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やべっ! / 完蛋了

wán dàn le
完蛋了

だめになる、おしまいだ、お手上げだ

クラス分けテスト(分班考试)で中級班になってしまってから、悪戦苦闘の数カ月。中国語で経済分野を学ぶ授業があった。王立枝という女性の老师は分厚い眼鏡をかけた、にこやかで楽しい先生だった。

わら半紙を括って綴じたような教科書に好感が持てた。クラス分けテストの時と同じで、もちろん漢字だらけなのだが、なじみのある語句が多い印象だった。大学の第二外国語時代を思い出す。自分の学部名称「チンチーシュエプー」(経済学部)くらいは覚えていた。何とも気の抜けた発音だ。
 
中間テストの時期になった。勉強を進めていくのだが日本語と同じような経済用語になじみはあっても全てが同じわけではない。むしろ同じものは少ない。「わら半紙教科書」を開くも、一文字ずつ辞書をひかなければ意味も発音もわからず、読み進めることができない。A5判くらいの1ページに4時間くらいかかったこともあった。これではとてもテストには間に合わない。(もちろん通常の授業も間に合っていない)
 
テストが始まった。消しゴムで強くこすったら破れてしまいそうな答案用紙だった。内容はすっかり忘れてしまったが半分以上はできただろうか。王老师は試験監督として教室を見回っている。そこで、小声ながらわざと聞こえるように言ってみた。

「完蛋了」

自分としては、あれもこれも分からないし、もう問題は解けない、どうしよう!という気分だ。
 
どうやら使い方は合っていたようで、厚い眼鏡の王老师は「くっくっくっ」と笑い、私を見ながら親指を立てて歩いて行った。決して若くはない先生だったがとてもチャーミングな反応が印象的だった。
 
「完蛋了」。今ならさしずめ、「やべっ」(お手上げ状態)といったところか。
 


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