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冬の食材の俳句(季節を味わう#0034)

「季節を味わう」では、第5水曜日にその季節の食材を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。

【白菜】

写真:旅するししゃも様

寄せ鍋の白菜雪のごとくなり   山口青邨

どこのご家庭でも、冬には簡単で体も温まる鍋料理の出番が多くなるのではないでしょうか。鍋料理に欠かせないのは白菜。クセのない甘味はいくら食べても飽きることがありません。
詠み人は寄せ鍋の具に蓋をするかのように山盛りに白菜を入れたのでしょうか。雪が積ったかのよう、という大量の白菜も、鍋を火にかければぐっと体積が減り、いくらでも食べられます。
お鍋以外にも、お漬物、中華炒めなどにしても美味しく、馴染み深い白菜ですが、意外に歴史は新しく、明治8年(1875)、東京で開かれた博覧会に中国(当時の清)から出品という形で初めて日本に紹介されました。 その後、日清戦争・日露戦争に従軍した日本の農村出身の兵士たちが、大陸で白菜を食べて、種を持ち帰ったのが、日本中に広まるきっかけとなったと云われています。

【大根】

写真:たかやん様

ずつしりと大根ほんたうの重さ    廣瀬悦哉

上にあげた白菜が日本人にとって意外と新しい野菜だったのに対して、大根の歴史は古く、8世紀ごろに中国から渡来したのだそうです。
大根の原産地は中央アジア。 4000年以上前に古代エジプトではすでに栽培されており、ピラミッド建設に従事していた人たちは、たまねぎやにんにく、だいこんを食べていたそうです。日本では寒い時期に美味しくなる大根とエジプトがイメージとしてうまく結びつきませんが、どのような調理法で食べられていたのかには興味が湧きます。

我が家は夫婦だけの家族なので、大根を一本で買うことはまずありませんが、たまに一本丸ごと持ってみるとあのずっしりとした重さになんとも言えない充実感を覚えます。
この句の「本当の重さ」は、まるで「嘘の重さ」があるかのような面白い表現ですが、大根のあのなんとも言えない重みにふさわしい言葉だと思いました。

(2023年11月29日)


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