"Just a little taste" 制作について

先月リリースされた僕のアルバムの2曲目、"Just a little taste"

この曲はアルバムの中でもかなりテクニカルな立ち位置にいる曲です。全体的には、テクニカルでありながらもメロディーが覚えやすいスローブルース的な空気感を大切にしています。

この曲の肝はやはりベースとドラムになってくるのですが、この曲を語る上で欠かせないのが、僕が尊敬してやまない現代のベーシスト、Thundercatの存在です。彼の速く複雑な、もはやそれまでのベースの概念を覆すリード楽器としての6弦的フレーズ、特に僕は彼の代表曲のThem Changesのライヴ映像などで歌の合間に入る複雑で細かいフレーズが大好きなので、それをこの曲のテーマ部分などにおいて積極的に取り入れています。

もう一人僕が大好きなベーシスト、MononeonのトレードマークであるWhamy Pedalをこの曲ではよく使っています。Whammy はピッチシフターの一種で、ペダルを踏み込むことによって、楽器で弾いている元の音程から指定した音程へと滑らかに変化するというものでありますが、
Mononeonはよくハーモニクスを弾き、それにWhammyをかけてPsychedelicなアプローチを好みますが、そのほかにも、個人的に好きな、彼がよくやるWhammy pedalを駆使したアプローチとしては、細かいフレーズを弾いている最中にオクターブを上げることによって、一瞬だけリード楽器の音域にして、また、Whammyの副作用である、音程を上げたことによって生じる、ザラザラに歪んでいる、ある種のBitcrushing/sample-rate-reducingでLofiな質感が、歪んだmoogシンセのようなクオリティーを持っており、たまらなくカッコいいと思うのです。

そんな僕が好きな二人のベーシストをオマージュして、彼らの好きな部分を詰め込み、コンテクストに合うように作り替えたのがこの曲です。

ドラムに関しては、12/8のスローブルースのリズムを基調にそれを現代のBreakbeats的な細かなアプローチを加えました。

曲自体のリズム的な特徴にクロスリズム、いわゆる2:3のアプローチがありますが、これは僕の中では一種サンバ的なアプローチと考えています。サンバ初め、ブラジルの音楽はしばしば16分音符で譜面に記譜されますが、それはあくまでも便宜上のためであり、よく聴いてみると決して均等ではないことがわかります。
特に、よく街の中で演奏されている映像を見ると、全員の均等な刻みなどなく、ある一定のパルスのところで同期しながら、ズレた状態で進んでいく、このような印象を受けます。

この曲はそこまで激化したリズムのズレ方はありませんが、2:3だと最初に申し上げた理由は、現代的なサンバをドラムセットで叩く時にどことなく、2:3のような歪みかたの印象を受けたからです。1拍を4分割する16分音符でいうところの、1が少し長めで2と3が短くて、4がまた少し長い、みたいな印象です。本場の人がこの文章を見たら色々とツッコミどころがあるのかもしれませんが、僕は現在はそのような印象を受けています。

イントロに関しては、2000年代アニメのオープニング風のオープンハイハットから始めるという、意外性を突く一種のジョークなのですが、それはさておき、イントロから1拍の3分割であるドラムのオープンハイハットと、それに続く2分割系のベースとギターのユニゾンで始まっております。イントロにおいてもこれから始まる全てのものが2:3が基調になっているということを無意識のうちに示唆するのが狙いです。

さて、一番最初のセクションですが、Snarky Puppy and Malika Tirolen - I’m Not the one 

の一種のオマージュであり、僕はその曲を中学生時代に聴き圧倒的なかっこよさに惹かれましたが、やはり拍の頭で鳴っている強烈なリズムが印象的で、この曲の最初のセクションをドラムで1拍毎に止まっているアプローチに反映させました。また、ここでも、1-3拍までは3分割系、4拍目だけ2分割系という先ほどのコンセプトを引き継いでいます。

次のセクションでは、これはドラムはすでに機械的に均等な分割を失い、より人間的にリズムがよれていくのですが、このセクションでは、Vocoder初め、色々なリズムが拍に対して少しよたれかかるような、レイドバックのアプローチをしており、また、リズム的にタメて、伸びた部分があるということは、逆に縮む部分があるということですが、速度は平均したらもちろん一定です。しかし、その内部の進み方は一定ではない千鳥足のようなクオリティーがあります。

ここのドラムパターンでは2:3が特によく表れています。

さてその次のソロ前のセクションでは、先ほどまでの1-3拍までは3分割系、4拍目だけ2分割系というそれまでのリズム的大枠のループから抜け出て、全て3分割系のものになり、コンスタントなビートとなります。よってここである種のリズム的緊張の解決があります。

ハーモニーに関してはこの曲はあまり、不思議なものは使ってはいないと言えると思います。その理由として、僕はこの曲にある種ブルースのようなトラディショナルなハーモニーのクオリティーを付加したいからです。全体的にいわゆるFunctional Harmony(機能を持った伝統的な和音)のループが基調となり、最後のセクションだけ、そこから少しだけ抜け出していくアプローチをしました。

以上様々なこだわりが詰まった2曲目、"Just a little taste"、ぜひお聴きください!


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