ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 241ページ

「いいのですか?」

しかし、クラテスは、身構えるこ

となく、ただ一言問いかけた。

「!?なに?」

カドルーは、質問の意図が読めず、

怪訝な表情を浮かべる。

「私とあなたが戦えば、ジャラカト

ールが目覚めてしまうのではない

ですか?」

「!!」

クラテスの言うことは正しい。

ただでさえ、黒竜のヴィラスとク

ラテスの戦いは激しいものだった

だろう。

その大きな力のぶつかり合いで、

ジャラカトールの眠りが浅くなっ

ている可能性は高い。

もし、このままカドルーがクラテ

スと戦えば、ジャラカトールを起

こしかねないことは明白だった。

「くっ!」

カドルーは、苦悶の表情を浮かべ

る。

竜の地を人間ごときにうろつかれ

るのは耐え難いが、ジャラカトー

ルがいま目覚めたら、この世界を

滅ぼしかねない。

火竜王ジャラカトール、その気性

の荒さは、竜王の中でも、ずば抜

けており、実際、遥か昔に、休眠

期に目覚めてしまったジャラカト

ールは、世界の三分の一を灰燼と

化してしまった。

他の竜王たちが止めなければ、世

界は滅んでいたかもしれない。

しかも、現在、他の竜王たちも、

眠りについているか、行方不明か

だ。

「・・・ちっ!」

カドルーは、舌打ちしながら構え

を解いた。

「わかってもらえたようですね」

クラテスが静かにうなずく。

「だが、見逃すのは今回だけだ!忘れ

るな!火竜王ジャラカトール様は、

人間との共存など望んでいない!

次に見かけた時は、容赦なく殺す!」

カドルーが凄んでみせる。

「ええ、わかりました、肝に命じて

おきましょう」

クラテスは、意に介さず、背を向

けて歩き始める。

その後ろで、カドルーは、自分を

必死に抑え込むように拳を握りし

めるのだった。

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「くっ!くそっ!」

レオが大剣に手を伸ばすが、持ち

上げる力どころか、柄を握ること

も出来ず、すがるように触れるの

が精一杯だった。

「はっはっはっはっはー!どうやら

時間切れだったようだな!アグリ

アが息を吹き返した時点で魔王樹

の力が戻ったことに気づくべきだ

った・・・私とした事が、こんな

姿を晒す羽目になるとは!許さん

ぞ!貴様らぁ!」

穴から這い出てきた、かつて、マ

カラトだったものは、ひとしきり

独りごちると、怒りを露にする。

その姿は、すでに樹そのものであ

り、歪んだ幹から、申し訳程度に

顔が浮き出ている、なんとも醜悪

なものであった。

勇者たちの脳裏には、以前戦った、

元天馬騎士団団長のホーネスの姿

がよぎる。

しかし、ホーネスは、自我を失っ

ていたのに対し、マカラトは、完

全に自我を保っているようだ。

そして、獲物を見定めるように一

瞥すると、残忍な笑みを浮かべな

がら動き出した。

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