできますか?」と頼むことで、楽しさや「やりがい」を感じてくれて、自然とチームになっていきます。地域だと、お客さんとして何かのイベントに参加することは少し気恥ずかしさを感じたり勇気が必要だったりするものですが、何かを頼まれたら参加しやすかったりするため、頼み方を少し変えてみることで、人が集まる集団・組織になっていくのです。

仕事の舞台を預けていくことも、チームをつくるポイント



とはいえ対価(お金)は重要

だいぶまた長文になってしまいました。

最後に、しっかりと仲間が集まり、長く続いていくためには「対価(お金など)」がどうしても必要です。ボランティアは一時的には良いものの、長く続けていくと厳しい部分が出てきてしまいます。

最初はビジョンや楽しさでもOKですが、謝礼や人件費など、お金が必要なフェーズがやってきます(お金以外が対価のこともある)。この辺りの話は「事業化」パートで触れることにしましょう。


以上で、プロマネ論①_広義のPM、仲間の集め方・チームの作り方を終わります!

実際のチームマネジメントや、進行中の仕事の中でどう仲間をケアしていくか、コミュニケーションを取っていくかなどには触れられなかったが、それは書籍の中で新たに書き下ろせればと思う。

それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました!次回は狭義のプロマネ(スケジュール、見積について)をご紹介します。

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