ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 235ページ

「ドールマスター、つまり、彼ら人

形使いは、糸や魔力で人形を操る

のが一般的だが、イビス殿におい

ては、その精神の一部を人形に宿

らせて操ることができるのだ、だ

から、ドワーフたちに形状を記憶

する合金を用いて作ってもらった

人形を使い、半ば強引に結界を突

破されたのだ、誰にでも出来る芸

当ではない」

「ええ!ええ!先の戦いでは戦闘用

ではなかったため不覚をとりまし

たが、このスペシャルな人形なら、

これからの戦いでもお役に立って

みせますとも!ええ!」

もう我慢できないとばかりに、イ

ビスが被せ気味に言い放ち、胸を

張る。

人形が変わると人格まで変わるの

だろうか?

前に会った時は、もっと気弱なイ

メージだった気がする。

加賀は、そんな事を思いながらも、

肩を落とした。

ここから出られなければ、皆を助

けに行くこともできない。

「くそっ!」

「手がないわけでは、ありません」

そう口を開いたのは、黒犬の獣人

アヌビスだった。

「え!?ここから出れるのか!?」

「絶対とは言えませんが、理論上は

可能なはずです・・・危険ではあ

りますが・・・」

アヌビスが逡巡しながら答える。

「かまわない!俺は、もう仲間を見

捨てないと誓ったんだ!教えてく

れ!」

紫音の時のようなことは、二度と

ごめんだった。

あれから、何度後悔を重ねただろ

う。

どんなに自分を責めただろう。

何より、自分の弱さ、醜さ、情け

なさを突き付けられ、自己嫌悪に

幾度となく呑まれそうになったこ

とか。

ふと、紫髪の少女の顔が目に浮か

ぶ。

(紫音さん・・・みんな、無事でい

てくれ!)

~~~~~~~~~~~~~~~

「ハァ!ハァ!ハァ!クソッ!」

熊の獣人と化したレオが荒い息を

つく。

熊形態[ベアフォーム]の超再生能力

により、傷は治るものの、体力ま

では回復してくれない。

マカラトの強さは想像以上だった。

回復したレーラ、手のあいた神楽

も加わり、4人がかりで、なんとか

戦えてるといった状態だ。

魔王樹の力とかいうものが封じら

れてなかったら、どうなっていた

かは明白だった。

4人の連携により、凌げてはいるが、

少しのきっかけで、その均衡は簡

単に崩れてしまうだろう。

(くそっ!)

レオは、心の中で再び、焦燥感を

吐き出した。


一方、マカラトも、苛立ちを隠し

きれずにいた。

魔王樹の力がある時の癖が、余計

な動きにつながり、こんな連中に

遅れをとってしまっている。

プライドの高いマカラトには耐え

難い屈辱だった。

(こんな雑魚どもに私の計画が狂わ

されるとは!)

厄介なことに、カグラと呼ばれて

いる白騎士[ホワイトナイト]の

剣擊が徐々に鋭くなってきている。

そして、絶妙なタイミングで矢を

射ってくる、あの弓使い[アーチ

ャー]・・・いや、獣使い[アニマ

ルマスター]なのだろう、火狐[フ

レアフォックス]を使って、度々

牽制してくるのが、マカラトの

苛立ちに拍車をかけているのだ。

獣戦士といい、獣使いといい、

城の結界の影響を受けているよ

うには思えない。

(神から授かった特別な力という

わけか!)

マカラトの我慢は、ついに限界を

迎えようとしていた。

(いいだろう、お前たちごときに使

うのは勿体ないが、私の切り札を

みせてやろう!)


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