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図解談義ダイジェスト|2見開き目

だいぶ時間があいてしまいましたが、先週末1月25日土曜日に、公開イベント後初の打合せをしてきました。みっちり3時間半、3人ともへとへとでした。かなり濃いマニアックな詰めの作業に突入してきたな~という実感もあります。

そしてこの週末、池田きょうこさんという方がこの連載を発掘してくださってて、あ~見てくれている人がいるんだな・・・と嬉しい反面、

まだ15見開き完走は程遠く。反省しつつ、焦りつつの投稿です。さて2019年11月7日、旅の本屋のまどさんで行われた図解談義のダイジェスト版、2見開き目を解説していきます。そもそもこの絵本は

屋上まで続く迷路のようなスロープ車路、スケルトンのエレベーター、クレーンが吊られた現在進行形の増築基地としての屋上工場、一つとして同じ間取りがない住戸。まるで絵本から飛び出したような建築・沢田マンション。形態のインパクトだけでなく、すべては沢田夫婦が手作りでつくりあげた驚異の巨大DIY建築で今なお現役でまちの暮らしを支えています。そんな“沢マン”の、増築に増築を重ねたプロセスを立体的なドラマと捉え、ものづくりの面白さや建築の仕組み、ダイナミックな生活空間、夫婦二人だけの建設行為のクリエイティビティを魅せる一冊

を目指しています。

基礎工事:たった二人で穴を堀る日々・・・

さて、当日のZINEはこんなでした。「めっちゃええ土地見つけた!」というところから、沢田夫妻は一気に3期分の基礎用に地面を掘りまくるんですね。2人で掘り出した土はものすごい量だったみたいです(出典:古庄弘枝『沢田マンション物語』)。

これだけ労力かけて堀った基礎用の穴、埋め戻すのはもったいないと、のちに駐車場などのスペースとして有効活用されることになります。重機の操縦も、土の運搬も、すべて二人っきり。現場の労力は一ミリも無駄にしません。

この土地を手に入れるまで300戸近いアパートを建ててきた嘉農さんには、すべての工程は脳内にインプットされていたんだとか。そして、男に負けずおとらず「いごっそう(高知弁で負けん気の強いとか豪快とかいう意味)」な高知のおなご・裕江さんも、とにかく師匠の嘉農さんの右腕として日々現場の即戦力となっていたといいますが、どう考えても二人で掘るにも建てるにも、気の遠くなるデカさが絵から(ちなみにこの穴は1期のみ。これの3倍堀ったんですね・・・)伝わってきます。

描くものがない。

まだ2見開き目なので突っ込みようのないシンプルな要素しか出てこないのですが、要素がないからこそ難しい・・・。当時の写真資料がまったく残っていないこともあり、青山先生も前半の絵にはものすごく苦労しています。今の沢マンや、竣工後の記録を継ぎ合わせてあらゆる痕跡から推理して描くしか、術がありません。

ここで加賀谷先生から提案が入ったのは二か所。敷地周りの柵と、背後に迫る山についてでした。

まず、「どうですかね、沢田夫妻の現場にこんなしっかりした安全柵あったのかな・・・」という問題提起から。昔の建設現場はいまとは比べものにならないくらいラフだったのでは、と。空き地の片隅で子どもたちが遊んでいたり、工事中に手を止めた沢田夫妻と通りがかりのご近所さんで立ち話が始まったり、なんてこと、ざらにあったんじゃないかと加賀谷先生は想像するわけですね。

裏道は人が通行してた・・・?

あと敷地背後の山裾。前回も書いたとおりここは昔から地域の墓地になっていて、今もお墓が残っているんですね。現在は宅地開発が進み、通路らしい通路はあまり残っていないのですが、きっと当時は田んぼに向かって開けた場所だったはず。工事中もきっとご先祖様に手を合わせに来ていたご近所さんとか、結構敷地内を横断して人の行き来があったのかも・・・ということで、とりあえずこうなりました。

安全柵は三角コーンに、山裾にはお墓を描き足しました。のどかな田園風景に突如現れた巨大穴は注目を集めたに違いありません。

工事の行く末を楽しむご近所さんたち

いまじゃ工事現場なんて、安全柵どころか防音シートや足場が張り巡らされていて、工事中は何やっているのか知りようがない目隠し状態。ある朝パッと囲いがとれたかと思えばもうばっちり完成しているわけですが、当時の現場なんていうのは、もっと工事の行く末を近所の人たちがエンタメ的に楽しんでいたんじゃないかなと。それでなくても当時の高知・薊野では最先端最大級?の巨大”マンション”。物珍しさや前評判の高さがうかがえるエピソードとして、毎日20分自転車をこいで現場見学に来ていたおじちゃんがいたとか(出典:古庄弘枝『沢田マンション物語』)。しかも夫妻設計のアパートは、巨大台風が襲来しても吹き飛ばないくらい頑丈!と評判だったといいます。もちろん1期工事が終わったピカピカの新居には次から次へと入居希望者が殺到し、アッという間に埋まっていったそう(沢田マンションは工事が完了した部屋から住人が入居していたそうで、建設行為と生活空間が文字通り共存する光景がそこにあったとか)。

2見開き目は推測の域を出ませんがとりあえずここまで。これをもってまた高知の裕江さんに確認しに行きたいと思います。制作チームは引き続いて、沢マン建設プロセスのリアリティをとことん追求していきます。


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