ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 231ページ

~~~~~~~~~~~~~~

"シュッ!シュッ!タタタッ!"

「!!」

"ピタッ!"

(う、動けない!?)

人間を一人背負ってるとは思え

ないスピードで、岩山をかけ登

っていたシュリであったが、突

然、身体の自由がきかなくなり、

動揺する。

よく見ると、身体の周りに陽炎

のようなものが、まとわりつい

ていた。

(これは!?)

「幻霊炎《ファントムフレイム》、

安心しろ、その炎が、お前たち

を燃やすことはない・・・いま

のところはな」

声のした方向へ視線を動かすと、

揺らめく炎が立ちあがり、中か

ら一人の女性が姿を現した。

ほりが深く、つりあがった目元

の印象に違わず、激しい性格が

にじみ出るかのような印象を受

けた。

背が高く、肩幅も広いため、か

なり、がっしりした体格に見え

る。

真っ赤な髪を後ろで束ねている

が、束ねきれておらず、波うち

逆立つ様は、まるで燃え盛る炎

のようだ。

服装は、袖と腹部に布がなく、

足も完全に露出していて、申し

訳程度にある赤い布地が、褐色

の肌に同化してるような錯覚を

おぼえた。

彼女が、再び口を開く。

「一度だけ問おう、矮小な人間風

情が、我らの領域に足を踏み入

れ、いったいどこに向かおうと

言うのだ?」

完全に見下したような物言いだ

が、人間とは比べものにならな

いぐらいの力を有した、彼ら竜

人《ドラグナー》の反応として

は普通だろう。

相変わらず身体はピクリとも動

かないが、首から上だけは動く

事を確かめたシュリが、短く答

える。

「・・・竜の心臓《ドラゴンズハ

ート》へ」

「竜の心臓《ドラゴンズハート》

だと!?・・・なるほど、その

死にぞこないに大地の気を注い

で助けようということか」

女性は、一人で納得したように

うなずくと、残忍な笑みを浮か

べる。

「残念ながら、それは叶わない願

いだ・・・なぜなら、お前たち

は、ここで跡形もなく燃えてな

くなるのだからな!」

"パチンッ!"

「!」

女性が指を鳴らすと、シュリた

ちに、まとわりついていた陽炎

のようなものが、熱を帯び、青

白く燃え始める。

「くっ!?」

"ボボボボッ!バシュン!"

炎が燃え盛り弾けると、灰のひ

とかけらすら舞うことはなかっ

た。

彼女は、立ち上る煙を見上げて、

吐き捨てる。

「調子に乗りすぎだ、人間ども」

水竜王ヴァルナの消失により、

竜王たちの力の均衡は崩れ、風

竜王シェーシャも、こちら側に

ついた。

もはや、人間友好派は、地竜王

アスティカしかいない。

(我が主、火竜王ジャラカトール

が目覚めた時が人間が滅びる時)

「皆殺しだ」

彼女は再び、その顔を残忍な笑

みで歪ませた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?