「プロデューサー」って何してるの?遠野まつり、張山しし踊りグッズを例にご紹介します。
「プロデューサー」という肩書きを名乗ってから前職時代も含めるともう10年のキャリアになってきました。
最近では、より地域にコミットしたいのと、地域におけるプロデュース術(人間関係づくり〜実施)の経験を積んできたので「ローカルプロデューサー」と名乗っています。
一緒に仕事をさせてもらった方々には仕事やプロジェクトの中で、プロデューサーとして富川がどんな動きをしているか理解していただいているかと思いますが、デザイナーやカメラマンと違って、なかなか外からではわかりづらい職種であることが悩みでもあります。
ちょっとずつブログで紹介できたらと思いますが、まずは、所属している「張山しし踊り保存会」のオリジナルグッズを遠野まつりに合わせて制作&販売しましたので、その一連の流れの中で富川がしていたことを通して、プロデューサーとしての役割をご紹介できればと思います。
※今回はローカルで重要な人間関係の構築部分は省き、プロジェクトの中身に絞って書きます。
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①張山ししグッズをつくりたい!と相談を受ける
張山の方々から、団体の活動資金を増やしたい&観光客向けのしし踊りグッズを作りたいと相談を受ける。連絡をもらった時から、おぼろげながらイメージは浮かんでいる。いわゆる郷土芸能らしいデザインではなく、カッコよい or かわいくて、単純に買いたくなるものがいいなと思った。
②打ち合わせでつくるものを決める
まずは打ち合わせ。なぜ作りたいと思ったのか、そして何を、誰に、どうつくる?売る?を話しながらヒアリング。最初は半纏、Tシャツ、手ぬぐいを作りたいと聞く。ただ、どうしても半纏は原価も高く購入層も限られてしまうので売れるイメージがなく、まずはTシャツと手ぬぐいに絞りましょう、とする。確か3月頃だったような。
③どんなデザインが良いか考える。リサーチする(2〜3日)
Tシャツのデザインをネットや本屋で見まくり考えます。最近はどんなトレンドなのかも意識してリサーチしていきます。あとは単純に自分の好みもあるので、表現したいこと、受け手に求められることのバランスを考えていきます。
④企画書で考えを整理していく
リサーチを経て、肌感覚として作りたい方向をインプットした後は、実際に企画書を作りながら、頭を整理していきます。悶々とするよりも、自分はすぐに手を動かして、紙に書きながら、方向性を考えていきます。
⑤具体イメージを考える
方向性が自分でしっくりきてから、具体的なトーンのイメージをしていきます。これを考えることで、デザイナーに依頼ができるのと、デザイナーから上がってきたデザインに対して正しいディレクションができます。
スタンダードなものから、ひねったものまで。まずは色々出してみます。
最終的には、スタンダードなイラスト案と一筆書き案になりましたが、構想の段階で出てきていました。今回一発目ということなので、奇をてらったものではなく、王道プラスアルファでいきましょう、と言う話もしました。
⑥スタッフィングをする。デザイナーを決める。
これは友人が言っていてなるほど!と思ったことですが、プロデューサーが料理人とすれば、料理の材料は人材、つまりネットワークです。どれだけいい材料を手に入れるかで、料理は変わり、そこがプロデューサーとしての腕の見せ所です。
東京でバリバリ活動するデザイナーにお願いすることもあれば、地産地消、地元のもので料理がしたい!と言う時は、盛岡のデザイナーさんなどにお願いすることが多いです。今回もよく仕事をお願いしている、(株)トランクさんへ相談。①〜⑤の経緯と富川の意図を伝えます。そしてラフのスケッチを作ってもらいます。
⑦広がる仕組み・ストーリーを考える
デザイナーさんがラフデザインを作ってる間に、プロデューサーとして広がる仕組みやストーリーを考えます。単純にTシャツや手ぬぐいを作るだけだとつまらないし、芸がないので、どうそこに様々な文脈を入れて"広がる"かを考えます。
今回は、しし頭のカンナガラが年に一度の交換の末に捨てられると言うことを聞いたので、これは勿体ない!と思い、何かに再利用できないかと考え、タグに使うことにしました。デザイナーさんにスタンプを作ってもらいました。こうした社会的文脈や、誰かに伝えたくなる要素を入れていくことを自分としてはよく考えて設計しています。
⑦ラフデザインが上がってくる。団体の方々と候補を絞る。
デザイナーさんからラフデザインが上がってきました。
Tシャツは30案、手ぬぐいは10案ほど。これだけアイディア出せるのはすごいなぁと毎回思いますが、勝負はここから。どれを選ぶか、が大事です。この選ぶ力がプロデューサーとしての仕事です。
団体の方々と、2〜3回打ち合わせをしながら候補を絞っていきます。それぞれ好みがありつつも、こういう方向がいいんじゃないかという意見は結構すんなり一致。だいたいこのプロセスでつまづいたり止まったりすることが多いのですが、張山の方々はセンスがよく、トントンと決まっていきました。サイズもM・L・XL。色のバリエーションも話し合いを経て決めました。
