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【短編】特殊能力選手権 その1

「こんな田舎町のイベントに一国の首相が挨拶するの?」姫野 一が驚きで口をポカンと開けている。
「なんでもこの町の出身らしいよ」渡が答えた。

ここはほんわか公園。今日は待ちに待った特殊能力選手権の日だ。トリスと渡、それにハジメは三人並んで開会の挨拶を待っている。

我須首相がマイクを持った。
「え〜、日頃は外出を控えるようお願いばかりしておりますが、19人の小人達はまだ世界中で暴れ回っています。どうか今しばらくの我慢をお願いします。しかしながら、今日のこの大会だけは日頃の溜まった鬱憤を晴らすべく、大いに闘ってほしいと思います。この国の明るい未来はもうすぐそこまで来ています」
パチパチパチパチ!と拍手が鳴る。
会場には町内会の老若男女、約百名くらいが集まっている。

我須首相が観覧席に戻る際、鳥野白湯(パイタン)とすれ違った。
「パイタン頼んだぞ。あの三人をここで倒しておかなければ、我々にとって後々面倒な相手になる」と我須首相は囁いた。
「我がガースー星に幸あれ」目も合わさずパイタンは答える。

続いてハーゲイのマスターがマイクを取る。
「本日、レフリーを務めるハーゲイのマスターこと『狩高 珍歩』です。それでは簡単にルールを説明します。このご時世ですので相手を掴んだり殴る蹴るは反則です。相手の背中にタッチする。若しくは相手に『参りました』と言われば勝ちです。
ただし、対戦相手以外であっても試合中に背中をタッチされれば負けとなります。
それでは始めます。皆さまに愛を、地球に光を!」

マスターの名前には、ふりがなを打たないでおこう。如何にも伏線臭いことと、後半には口癖の訳の分からないことを言っている。

〈一回戦 第一試合 六助VSハジメ〉

「六助の電流攻撃は大した事はないと、トリスさんのお母さんから聞いている。ここは秒殺してやるぜ!」ハジメは六助に突進する。

六助は目の前にきたハジメの手にタッチした。
ビリビリビリー!
凄い電流がハジメの身体に流れて、気を失いそうになる。

「ハジメ君、僕を甘く見ないでくれ!今日のこの日まで毎日練習したんだ。今では川を渡ろうとする馬を倒せるくらいの強電流を身体から流すことができるんだ」
「とどめだ!」六助は再度ハジメの身体にタッチした。

「このままではダメだ」
そういうと、ハジメはプッとオナラをしながら同時に息を吐いた。
そう、三分未来へ移動したのだ。
その刹那、ハジメは地面にうつ伏せになっていた。背中が重い。六助が馬乗りになりハジメの背中に手を置いていた。

「勝者、六助!」マスターはそう言い、六助の右手を挙げた。

「えーっ、そんなぁ!」

ハジメは砂まじりの口から大声を出しながら泣いた。


(つづく)



BGM   浜田省吾 DANCE



第一試合から波乱の展開だ!



また今度!





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