ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 238ページ

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「はぁ!はぁ!はぁ!」

加賀裕也は、自分の胸を確かめる

ように撫で下ろした。

いま思い出しても身の毛がよだつ。

いくら結界を抜けるためとはいえ、

再び心臓を取り出されるとは思わ

なかったのだ。

そう、アヌビスが提案したのは、

再び裁定の秤を使い、加賀の心臓

を取り出すというものだった。

加賀の能力が、命の危険により発

動し、身を守るためのものなら、

裁定の秤からも逃れられるのでは

ないかという仮説を立てたようだ。

ある意味、危険な賭けではあった

が、予想通り、加賀の能力は発動

し、心臓も無事にカガの胸の中へ

と返ってきた。

そして、そのまま自由国クルンを

覆う黒い結界を越え、現在に至る。

加賀の、この、別次元へと逃げ込

む能力があれば、みんなを救える

はずだ。

生きてさえいればだが・・・。

アヌビスらに託された仕事もある

が、それは後回しにして、いまは

一刻も早く、みんなの元に駆けつ

けなければならない。

(みんな!無事でいてくれ!)

能力の効果を切ると、加賀は小舟

に乗り、聖泉クーラへと漕ぎ出し

たのだった。

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「カルラは、まだ引き込もっている

のかい?」

エルフの長老が、かしづく二人に

問いかける。

「はっ!どうやら、あのガイという

男を追いかけて殺そうとしたよう

です!」

がっしりした体型で、短髪の女エ

ルフ、ネイが答えると、隣にいた、

穏やかそうな顔立ちの、長髪の女

エルフ、ビスタがあとを引き継ぐ。

「とても信じがたいことですが、か

の者は、カルラに手傷を負わせたよ

うで・・・」

それを聞いた長老は、目を見開く。

「なんじゃと!?あのカルラの魔法

障壁を破ったというのか・・・面

白い、あやつにそこまでの力があ

ったとは・・・カルラは初めて痛

みを知れたのじゃ、感謝すべ
きじゃ

ろうのぅ」

そう言うと、エルフの長老は、感

慨深げに目を細めた。

”ドガーンッ!”

と同時に、外から激しい爆発音が

聞こえ、すさまじい振動で建物が

揺れる。

「・・・やれやれ、この老体に鞭を

打たんと、この森が滅ぶかもしれ

んのぅ」

エルフの長老は、どこか楽しげに

再び目を細めたのだった。


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「うぅ、う・・・?」

「目が覚めたようじゃな」

(ダークエルフ?ここは・・・俺は、

いったい・・・)

凱は、目を開けると同時に飛び込

んできた老婆の姿の特徴からダー

クエルフだと判断したが、状況が

飲み込めず、混乱した頭を何とか

整理しようと試みる。

「ここは、闇の森セル、わしらダー

クエルフが住まう森じゃ」

それを察したのか、老婆が手を広

げながら再び口を開いた。

「俺は、いったい・・・」

ダークエルフの森という事は、無

事に目的地へと辿り着けたようだ

が、それまでの経緯が思い出せな

い。

身体は重く、意識も朦朧としてい

る。

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