ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 234ページ

「それは出来ません」

アヌビスが静かに言い放つ。

「なっ!どうして!?」

アヌビスの落ち着いた様子は、加

賀の焦る気持ちと苛立ちを、さら

に加速させた。

「この結界は、私の命の危険によっ

て自動で発動した、とても強力な

結界なのですが、一度解いてしま

うと、再び発動するには数年の準

備が必要になるのです、タルタロ

スの檻が破られそうな今、そんな

危険は冒せません」

「タルタロスの檻!?それは、いった

い!?」

「その話は、いずれまた・・・そち

らの話も聞かせてもらえますかな

?」

加賀の疑問を遮る形で言葉を濁し

たアヌビスは、ホルスらに問いか

ける。

「ええ、わかりました」

頷いたホルスは、カラカスに目線

で合図を送ると、カラカスが説明

を始めた。

加賀は、ホルスたちの事情も気に

なっていたため、仕方なく問い

詰めたい気持ちを噛み殺した。

それに、問い詰めた所で、どうせ

答えは変わらないだろう。

「いち早く不穏な空気を察知した我

々は、身を隠し様子を窺っていた

のです、そして、クルンが結界で隔

絶された事で、アヌビス殿の身に

何かあったか、もしくは、タルタ

ロスの檻が破られたかの、どちら

かとだと判断し、この場所に向か

おうとしたのですが、いかんせん、

至る所に罠魔法[トラップマジック]

が仕掛けられており、解除すれば、

居場所を教えるようなものですか

ら、なんとか潜り抜ける術を模索

している時に、外からイビス殿が

帰還されたので、お力を借りるこ、

とで、なんとか、ここまで辿り着

けたのです」

「なるほど、そういうことでしたか」

アヌビスは、納得したとばかりに

深く頷いたが、加賀には、引っ掛

かるところがあった。

「待ってくれ!外から帰還て、どう

いう事だ!?それに、外とは隔絶

されてるって!」

カラカスの説明に納得するアヌビ

スを尻目に、わけがわからないと

ばかりに、加賀が声を荒らげる。

「イビスは、元々、我らクルンから

聖ミリアを監視させるために送り

こんだ密偵なのです、それから、

アヌビス殿の結界を解かずして行

き来できるのは、人形使い[ドール

マスター]である彼ぐらいでしょう」

ホルスが、やんわりとした口調で

補足した。

「密偵!?つまりスパイってことか!

いいのか?そんな事を俺なんかに

教えてしまって・・・あと、ドー

ルマスター?だと、なんで結界を

越えられるんだ?」

「かまいません、これは両国合意の

密偵交換なので・・・つまり、密

偵とは名ばかりの、いわば、同盟

の証といったところでしょうか」

ホルスが穏やかに微笑む。

続いて、待ちきれないとばかりに

口を開こうとしたイビスを、ここ

は私がと制し、カラカスが説明を

始めた。

長くなる事を避けたかったのだろ

う。

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