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都会の自然を発掘せよ〜多摩川に遡上する極太マルタウグイ〜

 早春の多摩川にウェーダーを履いて入水。
 もちろん魚釣りが目的である。狙いはマルタウグイ。この魚が春の訪れをこの川に告げる。


 気が早いかもしれないが、今年も春が待ち遠しい。そんな気持ちを堪えきれずに、昨春の釣行を綴ることにした。

マルタとは”デッカい”ウグイ

 マルタウグイとは普段は河口域に生息するコイ科の魚だ。身体に伸びる一本の朱線が特徴であり、普通のウグイより大型になる。おおよそのアベレージサイズは50cm。春になると川の中流域まで遡上して産卵をする。その中でも、まだ春になるかならないかくらいのタイミングに先駆けて遡上する個体は太く、その大きさは70cmを超える。私はそれを獲るために多摩川にやってきたのだ。

 遡上も最盛期にもなるとマルタウグイは瀬の付近にバシャバシャと群れだって集まる。さらに上流に登ろうとする魚もいれば、産卵を始める魚もいる。
 普通のマルタを釣るためには、そのタイミングを狙うが、狙う70超えの大型はその群れには混ざっていない。
このことに気付くのに数年かかったことは、秘密である。

この川にはバスもいる

 安全には注意して、少しずつ川を探っていった。私の通うポイントの川底はやや特殊な形状をしているのでコケやすい。慎重にルアーを送り込んだ。
 川の流れは台風を一つ経験するたびに大きく変わる。今年はどこに潜んでいるのだろうか。
 岩陰で流れが巻く中でスプーンを泳がせたら、40cm位のスモールマウスバスが釣れた。綺麗な魚体だった。
「君も居たね」

コッとしたアタリに合わせると
スモールマウスバスが釣れた。

野生マルタと繋がる瞬間

釣りをしているときは思いの外に危ない目に遭う。
 大学時代、鯉の群れに混ざる50cmのでかいバスを追跡して川の岩壁を渡っていたら足元の岩が崩れて滑落した。口にくわえた釣竿もリールも無事であったが、お腹に盛大な擦り傷を残した。なお、私は水泳の達人なので、水に落ちた後の心配は不要だ。胸を張って油断することにしている。

 話を戻す。
 気がつけば腰あたりまで水に浸からないといけない場所にいた。川底に堆積した砂が岬状に飛び出している場所だ。数歩踏み出すと一気に深くなる。
 慎重に上流にルアーを投げ、狙うルートを通す。ミノーから伝わる振動がフッと消えた(気がした)。反射的に魚の反応を確かめるとグングンと答えが返ってきた。
 繋がった!掛けた魚は川流れの中を悠々と“重く”泳ぐ。無理に寄せようとはせず、慎重に浅瀬へと誘導した。どうやってあの危ない場所から戻ったのか記憶にないが、濡れてはいないので良かった。

この太さよ。
腹パンの雌。たくさん卵を産んで欲しい。
河原に広がる朝日が眩しい。


今年も。来年も。

 朝日に照らされてうっすらとオレンジ色に輝く魚の姿に息を飲む。実に数年ぶりに、素晴らしく太い魚に出会えた。初めて釣った魚ではないが関係ない。何度でも感動する。
 月並みではあるが、こういう魚が「いつまでもこの川にマルタウグイたちが上ってきて欲しい。」そんな気持ちを湧かせてくれた。

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