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学芸本の読み方

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学芸出版社の本や会社について書かれたnoteの記事を集めています。
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2018年7月の記事一覧

建築史家・内藤昌と木割のモダニズム|1950年代、建築モデュール研究と建築史学の復権

『モデュールと設計』という小冊子があります。 日本建築学会が1961年に出版したもので、建築生産の工業化で鍵となる「モデュール」について解説したものです。この小冊子をパラパラめくっていくと、唐突に「日本の木割」と題し、書院造のお屋敷の断面図(図1)が登場します。 図1 「日本の木割」の図 ここにでてくる「木割」とは「建築に必要な寸法を原木にスミツケする技術」。建築工業化に関するゴリゴリの専門的冊子(出版元は建築専門出版社である彰国社)が突然、日本建築史コーナーに変わる不

ウェブの時代に建築家が発信することの意味

こんにちは、ロンロ・ボナペティです。 noteをはじめてから、早半年が経過しました。 はじめる前は想像もしていなかった良いことがたくさんあったのですが、ひとつ釈然としないことがあります。 それは…… なんでもっと建築系の書き手が増えないんだろう!? ということです。 これまでの建築とメディアの関わり方の歴史を考えていくと、いまnoteで発信していくことは建築に携わる人にとってすごいチャンスが広がっているんじゃないかと思っていて。 Twitterでこんなつぶやきをした

『マーケットでまちを変える~人が集まる公共空間のつくり方』(鈴木美央著/学芸出版社)

『マーケットでまちを変える~人が集まる公共空間のつくり方』(鈴木美央著/学芸出版社)を拝読しました。 いや、これはすごいです。誤解を恐れずに言うと、さくっと簡単に読める本ではありません。俯瞰して観察し論考するために一度深く潜ることによって、マーケットがあらゆる人(つまり町)にとってポップな存在になりうるという証明を行った記録。 あるいは、 数多くのフィールドワークと定量データを盛り込み、自らの実践(鈴木さん自らマーケットも運営してしまった)を踏まえて、情熱と執着をエンジン

建築をつくるより、場所を使う時代の公共空間を考える。〜公共R不動産プロジェクトスタディ〜

先日、公共R不動産の新刊『公共R不動産のプロジェクトスタディ』の刊行記念イベントに行ってきた。 どういう想いを持ち刊行するに至ったか、どのように数多のプロジェクトを分類し、編集したかという裏話、制作秘話といった内容だった。 公共R不動産のディレクターである馬場正尊が語る「日本の公共空間の変革」に関する面白い話を聞くことができた。 建築空間デザインを「かっこよくつくる!」想いを大切にしながら、公共空間の活用の最前線にいる彼の言葉は、 今、変わろうと動き出している社会の波