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小説「相談室の先生」

 こんにちは。今日はどんなご用件?
 いじめ?それは大変だね。ありがとうね話してくれて。ちょっと温かいココアでも飲みな。落ち着いた?じゃあゆっくり話そうか。
 いじめってなんで起きると思う?わからないよね。わたしも実はよくわからない。ただ人間は一人一人はそんなに力が無いけど、集団になったときにどこまでも残酷になってしまうものなの。その危険性は歴史の本で繰り返し語られてきたけど、この国の人たち、大人も含めてね、そんなに学ぶ気も無いし、ものすごく忘れっぽいのね。
 大人はいじめはよくないと言うけど、セクハラ、パワハラはあるし、いじめがなんなのか全く理解してない人もたくさんいる。そんな大人から学ぶ子供達がいじめをしないと思う?思わないよね。
 テレビやネットも弱い人をいじめてきた伝統が今でも続いてる。そんな世の中で生きる子供達が「みんないじめやってるからやった」と言うのもおかしくないよね。まずこの社会はデタラメだと認めなきゃだめ。真実は半径5メートルの中の人間の表情にあるの。だから味方に、仲間になってくれそうな人を見極めなきゃだめ。
 ところで、先生って「人を殺してはいけません」とは教えないよね。人間は人を死に追い込む邪悪な力を持ってるとは信じたくないんだろうね。この国はお金の稼ぎ方が重視されすぎて、感情を育てる芸術や文学がおろそかにされ続けてる。だから自分で学ぶことが大事。生き延びるために、社会の仕組みを知り、人間を学ぶの。そうすれば、また誰かの支えられる人になれる。
 最後に生き延び方を言うとね。まず相手と戦う方法。一発相手を殴ってもいいし、怒鳴り返してもいい。でもやりすぎはだめ。
 それから逃げる方法がある。転校や不登校で自宅で勉強する方法もある。またはその中間の戦いながら逃げる方法もあるかもしれないね。信頼できる大人や友達に相談するとかね。
 あなたにはあらゆる選択肢がある。自分で一番いいと思ったことをやるの。とにかく考え続けるの。
 じゃあまた明日来てね。がんばらずがんばれ!
 

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