ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 233ページ

「あ、あんたたちは!」

加賀が驚きの声をあげる。

「いつから見ていたのですか?」

アヌビスが、カガとは対照的な

冷静さで問いかけた。

「あなたの偽物がヴァーリン殿を

連れてきたあたりでしょうか?」

その問いに答えたのは、この自

由国クルンにおいて、盗賊ギル

ドの長であり、白鳥の獣人であ

るホルスであった。

見た目は背が低く、子供のよう

に見えるが、今なら、その強さ

がわかるぐらいに、加賀は成長し

ていた。

そして、その後ろには影のよう

に控える黒鳥の獣人であり、ホ

ルスの側近カラカスが、さらに

後ろに、もう一人・・・イビス

と言ったろうか?聖ミリアで一

度みたきりだったが、その特徴

的な容姿とインパクトに、かな

り鮮明に憶えている。

かろうじてバーコードになってい

ない薄めの髪は相変わらずのよう

だ。

しかし、なぜ彼がここに?

「!まさか!みんなに何か、あっ

たんですか!?」

加賀は、疑問の末に1つの結論

に至って肝を冷やす。

「いえいえそういうわけではありま

せん、いや何かあったというのは

間違いではないかもしれませんが

・・・」

イビスが、かなりの早口で話し始

める。


少々まわりくどい言い回しをする

ため、わかりづらいとこもあった

が、要約すると、アグリア王子が

城を襲撃し、ラグレス王は殺され、

騎士団長たちの安否は不明らしい。

四天の働きで、からくも逃げきっ

たレーラ姫と勇者たちは、さらな

る力を求めて、エルフの森に向か

う途中で立ち寄った、ドワーフの

鉱洞でイビスと再会したらしく、

今頃は、城を取り戻そうと、聖ミ

リアで戦っているだろうというこ

とのようだ。

自分に、いきなり斬りかかってきた、

あの狂暴な男と、みんなは戦って

いるのか・・・いま思い出しても

震えてしまう。

強くなった今でさえ、あの斬撃を

かわせる気がしない。

みんなは大丈夫なのだろうか?

「そうだ!これで!凱さん!レオさ

ん!神楽さん!葵!優!誰でもい

いから返事してくれ!」

加賀は、伝心のネックレスを握り

しめ、呼びかけてみる。

「無駄です、今は私の緊急結界がこ

の国を覆っているので、外部とは

完全に隔絶されているのです」

黒犬の獣人アヌビスが残念そうに

首を振った。

「くっ!じゃあ、今すぐ、その緊急

結界とやらを解いてくれ!俺も皆

と一緒に!」

目覚めた今の自分の能力なら、

みんなを助けることができるはず

だ。


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