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市役所について知ろう。そこは就農相談の最初の窓口 - 移住・新規就農(1/3)

まずは簡単にまとめます。

新規就農の最初の相談窓口はだいたい市町村の担当者になる。

支援制度のほとんどを国が主導しているためだ。なので、相手の特性をよく知っておくとよい。彼らは給付金・補助金、研修施設、特産品、標準的な収支計画…だいたいこういう情報に詳しい。
制度には詳しいが、実態を知らない。これら行政担当者の特徴だ。
実態を知りたい場合は、彼らを通して現地にアクセスする必要がある。

では解説に入ります。



就農支援はほぼ国の予算で行われている

農業の担い手確保は国の農業基本計画にあげられる国策なので、新規就農者支援に対しても国が予算を割り振っています。
こういった状況下で、独自の財源で就農支援を行っている生産者組織はほとんどなく、行政主導の就農施設の委託先という形で関わっています。そういった委託先も就農者の募集にはほとんど関わらないので、募集はもっぱら市町村が主導しています。

新・農業人フェアなどの就農相談会がありますが、あそこのブースにいる人の9割は就農支援を担当している市の職員です。

一部に農業者を含めた関係者が同席している場合がありますが、一般の生産者組織が単独で出展しているところは本当に少ないです。全国規模のイベントは民間委託しているため、生産者レベルでは費用の工面が難しいのです。
地方のイベントであれば、近隣の生産者が同行するケースも増えると思うので、身近だからと都会のイベントばかりに参加するというのはお勧めできません。

興味の段階であっても、旅行ついでに足を延ばしてみることをお勧めします。


だいたい就農相談は市の担当者に行き着く

最初の相談相手になる可能性の高い、市の職員について知っておくことは重要です。あなたの聞きたいことと相手が知っていることがマッチしないと会話が弾みません。

市役所の農業関係の担当者は次のことに詳しいです。

  • 補助金や給付金制度

  • 地域が行っている新規就農支援

  • 力を入れている作物

  • 行政が提示する標準的な収支計画

逆に言うと、ほぼそれしか知らないので、次のことはほぼ知りません。

  • 農業者の労働実態

  • 生産技術に関すること

  • 力を入れている作物の他に対する優位性

  • 実際の農業者の収支

就農相談をする人は、テレビやネットではわからない実態を知りたい(感じたい)と思って相談していると思います。ですが残念。市役所の担当者はそんなこと知りません。

仮に市の担当者が知っていても、当事者でない人の発言から何かを実感することはないでしょう。
市の担当者は持参した資料を読み上げて、型にはまった説明をしてくれるはずです。

しかし、彼らから読み取れる情報は多いです。
少なくとも彼らの態度で、その地域がどの程度の熱心に就農者を募集しているかがわかります。過去実績を聞けばより確実です。
就農支援は昨日今日始まったものではありません。国の就農給付制度が始まってから10年以上経過しているため、最低でもその期間は活動しています。それで実績を説明できない地域などやる気がないだけです。

やる気のない理由は

  • 他の産業が強いので、農業を押していない

  • 本当に儲かっていて、後継者に困っていない

  • 他産地に対してあまりにも弱く自信がない

といったことが考えられますが、いずれにしても、そういった地域に移動すると肩身が狭くなります。あなたの実家がある地域だとか、特別な理由がない限りお勧めできません。

とにかくある程度割り切って、相手に合わせた質問をして情報を引き出しましょう。


リアルとは情報ではなく体感

就農を考える人のほとんどは、農業のリアルを実感したいと思っているはずです。しかし、実感は「何を聞くかではなく、誰から聞くか」という体感のことだからですから、当事者ではない市の担当者から実感を得ることはできません。

また、例え当事者が相手でも、質問に対して十分に答えてくれなかったり、形式的な話し合いのようなものや、一方的な講演会では、実感するというのは難しいでしょう。

なので結局、現地視察や短期研修などで体感しないと、実感には近づけないということになります。同時に、比較検討しないと良し悪しはわかりませんから、複数個所行く必要があります。

多くの相談者が求めている実感は、簡単に得られるものではありません。


シリーズ 市役所について知ろう

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