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美術館の収蔵品


 今回は、ちょっと軽めに美術館の常設作品について書いてみたい。

 日本では、美術館というと企画展が華やかだが、その企画展名に美術館の名前がつくことが多いことからも分かる通り、本来、美術館は常設が花であり、収蔵品を管理することも大きな役目となっている。

 収蔵品の数は、結構な量があったりするので、美術館が持っていても常に見られるわけではないが、持っていれば、いつかは見られる!いつでも見られる!と思えば、常設展もチェックしておきたいのが美術好きの習性とも言えるだろう。そこで自分が常設を見てよかった美術館ベスト3+番外編を書いてみる。


1位:東京国立博物館(東京・上野)

 常設といえば、ここ。トーハク。言わずと知れた巨大博物館。美術館ではないので、収蔵品は多岐に渡るが、国宝がいっぱいあり、1日かけても見切れないぐらいの展示品がある。

 一推しは、正月に飾られる長谷川等伯の「松林図屏風」。これがあるのでランク一位にした。昔の作品だが、現代美術のような佇まいがあり、今見ても、というか、もしかしたら今の目で見た方が楽しめるような気がする超一級品の代物。今まで見た絵の中でも頂点レベルに入るかも。何度でも見たい。お正月のお楽しみ。

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画像出典:国立博物館所蔵品統合検索システム(https://colbase.nich.go.jp/collectionItems/view/12f08f3c06a62af80737925634848303/18147)


2位:DIC川村記念美術館(千葉・佐倉)

 現代美術ファンにはおなじみの川村美術館。ロスコルームという世界的に見ても貴重な展示室があり、日本における現代美術ファンの聖地のような所がある。また、フランク・ステラの作品が充実していて、それも素晴らしい。印象的には、現代美術の方が強いが、レンブラントや印象派の作品などもあり、充実のコレクションである。ちなみに、かつては、ニューマンの「アンナの光」もあり、あれは本当に最高だった。こちらも「松林図屏風」と並び、生涯ベスト作品の一つだ。海外でも良いから、いつかまた見てみたいものである。


3位:李禹煥美術館(香川・直島)

 3位は迷ったが、ここ。隣の地中美術館、ベネッセアートミュージアムと合わせてのランクインという事で。作品点数は少ないが、見せ方、作品共に最高レベル。個人美術館なので、作品が合わない方にはダメなのだろうが、直島の環境と合わせて、このクラスの展示というのは、ちょっと他では味わえない贅沢な作りだ。

 地中美術館も同様に贅沢な作りになっている。特にモネの部屋は国内でも最高峰だろう。ベネッセアートミュージアムも良品が揃えてあり、この3館に共通して言えるのは、良品ばかりで作りが贅沢だという事だ。


次点:東京国立近代美術館(東京・武橋)

 トーハクと並んで、さすがは国立という充実のコレクション。こちらには何と言っても、藤田嗣治の「アッツ島玉砕」がある。藤田嗣治は主に戦争画となるが、数多くのコレクションがあり、手放しに褒めて良いものかは迷うが、その迫力は凄まじいものがある。ほか、猪熊弦一郎「驚く可き風景(B)」も絶品。他にも数々の名品がある。


【その他】

気になっているところをメモ的に。

・N's YARD(栃木・那須塩原)

 奈良美智の私設美術館。李禹煥美術館もそうだったが、一流の作家の関与した私設美術館というのは本当に良い。公立の美術館と比べると、こじんまりとはしているが、その分、良質の空間を体感できる。場所も非常に心地よい場所で、何度でも行きたい場所だ。


・栃木県立美術館

 こちらも同じ栃木の美術館。ホックニーの松島を描いた絵があり、先日見て、大変、感動した。他にターナーの良品などもあり、展示室はそこまで大きくはないが、意外とコレクションの質が高い。ちなみに、同じ宇都宮市内にある宇都宮美術館には、マグリットの「大家族」があり、こちらも良品である。


・大川美術館(群馬・桐生)

 こちらは本当にご近所。私設美術館ながら、松本竣介のコレクションが充実しており、何度も訪れている。難波田龍起やピカソの良品もある。展示自体は頻繁に変わるわけではないが、それ故に常設の重要性を再認識できる美術館だ。


・ヤマザキマザック美術館(愛知・名古屋)

 行った事はないが、国内では珍しくロココ時代の作品が充実していて、気になっている。アングルの作品もあるらしい。こないだ前を通ったので、そろそろ行ってみたい。


・兵庫県立美術館(兵庫・神戸)

 谷川晃一の記事でも書いたが、小磯良平の「斉唱」が絶品だった。これを目的にまた見に行きたい美術館の一つだ。カエルの外装も面白い。


・東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(東京・新宿)

 名前が長いが、今度、SOMPO美術館に変わるらしい。有名なゴッホの「ひまわり」があり、隣には、セザンヌとゴーギャンがあり、この3点は企画展がどうあれ常に飾ってあって、そのどれもが素晴らしい。個人的には、セザンヌを見たくなったときに、ふらっと訪れていた。決して、常設が充実してるところではないが、何しろ、その3点は一級品。東郷青児やグランマ・モーゼスの作品も貴重でリニューアル後も楽しみにしている。


【まとめ】

 関東在住なので、関東の美術館が中心になっていて、当然ながら、書いてない美術館の中にも常設が良いところは結構あるし。行ってない所も多い。今回は、単純に好みの問題としてランクづけしてみた。

 あと、当たり前といえば当たり前だが、こうして見ると、日本で見られる常設という事で良い作品は日本の作品の方が多い。日本の作品は、油画というよりは、浮世絵や屏風など生活に根ざしたような紙物の傑作が多いので、常設といっても、ずっと展示できないものも多く、展示替えを図って、見られる機会を待たなければいけないのが多少ネックではある。管理も大変だろう。近年の日本の美術を見ても、漫画やセル画など、管理が大変そうな貴重品が多いので、何とか、うまく管理して欲しい。

川崎市民ミュージアムの被害は残念でしたが、できるだけの回復を祈っております。)


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