11 ラトナカフェ
京都の左官建築家・森田一弥さんが、トウキョウの建築家・塚本由晴さんを案内する『京都土壁案内』(学芸出版社)。
歴史や様式だけじゃない、多様な表情をみせる土壁の魅力が満載です!
2日にわたる、京都での取材の模様をレポートします。
訪れる人
塚本由晴さん
建築家。アトリエ・ワン主宰
東京工業大学大学院准教授(当時)
案内する人
森田一弥さん
建築家+左官職人
森田一弥建築設計事務所主宰
前回のようす
森田さん設計の町家改修カフェです。ここはカレーが美味しくて有名です。
1階は店舗で、2階は居住空間になっています。
ラトナカフェの外観。西日に照らされ、一層あたたかい表情の土壁。
トイレ内部はドーム状になっていて、土壁が塗り込められています。
森田さんの代表作でもあり、いろんな試みがなされています。
まず目に付くのが、パンチングメタルの階段とブリッジ。
土と木という自然素材でできている町家に、あえて工業的な素材が組み合わされています。腰壁もメタリック。
従来の町家改修とは違ったスタイルに挑戦されています。
土壁にはもちろんこだわってます。
山吹色のあたたかい表情の店舗内部の壁は、大津壁をアレンジして、藁すさと、土佐漆喰を調合しているそうです。磨き仕上げの光沢と藁すさの風合いが、他にはない表情です。
坪庭にあるトイレの外壁には、鉄粉を混ぜることで「さび」を出し、拾翆亭でも見られた蛍壁に仕上げています。さらにトイレの内部はドーム状の空間で、藁すさを混ぜた、赤土+土佐漆喰の洗い出し仕上げが施されています。
ラトナカフェは全体的に、京都の「和」ではなく「アジア」の雰囲気が漂ってます。
オーナーさんと森田さんの出会いはなんとチベット! お二人のアジアへの眼差しが、この空間づくりに活かされていると思いました。
竣工は2002年。もとはレンガ敷の床の一室空間だったのですが、昨年さらに改装されて、中央に間仕切りを設け、奥の床に板を張られました。
以前から開催されているスパイス料理教室を、よりやりやすくすることも目的のひとつだそうです。
赤味や黄味をおびた壁の色は、まるでスパイスみたいです。
またカレー食べに来よ!
坪庭に敷かれた炭は、苔むしていて、和のテイスト。
いろんな豆。暖かい色合いは、壁の色とも似ています。
(第12回(最終回)に続く)
京都土壁案内
塚本由晴・森田一弥 著
寺社や茶室はもとより、お茶屋や洋館、蔵や土塀まで、時を経て町に滲み出た土壁の魅力を紐解き、巡る、今日の京都の建築・街歩きガイド。京都の若手建築家で左官職人でもある森田一弥の案内は初心者にも優しく、塚本由晴(アトリエ・ワン)の撮り下ろし写真は町の日常に潜む土壁の迫力を見事に切り取った。素人も愛好家も必見。
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