その美味しさを、知ってもらうこと

経口摂取が可能なすべての人にとって、食事はほとんどの場合、欠かすことのできない行為といえる。それは必要だからこそ、すこしの考え方の違いで、面倒なルーティンワークになり、あるいは人生を輝かせる最高の趣味にもなりえる。

ぼくが”食材探検家”という看板を掲げたのは、世の中には未だ口にしたことのない食材がいくらでもあり、それを貪欲に追い求めていく決意の宣言だ。世界をまたにかけるとオカネも時間もいくらあっても足りないし、結局は生まれ育った地に根ざして生きていくつもりなのであれば、日本のなかでも魅力的な食材が豊富といわれるこの北海道にこだわり続け、その価値を”探検家”として再発掘していきたい、と考えている。

北海道は美味しいね、という言葉をよく耳にするけど、北海道の何が美味しいのかは、実のところ北海道民が一番よく分かっていないのではないか、と思う。料理としてはラーメンやスープカレー、ジンギスカンなどが有名で、それはそれで良いのだけど、北海道だからこそのものかと問われると、いまいちそのようには思えない。では食材だろうかというと、魚介類を例に取れば、居酒屋や回転寿司屋では他所からやってきたマグロ、サーモンが大人気だ。

マグロやサーモンが安くて美味しいから選ばれるのは、当然のことだ。でも実は、マグロやサーモンよりもさらに安く、さらに美味しく、そして環境負荷の低い魚はたくさん存在する。それが、地物の魚たちだ。ではなぜそれらの魚が選ばれないのかというと、単純な話で、それが美味しいことを知らないから、あるいは美味しい状態で売ってないからなのだ。

その食材の美味しさを知ってもらい、食卓にのせる選択肢にしてほしい。そう願う理由の根底には、生産者への思い、土地に対する思い、たくさんの思いがあるけれど、一番の原動力は、「こんな美味しいものを、誰かと分かち合いたい!」という、自分自身の願いであり、人生を輝かせる最高の趣味としての、喜びの追求にほかならない。

美味しい食材を追い求めて、得たものを誰かに伝える。
ライフワークをそう定義したら、取るべき行動がシンプルに見えてきた。

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