§10.8 旧態依然/ 尾崎行雄『民主政治読本』
旧態依然
もし日本の政党で,国利民福を第一義とする良心の命ずるままに,自分の党に反対するような行動をとれば,おそらくうら切り者,反逆者の汚名をきせられるにそういない.国家よりも党を重しとする私党根性でみれば,自党のために国利をうら切る者は忠義者で,国利民福のために自党の統制を乱すものは反逆者である.
敗戦というきびしい試れんにあい,政党人の気持も多少改まったであろうと思って,昨年総選挙後の新しい議会の議長選挙にあたり,私は新議員諸君に,公党の精神をもって議長選挙をするように忠告した[#入力者注10.8.1].なるほどとうなづいた議員もそうとうあったようだが,かんじんな時になると,やっぱり私党根性からぬけきれずに党議できめた人物を選挙し,新憲法審議の途中に自ら選んだ議長を追放するという大失態をやった.
党議拘束という病がなおらないかぎり,日本の政党はいつまでたっても,私党の域を脱することはできない.いつになったらその日が来るであろう.
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値上がりを待つ――奈良県においては昨今投票買廻り一層はげしくなり,遂には1票5円の相場を現わずに至りしが,選挙間ぎわには10円にも至るべしとていまだ売放さず持ちこたえいるものありと.(明治25年2月10日付『国民新聞』)
#入力者注10.8.1:
昭和21年5月16日の「 第90回帝国議会 衆議院 本会議(議院成立に関する集会)」での演説。全文は以下を参照のこと(どちらも内容同一)。
(1)「第90回帝国議会 衆議院 本会議(議院成立に関する集会) 昭和21年5月16日」帝国議会会議録検索システム(https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/#/detail?minId=009013246X00019460516¤t=3,2021年4月10日閲覧)
(2)尾崎行雄「議会は今日から出直せ」『尾崎咢堂全集 第十巻』公論社、1955年
底本
尾崎行雄『民主政治讀本』(日本評論社、1947年)(国立国会図書館デジタルコレクション:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1438958, 2020年12月24日閲覧)
本文中には「おし」「つんぼ」「文盲」など、今日の人権意識に照らして不適切と思われる語句や表現がありますが、そのままの形で公開します。
2021年4月10日公開
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