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【SS】人間ドック

 鳥野白湯パイタンは今日、人間ドックに行ってきた。
パイタンと言えば、コウモリのような羽根を生やした凶悪な怪物を連想するが、日頃は人間の姿をして、ひっそりと一般的な社会人として暮らしているのだ。

 先ずは去年引っかかったエコー検査。
「左の腎臓に石がありますね」
「はい、分かってます。2つ取ったけど、1つは経緯観察中です。石持 章太郎です!」

し〜ん!
まさかの取っておきのギャグが不発だった。

◇◇

「パイタンさーん」
名前を呼ばれ、視力検査や心電図検査と次々と受診する。
若い頃は健康診断が煩わしくて仕方なかったけど、人間ドックはボーっと椅子に座ってるだけで、検査が次々に消化していく。
のんびりしていて、悪くない。

◇◇

 人気の「鼻から胃カメラ」は今年も予約出来ず、最後は大嫌いな胃のバリウム検査だ。

 黒髪ロングの美人が事務的に支持を出す。マスク越しだが、端正な美人であることは間違いない。
「先ず胃を膨らませるためにこの炭酸を飲んでください。
 次にバリウムを飲みます。
 ハイ、右に三回転してください」

(うっ。。苦るちぃ。。)

「唾を飲んでゲップを我慢してください」

ゲポッ! 瞬時にゲップが出てしまう。

「ハイ、もう一度、炭酸を飲みましょう」

事務的に淡々とお仕事をするタイプのようだ。

「ハイ、右に三回転しましょう」

ゲポッ! またゲップが出る。

操作を止めて黒髪ロングの美人が出てくる。
「また炭酸を飲みましょうね」

一瞬、目が合ったが、『こんなこともできないのか』とでもゆうように、雪女のような冷ややかな目をしている。

「ハイ右に三回転しましょう」
「身体を左に斜めにして息を吸って、止めてー」
「唾を飲み込んでゲップを我慢しましょう」
「ハイ、逆さまになるから両腕で身体を支えて」

(うっ、苦しい。苦しいけど、なんか、なんか楽しいぞ! 次はどうしましょう?女王様)

パイタンの目はトロンとし、恍惚の表情を浮かべている。

(自分の中で確実に何かが芽生えた気がする)

そんなことを確信するパイタンであった。


(ぱひゅん)


【おまけの一句】

バリウムはすぐに出しておかないと大変なことになりますよ♪

白山に 鮮やかに咲く 薔薇一輪
               煮月🌹

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