ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 236ページ

"ヒュッ!グサッ!"

「ぬっ!」

"ズバッ!"

「ぐぁ!」

その時、優が放った矢がマカラト

の肩をとらえ、さらに神楽の斬擊

が致命傷を与えた・・・かに見え

た。

「黒閻穴[ブラックホール]!」

しかし、マカラトが呪文の詠唱を

省略し発動した魔法により、その

傷口は姿を変える。

マカラトの、致命傷と思われた傷

口は、血が流れることもなく、醜

い怪物の口へと変化したのだ。

縦長に開いた、その口の内側には、

無数の牙と触手が交互に生えてい

る。

そして、恐るべき力で、辺りの物

を吸い込みだした。

「カグラ!レーラ!オレノウシロへ!

ユウハ、ハシラノカゲニカクレテ

ロ!」

"ガッ!"

それを、いち早く察知したレオが、

神楽とレーラの前に進みでて、大

剣を床に突き立てる。

"グオオォォー!!"

「グッ!クソッ!ナンテチカラダ!」

"ガガガガッ"

"ボコッ!ボコッ!"

突き立てた大剣が床を削り、レオ

の踏ん張る両足が床にめり込む。

気を抜くと、一気にもってかれて

しまいそうだ。

「フォルちゃん!」

優の呼び掛けにより、城の結界の

影響で、炎をまとえていない火狐

が幻界へと帰っていく。

"ズズッ!ズズズッ!"

その時、レオたちの横を大きな物

体が移動していく。

「!に、兄様!」

「レーラ!!」

それが何か、気づいたレーラが、

手をのばそうとするも、レオの呼

び掛けに我に返る。

そう、それは、アグリアの死体で

あった。

レーラは、のばしかけた手を、そ

っと握ると胸に引き寄せる。

いま手をのばせば、身体の軽いレ

ーラは、あっという間に吸い込ま

れてしまうに違いない。

誰よりも自分を案じてくれたアグ

リアは、きっとそんなことは望ま

ないだろう。

レーラは奥歯を噛み締めた。

"ブワッ!"

程なくして、アグリアの死体が浮

き上がり、そのまま吸い込まれて

いくように、レオの目には映って

いた。

この状態では、薄目をあけるのが

精一杯だったが、間違いなく、そ

うなるだろうという確信があった

のだ。

しかし、その予想は裏切られるこ

とになる。

"ガッ!"

「なっ!?なにぃっ!!?」

マカラトも、さすがに驚きの声を

あげる。

そのまま吸い込まれるだろうと思

えた、アグリアの死体の腕が動き、

マカラトの頭を掴んだのだ。

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