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|006|正田智樹/食と建築の研究者・設計事務所勤務/29歳

今回の企画を受けた際、新居に引越しをしたばかりで本棚もなく、多くの本を実家に残してきてしまったことを思い出した。
また、コロナの影響で近くのホームセンターも閉まってしまったのでDIYで本棚も作れない。
多くの素敵な本棚が紹介される中、とても恥ずかしいが本棚なしでこの企画に挑んでみることにした。何を書こうと思い、持ってきた本を積み上げてみた。

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右上から左下にかけて、買った順に大まかだが時系列に並べてみた。今回はこの中から最近自分が考えを巡らせている際に参照している本をご紹介したい。

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私は今、日本の食生産の工房を訪ね、自然を活用した食生産と建築の関係についてフィールドワークを行なっている。建築と食という一見関係のない分野を横断したフィールドワークをするにあたり、事例を探し新しい思想を身に付けることはとても難しい。

そうした中で分野を行き来するためには、先人たちの知恵が欠かせない。
左は建築のフィールドワークや都市計画が中心の本。
右は食の歴史、生産を中心とした本。
それぞれが中央に行くに連れて、
都市計画や建築が食からみたものとして語られていたり、
食の生産と建築の関係が語られているものになっていく。
その中から本を3冊紹介したい。

『Hungry City』Carolyn Steel
世界の都市や主要な広場などの都市構造が、食の流通や生産を通して分析されている本だ。食と都市構造の関係を示唆しており、私自身とても関心のある分野だ。

『水都学Ⅲ』陣内秀信、高村雅彦、植田暁
「イタリアにおける都市・地域研究の変遷史 - チェントロ・ストリコからテリトーリオへ -」の章は、イタリアの農村部に対する政策や人々の運動、都市計画学をまとめている。スローフード運動の発祥が、田園と都市を一体的に計画するテリトーリオといった都市計画学の概念や、アグリツーリズモ(農家民泊)などの政策と同時期に行われたことがわかる本。

『発酵食品学』小泉武夫
日本酒やワインなどの酒類から、味噌や醤油、酢、魚醤などの発酵食品の製法や味に関して細かくまとめられている。食生産と建築の関係を深く理解すること、新しい事例を教えてくれる本。


今整理して見てみると、フィールドワーク以前に見る本は右側の食品生産関係の本で、多くの事例や生産者、新しい建築と食の関係のヒントをくれる。フィールドワーク後は左側にある本を読む。事例を整理し、制作や思考へと結びつけようとしているのだろう。


こうした建築や都市構造、そして風景と食の生産の関係をまとめていきたいと思っている。


●棚主プロフィール

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正田智樹/食と建築の研究者・設計事務所勤務29歳
1990年千葉県生まれ。転勤族の父と共に、フランス、インドネシア、中国、ベルギーを高校卒業まで転々と移り住む。2014-15年には東京工業大学塚本由晴研究室にて「WindowScape3 -窓の仕事学」で日本全国の伝統的なものづくりの工房の調査を行う。2016-17年イタリアミラノ工科大学留学。現地ではSlow Foodに登録されるイタリアの伝統的な食品を建築の視点から調査。2017年東京工業大学建築学専攻修士課程修了。2018年-現在、竹中工務店設計部在籍しながら、日本の伝統的食品生産を調査。


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