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【短編】特殊能力選手権 その4

〈その3はこちら〉

「渡さん、情けは無用よ。真剣勝負でいきましょうね」とトリスが言うと、
「ああ、分かってるよ」と渡が微笑む。

〈準決勝 第二試合 渡VSトリス〉

トリスと渡は見つめ合う。
二人は無言のまま全く動かない。

不意に渡が囁いた。

「さあ、僕の背中にタッチするんだ」

トリスは渡の背中にそっと手を置いた。
これが愛か、愛なのか!

「勝者!トリス!」マスターがトリスの手を挙げた。

しーん......
会場は、いったい何を見せられているのかと、静まり返った。


〈決勝戦 パイタンVSトリス〉


いよいよ決勝戦だ。

渡「トリスさん、頑張れー!」
ハジメ「トリスさん、頑張ってー!」
六助「終電を 見送るように ネオン街」

カーンとゴングが鳴る。

ボーッ! いきなりパイタンが口から火を吹く。

「痛っ!」火柱がトリスに当たり、トリスの左腕が吹っ飛んだ。

ボーッ! パイタンは容赦なく、続けて火を吹いた。

トリスは広場内を逃げ惑う。

ボーッ!
「痛ッ!」今度はトリスの右足が吹っ飛んだ!腕と足から大量の血が吹き出している。

ボーッ!

トリスは片足ケンケンで逃げ回る。
ボーッ!
「はぁ、はぁ」バタリとトリスが倒れた。

「ふっ、とどめだ!」パイタンが火を吹く。
ボーッ!

「よし! 三分経ったわ」トリスは右手で鼻を摘み、目からピーっと音を出した。

その刹那、トリスはパイタンの背後に立っていた。三分過去に移動したことで、吹っ飛んだはずの左腕と右足は元に戻っている。
さあ、皆さんご一緒に。
これがパラレルワールドだ!

トリスがパイタンの背中にタッチした。

「今日は負けておいてやるが、オレに会いたければいつでもカリスカトロの塔に来い」
パイタンはそう云うと、背中から手羽先のような羽根を生やし、飛び立った。

「えっ?空も飛べるの? パイタンは、三匹の魔物が棲むと云うカリスカトロの塔にいるのね」
トリスは、みるみるうちに小さくなっていくパイタンの姿を見上げていた。

マスターが近づいてきた。
トリスは腕を挙げてもらおうと、左腕をマスターの前に突き出す。

マスターはトリスの腕は取らずに、トリスの背中にタッチした。

「勝者、オレ!」マスターは嬉しそうに笑いながら、親指で自分の顔を指差した。優勝したのはマスターだった。

「えーっ、そんなぁ」トリスは今にも泣き出しそうだ。

会場は座布団が飛び交い、生卵が投げ入れられる。観客は愚痴りながらゾロゾロと帰っていく。

観覧席の我須首相は既に居なかった。

会場には一回戦からずっと沈黙しながら、一人で観戦している男がいた。
ビットコイン発案者のサトシ ナカモトだ。
サトシが初めて口を開いた。
「素敵やん!」


(ぱひゅん)



〈ほんわか広場の掲示板〉

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BGM   浜田省吾 片想い



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