ニシダ『不器用で』を手にとる
ラランド・ニシダの処女小説集が刊行されたことを知ったのは、わたしがかれに不穏な興味をもちはじめてしばらくたってからであった。ラランド自体、不穏な興味をもったコンビである。なぜならばかれらは既成の関係からはずれ、単独の芸能として身を売っている現在の潮流の渦中の人物だからである。かれらが抱えているのは、演芸という大衆性の否定と声望の単独な集中への執着の矛盾である。大衆演芸という万人を対象にした表現をある特定の人気へ集中させることでじぶんたちが生き残るというのは一見矛盾をもたない