野球の神様⑰

全国大会をかけた試合の敗戦から、バットくんはさらにギアを上げて自分の身体をとことん痛めつけて激しい練習に取り組んだ。

素振りの回数・朝のランニングの距離・ダッシュの本数・シャドーピッチングなど、自主練習の内容もこれまでよりも2倍の量を自分自身に課してやっている。


さすがじゃのぉ。負けた悔しさをしっかりとバネにしてさらなる努力の糧にしておる。こういう時にちゃんと自分を見つめ直して反省している者は必ず強くなれるのじゃよ。


大会終了から2週間後の練習の日。この日もバットくんは誰よりも声を張り上げて誰よりも全力をあげてプレーをしていた。ここのところ全く休むこともなく毎日ハードな練習をおこなって身体を酷使している。


さてとぉ、そろそろもう一つの試練を与えるとするかのぉ。このまま努力して来年の大会で優勝しました!というのじゃごく普通のサクセスストーリーじゃ。しかし、彼にはレジェンドになってもらわないかん。ここで彼に二番底をお見舞いしてやろう。

神様は次なる試練をバットくんに課すことを決めた。


グキッ。

痛っ。。


練習中バットくんはグラウンドを走っているときに足を少し捻ってしまった。通常ならちょっと安静にしてストレッチをすれば治るぐらいの軽い捻りであったが、疲労の蓄積しているバットくんの足首にはかなりこたえたみたいだ。

右足首のくるぶし付近が真っ青に腫れ、明らかに骨折しているような激しい痛みがバットくんを襲った。

なんとか痛みをこらえてもう一度走ろうとしたが、あまりの痛みに地面に足をつけることすらできなくなり、その場で激痛に耐えられず立ち止まる。

すぐさま片足ケンケンで監督のもとに状況を報告し、そのまま病院に行って検査を受けた結果

「疲労骨折 全治3ヶ月」と診断された。

バットくんの顔は蒼白になった。

せっかくここまで努力してきたのに、ここで休んだら今まで積み重ねてきたものがすべてゼロに戻ってしまうじゃないか。

悲しみ中、バットくんは松葉杖をつきながら長い長い夜の中を彷徨い歩いていった。


ごめんなぁ。バットくん。この状況で君がさらに成長するために何ができるのかを必死に考えるのじゃぞ。

神様はなお、暗闇の中街灯の灯でポツリと照らされたバットくんの動く小さな背中を見つめていた。


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