産業保健文学：とある工場の物語

2019年12月にFacebookに書いた産業保健文学です。とても暇なときにお読みください。

👷‍♂️作業環境測定士「こんにちは～第一管理区分協会から来ました作業環境測定士のAです」

👨‍💼総務課課長「（作業環境測定士？なんだそれ？）あー、第一管理区分協会さんですね。わざわざ来ていただいて、ありがとうございます。この前労基署に入られましてね、、、それでしょうがなく第一管理区分協会さんにお願いしたわけなんですよ。なんでも、おたくは第二管理区分は出さないって評判なんですってね」

👷‍♂️作業環境測定士「いやぁ、うちの会長はそう言いますけどね、測定結果次第では、第二管理区分も第三管理区分も出しますよ」

👨‍💼総務課課長「まあ、そう言いなさんな。うちも困るんですわ、第三管理区分とか出された日にはまた労基署に何言われるか分かりませんからね」

👷‍♂️作業環境測定士「はぁ」

👨‍💼総務課課長「んじゃまあ、早速現場の方に案内しますから、作業環境ってやつをちゃちゃっとやってくださいな」

～2人は工場に移動～

👷‍♂️作業環境測定士「あれ、今日って作業はないんですか？」

👨‍💼総務課課長「今日はたまたまやっていないんですよ。受注する製品も変わりますからね。まあでも、逆に邪魔が入らなくて測定はしやすいでしょ？」

👷‍♂️作業環境測定士「作業していないのに、作業環境測定なんてできませんよ。あっちの奥の方は作業していますし、そっちの測定をさせてください」

👨‍💼総務課課長「あー、あそこはダメなんです。企業秘密ってやつでね」

👷‍♂️作業環境測定士「いや、でもけっこう粉じんとかオイルミストとかが舞っているじゃないですか、遠目でも分かりますよ。なんか有機溶剤の臭いも漏れてくるし、色んな溶剤も使っているんじゃないですか？」

👨‍💼総務課課長「そこはいいんです、大丈夫ですから。溶剤はね、アセトニトリルというのを使っているですが、法律には書いてないから、測定しなくてもいいんですよ」

👷‍♂️作業環境測定士「いや、その物質ならACGIHではTLV-TWAで20ppmとなっていますしちゃんと管理しないと・・」

👨‍💼総務課課長「ACG・・・？なんですかそれ？そんなのこっちは知ったこっちゃないですよ」

👷‍♂️作業環境測定士「はあ・・・、ちゃんと保護具はしているんですよね？」

👨‍💼総務課課長「多分してると思いますよ」

👷‍♂️作業環境測定士「多分って・・・。というか、さっきからこの現場って音がすごいですね」

👨‍💼総務課課長「まあ工場ですからね、そんなもんですよ」

👷‍♂️作業環境測定士「騒音も測定した方がいいと思いますよ、事前に聞いてないから今回はちゃんとした測定機器がありませんが」

👨‍💼総務課課長「いいんです、たまにしかうるさくないですから。たまにしかあの設備は稼働させないんですよ」

👷‍♂️作業環境測定士「たまにってどのくらいですか？」

👨‍💼総務課課長「いやホントたまにですよ。週2,3日くらいですかね」

👷‍♂️作業環境測定士「な、なるほど・・・（これはもうダメだ）とりあえず、測れるところだけ測りますんで」

👨‍💼総務課課長「それじゃ、よろしく頼みますね」

～後日～

👷‍♂️作業環境測定士「測定結果はこちらです。第一管理区分となっていますが、作業も行われていないときの評価ですし、ほとんど全く実態を反映しているものではありませんよ。保護具の着けてない方が多かったですし・・・。それと騒音はサービスで簡易に測定しておきましたが、案の定第三管理区分でしたよ。早急に改善した方がいいですし、少なくとも半年後には再測定が必要です」

👨‍💼総務課課長「いやぁ、次の測定はけっこうです。労基署に測定したって報告する書類が揃えば十分ですから、また何年かして労基署が入ったら考えますわ。あ、騒音の結果もうちでは必要ありません。うちの従業員はなにも言ってきてませんしね」

👷‍♂️作業環境測定士「そうですか・・・、そう仰るなら我々も無理矢理には測定するわけにはいきませんからね。ただ、作業者さんたちも手を見たらけっこう荒れてますし、作業服も色んな溶剤が付着していて、かなりの曝露が疑われますよ。発がん性のある溶剤も扱っているし、大変なことになるんじゃないですか？」

👨‍💼総務課課長「そんな大げさな。がんになったとしても年齢的なものでしょ。だいたい病気になったら本人の問題ですし、そういう人は辞めてもらっているんで、まあ、うちは大丈夫ですよ」

👷‍♂️作業環境測定士「・・・」

【設問１】

あなたが産業医としてこの作業環境測定結果を確認した際に、とるべき対応について述べよ

【設問２】

作業環境測定の闇について知るところを述べよ

以下、作業環境の闇・・・（ご興味がある方だけどうぞ）