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§6.4 罷免権(リコール)/ 尾崎行雄『民主政治読本』

罷免権(リコール)

 その1は国民罷免(リコール)の問題である.
 憲法第15条には公務員を選定し及びこれを罷免することは,国民固有の権利であると書いてある.ここにいうところの国民の罷免権の実体は何か.
 朝日新聞が,現在期待し得る最高権威の“新憲法義解”と銘うって発表した貴衆両院の憲法審議委員会の委員長アシダ・キン,アベ・ノーセー両君連著の『日本国憲法の解明』(昭和21年10月8日朝日新聞発行)には“前略.この規定(第15条)によって,国民が直接に選定または罷免するのは,専ら地方自治体の公務員であって,一般官吏の任免は内閣の手によって行われる.国民の有する罷免権は,米国の国民罷免(リコール)に類するものとなるであろう”と書いてある.
 余事はしばらくいわず,私はこの罷免権をもって,国会議員に対しても適応することにしたい.すなわち選挙当時の公約にそむいたり,政治的な節度をうしなったり,或いは議場の神聖を汚すような言動をなした国会議員に対しては,一定の規則をもって有権者がこれを罷免することができるようにしたいと思う.もし,それがやれることになれば,選挙の際でたらめな約束をして有権者をごまかすような不まじめな候補者も減るだろうし,議場で乱暴な言動をする議員もなくなるだろうし,当選後,選挙民に無断で党席を変更して有権者の期待をうら切るような議員もなくなって,わが政界は大いに革正せられるであろう.


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底本
尾崎行雄『民主政治讀本』(日本評論社、1947年)(国立国会図書館デジタルコレクション:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1438958, 2020年12月24日閲覧)

本文中には「おし」「つんぼ」「文盲」など、今日の人権意識に照らして不適切と思われる語句や表現がありますが、そのままの形で公開します。

2021年3月2日公開

誤植にお気づきの方は、ご連絡いただければ幸いです。

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