この段階では自分としてはこれがいいかなぁとあたりをつけておくのですが、いろんな方の意見を聞いて再考し、最後はいけると感覚的に思えれば、決めます。
⑧予算と見積の交渉
実際は③と同じぐらいの段階で動いていますが、大事なのがお金の管理です。予算によって制作枚数やパターンが規定されるので、早めの確認が必要。ただ焦って確認するとだいたい金額がズレ後で痛い目を見るので、急ぎずつ正確な金額を印刷側と握ります。それを団体側と調整して予算を確定させていきます。
⑨デザインが完成
さて、デザインが2案に絞れました。実はこの一筆書き案は最終手前の打ち合わせで案から外れていたのですが、富川として、これは絶対売れると確信があったので、こっそり案を残しておき、最終打ち合わせで、勝手に一筆の色バリエーション案を提出し、これが絶対いいと思う!と再提案して候補に入ったものです。結果的には、この一筆書き案がもっとも売れました。
⑩販売ブースの準備
さて、Tシャツのデザインができ、ここからは空間の設計です。Tシャツは絶賛改修中のto know(富川が代表を務めるプロジェクト)事務所での販売を決めていたので、急ピッチで準備をしていきます。遠野まつりにどんな空間で売るか、売り子はどうするか、急ぎ見通しをつけていきます。時間がなく、ちょっと焦り気味です。
ざっとラフを作ってみます。これをデザインチームに展開します。
しかし状況はこの通り。
なんとか遠野まつりまで持っていきたい、と空間づくりを手伝ってくれている遠野の大工チームに共有。スケジュールと段取りをこちらで組んで相談します。(遠野まつりの週頭は以下の状況でした…)
(大工のアツシ。遠野の丸順工務店で働く同い年の友人です)
次に装飾チームに装飾を依頼。というか、装飾できそうな友人に急遽相談。
デザイナーさんが考えてくれた空間イメージ(以下)を元に具体的な仕様と落とし込みをしていきます。
素材、寸法、設置方法、制作方法など、プロデューサーも間に入り、細かいやりとりもして、イメージを具現化して作り手に伝えていきます。
【11】売り子の確保とマニュアル作成
空間ができても売り子がいないとものは売れないので、、⑩に並行して売り子として立ってくれる人の確保を考えていきます。
結果、制作チームとプラス友人が協力してくれることになり何とか売り子はok。ただ、問題は富川がまつり期間中は店頭に立てないので、何を聞かれても答えられるよう、何かトラブルが起きても自分たちで解決してもらえるようマニュアルを作成。何かあったらこれを見て!と伝えました。
そのほかお釣りの準備、to knowの活動紹介パネルの準備などもギリギリまで対応。
【12】準備完了。本番!
11までを本番前日の夜までやっていたら、何と疲労困憊と風邪でダウン。最後の掃除は空間づくりチームに任せてしまいました。
(一応書いておくと、毎晩しし踊りの練習は参加していました)
こうして、遠野まつりの9月21日を迎えます。
本番はちょっとしか顔を出せませんでしたが、関係スタッフの協力のもと、ちゃんと売り場ができ、グッズも販売されておりました!
涙。マジで感動しました。
装飾を担当してくれた、遠野で会社員をしている阿部克彦さん。アパレル定員かよ…。
売り子をしに陸前高田から来てくれた、牡蠣漁師のひさこ。
最後は制作チームで記念撮影。デザイン、装飾、空間づくり、売り子まで少数精鋭で実現することができました。
売上も、遠野まつり初日だけでしたが、結構購入いただきましたし、張山ししのブランディングもでき、新たなファンの開拓もでき(実際新しい動きにつながる方とも知り合えた)、大成功だったのではないでしょうか。
※グッズはまだ在庫はあるので、to know事務所で購入頂けますし、今後は遠野市内の観光施設や今後はWEBで販売しようと思います。
【13】まとめ
以上、プロデューサーとして動いて来た内容をまとめてみました。
プロデューサーの役割を整理すると、
お客さんに対するフロントとしてコミュニケーションをとること、アイディアを考えること、体制をつくること、デザインのディレクションをすること、全体を動かしていくこと、現場があれば現場のディレクションもすること、情報が広がる仕掛けをつくること、などが自分がプロデューサーとしてしていることです。一言でいうと、考えることと動かすこと、でしょうか。
今回は制作予算があったので、予算取りの動きはなかったですが、予算がないプロジェクトの時は助成金やスポンサー探し、クラウドファンディングなどをして、そもそもの予算を確保するところから動きます。それも大事な役割です。
これらは決して表にはでないことなので外からは見えづらいことですが、表に出るアウトプットというよりも、アイディアを具現化するプロセス自体で最大の職能を発揮し、活躍するのが、自分が考えるプロデューサー像です。
今回はつい先日終了した、遠野まつりを例にとって書いてみましたが、他の業務も同様に紹介していけたらと考えています。今後、もっとプロデューサーの価値が認識され、きちんとした対価を得られていくよう引き続き地道に活動していければと思います。