囀り
ある特定の鳥のさえずりが聞こえて来ると、
私が済んでいる町では皆が一斉に美容室に飛び込む。
一斉に髪を切り、
皆が同じ髪型にしなければならないのだ。
ショート、ポニーテール、坊主。
茶髪、金髪、ピンクの髪の毛。
とにかく我先にと髪型を一斉に変える。
そして髪型をチェンジした人々が一斉に店から出て、町へと消えていく。
ある特定の鳥。
名前は無い。
私は直接見た事が無いが、声だけは聞いた事がある。
「きょろろろろ」やら「くっろろろろろ」
と鈴玉を転がす様に鳴く鳥は、
時折この泣き声を町に響かせる。
そして何処からか突然空を真っ黒にする程の大群が現れ、
町の人々を襲撃する。
ついばまれ、死んでしまう人も多い。
逃れる方法は1つだけ。
何故だか、特定の髪型にすると襲われないので、
髪型さえ変えれば襲われずに済むのだ。
それ以外は何をやってもダメ、
帽子をかぶっても、
建物の奥深くに逃げ込んでも鳥は入って来て必ず襲われる。
あの鳥が鳴くと、
科学者の人達が急いで鳴き声を解読し、
今回の安全な髪型を私達に教えてくれる。
今日も鳴き声が聞こえる。
「ばひょひょひょひょ」
そしていつもの様に科学者が解読し、
今日の髪型を教えてくれた。
【ドレッドヘアー】
4日前は角刈りだった。
とてもここからドレッドヘアーには出来そうもない。
ボブマーリーには……なれそうにない。
今日はたくさんの人が死ぬんだろうな。
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老若男女問わず笑顔で楽しむ事が出来る惨劇をモットーに、短編小説を書いています。