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【短編】特殊能力選手権 その2

〈その1はこちら〉

青木田文具店の店主、青木田紀土(キッド)には六番目の臓器があった。
毎晩飲んでいるアルコールを消化するのではなく、この臓器にアルコールを貯め込み、口から火を吹くことができるのだ。
ここで人体医学的なことは、決して考えてはいけない。

〈一回戦 第ニ試合 紀土VSパイタン〉

広場の真ん中には白線で書いた土俵みたいな円があり、その円の中に二人は入る。

カーン!ゴングが鳴る。
「ふっ、俺の火柱を喰らいやがれ!」そういうと紀土はいきなり口から火を吹いた。

「ケッカイ!」パイタンが両手を挙げると紀土が吐いた火はパイタンの1メートル手前でピタリと止まった。透明なバリアがあるようだ。

「次は俺の番だな」そういうとパイタンも口から火を吹いた。プシューと炭酸マシンのような音がする。
ガスバーナーのような強烈な炎だ。

「うわっ」紀土はかろうじて炎を避けたが、髪の毛はチリヂリに焦げ、独特の匂いが立ちこめる。
紀土は命の危険を感じ、堪らずに「参りました」と言った。

「勝者、パイタン!」マスターがパイタンの手を挙げた。

「くっそー、まるでゼットンだ。麻雀大会なら絶対に負けないのになぁ」
どうやらゼットンが『最強』の代名詞のようだ。去り行くパイタンの背中を、紀土は呆然と見つめていた。


〈一回戦 第三試合 渡VSあやめ〉

早くも優勝候補同士の対戦である。
腸之内あやめは準備運動だろうか、一人でインドのダンスのような踊りを踊っている。

カーン!
ゴングが鳴ると、あやめは無言で四つん這いになり、徐ろにパンツを下ろした。
お尻を渡に向けている。綺麗な菊の花のような肛門だ。
会場は騒めいている。
例のブラウンの塊りが渡に当たると、八日後には確実に死に至る。

それでも渡は冷静だ。ボイズを使い、静かに呟いた。

「さあ、パンツを履くんだ。そして『参りました』と言いなさい」

あやめは素直にパンツを履くと、立ち上がり「参りました」と言う。

「勝者、渡!」マスターが渡の右手を挙げた。

負けたあやめは、無表情に空を見上げて呟いた。
「もうすぐ海でぷかぷかと、浮かぶことができる季節がやって来るわ」

こうして、優勝候補同士の対戦はあっけなく幕を閉じた。


〈一回戦 第四試合 雪見VSトリス〉

森永雪見と栗栖川トリスの登場だ。
美人の二人の登場に、会場は歓声で凄い賑わいである。
奇しくも二人とも、白のブラウスに淡いピンクのスカートを履いている。
トリスが黒髪で端正な顔立ちの美人系に対して、雪見は茶髪で笑顔が似合う可愛い系と云ったところか。

カーンとゴングが鳴る。

「ハジメさんの分まで私が頑張るわ」そう云うと雪見は、徐ろにブラウスのボタンを外し出した。

(つづく)


BGM   浜田省吾 路地裏の少年


本日はここまで!


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