ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 232ページ

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「ぷはぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」

ずっと息を止めていたわけでは

ないが、息苦しさから解放され

た安堵に呼吸が追いつかない。

「とりあえず、深呼吸して落ち着

きたまえ」

「!なっ!?」

声がした方を見上げると、黒犬

の顔をした獣人がこちらを見下

ろしていた。

「なぜ?と言いたいのかな?確か

に驚くのも無理はない」

黒犬の獣人は、一人で納得した

ように頷く。

そう、確かに彼は、後ろから心

臓を貫かれて絶命したはずだ。

こちら側に倒れこんできて・・

・恐怖と混乱でよく思い出せない。

「まぁ、無理もないだろう、確か

にあの時、私は後ろから胸を貫

かれて、君の方に倒れこんだ・

・・そして、君の力が発動、い

や、自己防衛本能により目覚め

たというべきだろうか?」

黒犬の獣人が首を傾ける。

自由国クルンにおいて、魔術師

ギルドを束ねる長、アヌビス、そ

うだ、自分は、このアヌビスに心

臓を取り出され、秤にかけられ

たのだった。

いま、思い出しても、身の毛が

よだつ。

しかし、襲撃者により、運良く

命を救われたのだろう。

そう、彼、加賀裕也は、六勇者の

生まれ変わりとして、この世界

に召喚された後、一人だけ修行

のために、隣国である、自由国

クルンに送られた。

無事、盗賊になることは出来た

が、修行中に後ろから突き落と

され、迷いこんだ祭壇で、この

アヌビスに出会ってしまい、あ

らぬ疑いをかけられて、あわや、

殺される寸前だったのだ。

「まさか、ドッペルゲンガーに生

き残りがいたとは・・・しかも、

裁定の天秤[さいていのはかり]を

使っている時を狙われるとは」

想定外でしたと、アヌビスは目

元を覆う。

「俺は、いったい・・・それに、

どうして」

「私が倒れた時に接触し、あなた

の目覚めた特殊能力に巻き込ま

れたようですね、そして、二人

とも、しばらく意識を失い、気

付けば、斉天大聖とドッペルゲ

ンガーが闘っていた・・・」

アヌビスは、思い出すように続

ける。

「斉天大聖が、こちらに全く気づ

かなかったという事は、どうや

ら、あなたが神から授かったと

いう力は、次元すらずらし、そ

こに逃げ込む事ができるようで

すね・・・しかも、そこから、

元の次元を覗くこともできる、

とても恐ろしい能力ですが、発

動するには、何かしらの条件が

あるのでしょう・・・命の危険

とかね」

アヌビスが言っている事は、正

しいのだろう。

それは、感覚でなんとなくわか

る。

しかし、気を失ってから、どれ

くらい時間が経ったのか定かで

はないが、目覚めてから相当な

時間が経ったはずだ。

それなのに、今の今まで、この

黒犬の獣人の存在に気がつかな

かったのが信じられない。

アヌビスが表情から察したのか、

説明をつけ加えた。

「そうですね、確かに私からも、

あなたの存在は認識できていま

せんでした、つまり、あなたの

安全は、完璧なまでに約束され

る能力のようですね」

「実に素晴らしい力です」

と、後ろから別の声が聞こえて

くる。

振り向くと、物陰から三人の男

たちが姿を現した。

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