ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 240ページ

~~~~~~~~~~~~~~~

彼女は、立ち上る煙を見上げつぶ

やく。

「ふん!虫ケラが!・・・!?」

ふと気配を感じ、彼女は、我が目

を疑った。

「なんだとっ!?」

人間ごときが自分の幻霊炎[ファン

トムフレイム]を防げるはずがない

のだ。

しかし、目線の先には、二つの人

影が、しゃがみこんでいた。

そして、少し離れた所に炭化した

岩が見える。

「・・・なるほど、オロチの里に伝

わるという、自分と対象の位置を

入れ替える大道芸か、だが、距離

的には、それが限界のようだな」

”バッ!ユラ~ボボボボボボボボッ!”

彼女が手のひらを外に向け、腕を

広げると、一瞬陽炎が揺らめき、

すぐに辺り一面が青い炎に包まれ

た。

「これで、もう逃げられまい!今度

こそ、くらえ!幻霊炎陣[ファント

ムフレイムフィールド]!」

辺り一面の、あらゆる物質が瞬時

に燃え溶け、蒸発していく。

先程は、少し手を抜いていたが、

今回は本気だ。

きっと跡形もなく燃え尽きること

だろう。

程なくして、立ち込める蒸気が薄

れ始めると、その先に黒い影が二

つ見えた。

「・・・!ばかな!!」

(防いだとでもいうのか!?)

「すぅぅ~ふっっっ!」

彼女が大きく息を吸い込み、短く

吐き出すと、蒸気が吹き飛ばされ

ていく。

残ったのは、黒い塊が二つ。

一つは、立ち姿の人型で、もう一

つは、横たわっていた。

「やはり、人間ごときに防げるはず

などないのだ!まあ、消えてなく

ならなかったことは誉めてやろう!」

"ピシッ!ピキピキピキッ!"

「ん?」

黒い塊に亀裂が走る。

"ピキピキピキッ!ポロポロ!ザザ

ァ!"

亀裂が拡がり、崩れるように内側

から砂が流れだした。

「!砂だと!?」

中にいた人間は、しゃがみこみ、

荒い息をついているが、無傷のよ

うだ。

「!!」

彼女が振り向いた、その先には、一人

の女性が立っていた。

茶色い髪は乱れ、人間の貴族が着

るような赤い紳士服は、ボロボロ

で、仮面をつけているため、普通

であれば、誰だか識別するのは不

可能に近いが、そのひび割れた凹

凸のない白い仮面には見覚えがあ

った。

(封竜の仮面!)

「クラテスか!?」

「砂の鎧《サンドアーマー》で防が

せていただきました・・・久しぶ

りですね、カドルー」

カドルーと呼ばれた女性は、苦虫

を噛み潰したような顔をしながら

応える。

「ふん、黒竜のヴィラスを倒したの

は貴様か・・・貴様のその姿をみ

ると、あやつの、黒竜王ダルウィ

ルの守護者《ガード》に匹敵する

実力というのも、あながち間違い

ではなかったか」

「気づいていたのですか・・・ええ、

とても強い方でした」

クラテスは静かに肯定した。

「ふん!確かに、お前は強い、だが、

そんな状態で、私の前に出てきた

のは、自殺行為だったな?」

カドルーと呼ばれた女性が腰を落

とし、戦闘態勢に入ろうとする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?