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光のとこにいてね


久しぶりに500頁近い本を読みました。

光のとこにいてね 一穂ミチ


恥ずかしながら借りた後に知ったのですが、本屋大賞3位で直木賞候補作になった作品らしいです。ご存じの方も多いのかも

あらすじ
主人公である二人の少女は、裕福だけど排他的な家で愛情や関心に欠ける家庭環境、かたや団地暮らしでヒステリックな母に育てられるという家庭環境です。その二人が幼い頃に出会い、成長していく中で別れたり再会したり・・をしていくような話です。

感想
第一に思ったのが、本を読む意義として綺麗な文章に触れるのはすごく心の栄養になるということでした。特にタイトルの付け方が好きで、文の中にある明るい感情と暗い感情をうまく調和させた物だと思います。文中で頻出したカノンという曲も聞きながら読んだりしましたが、テーマに沿っていたと思います。

小さいときに会ったわずかな恋にも近いくらいの記憶を二人が持ち続けていたのは半ば呪いだったとすら思います。大人になって二人は当たり前のように他の人と結婚していますが、立ち止まっていた頃に支えてくれた記憶との再会で、自分の知らない時間を思い知らされる感じが切なかったです。

二人は、一度目は幼い頃に団地の公園で、二度目は高校で、三度目は大人になった頃の引っ越し先で、と定期的に出会いと別れを繰り返しています。そのたびに過去という共通言語で会話していますが、その当人同士でしかわかり合えない領域の書き方が印象的でした。

・指輪のきらめきよりももっと透明で、息の根をやすやすと止めてしまいそうなほどの痛みを伴い深く刺さった光(p211)
・互いが互いの日常の一コマになったような錯覚が、灯台の光にも似た鮮烈さで(p272)
・礼拝堂、図書室、音楽室、バイト帰りの夜道も、街灯の下の水たまりも、すべてが音符とともに遠いところへ昇っていく気がした(p455)

みたいな表現、すごく全体的に好きでした。

あともう一つの大きなテーマとして家族関係が大きく存在しているこの本で、二人は言ってしまえばタイプの違う毒親に干渉された歪みがあると思います。裕福だけど、きっと自分のことを好きではないどころかなんなら薄ら嫌いな母親は物語の後半で「でも不自由なく食事や生活をさせてあげたじゃない」的な言い分を振りかざします。出来なかったピアノを捨てられたり進路の選択を思い通りにさせたがったような精神面の重圧は、性格に大きく影響を与えたと思います。反対に、もう一人の子はヒステリックで最終的に子供を捨てたような母親を持って居たため女の子は何度も理不尽な局面に立たされることになります。

それぞれの不安定さと形成された性格の違いが丁度はまった感じがありました。また、そんな親を持っていた過去を超えて自分の家庭を持つそれぞれの生活には、大きな責任と覚悟を感じました。


海の近くの町が後半では舞台になって、爽やかさがあったのも好きでした。ああいう暮らしが出来たら幸せだろうな〜という感覚。


私も大切な人はみんな、光のとこにいてほしいです


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