旭酒造 「起死回生の日本酒・獺祭」の‟ぶっちぎり経営“とは?
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第3弾となる今回は、日本酒業界の革命家「旭酒造」会長・桜井博志さんのご登場。
旭酒造って? ピンとこない方、いまや世界に誇る日本酒「獺祭(だっさい)」の醸造元です!
山口県岩国市に本社を構える旭酒造は、今でこそ‟儲かり企業“ですが、かつての経営状況は悪く、山口県内の酒造メーカーの中でも負け組の中にいました。
それが1990年に獺祭を発売して以来、売り上げも人気も右肩上がりで、この20年で約500%という売り上げアップ。圧倒的なV字回復を成し遂げます。
山口県の山奥にある小さな酒蔵でありながら、清酒の中でも高級酒にジャンル分けされる純米大吟醸(※1)の出荷数量は全国トップ。売上高は約138億円(2018年9月期時点)にまで達しています。近年は海外進出も力を入れていて、輸出先は30カ国以上。
なぜ、獺祭が大ヒット商品となり、純米大吟醸のトップランナーとなったのか。背景には、日本酒界の常識を覆すどころか、‟ぶっちぎった“ことにあります。
1984年に34歳で3代目社長に就き、会社の復活と飛躍の立役者である現会長の桜井博志さん。紳士的で落ち着いた雰囲気ながら、「自分の時間を酒造りに費やしたい」という理由から自宅を本社ビル最上階につくって暮らすなど、酒造りに異常なほど情熱を捧げています。‟非常識”かつ、‟やりすぎ”な経営に迫ります。
※1「純米大吟醸」とは、 米と麹、水だけで造り、アルコールや糖類などを添加せず、50%以下の精米歩合で製造した酒。
桜井 博志(さくらい・ひろし)
旭酒造株式会社・会長。1950年、山口県周東町(現岩国市)生まれ。大学卒業後、関西の酒造会社に就職。その後、76年に旭酒造に入社するが先代の社長である父と対立して退社し、79年に自ら石材卸業の会社を創業する。父の急逝を受け1984年に旭酒造へ戻り、34歳で3代目社長に就任。1990年に発売を開始した純米大吟醸「獺祭」の人気により経営危機を立て直す。近年は海外進出にも注力。現在、アメリカやフランスなど、世界30カ国以上に獺祭を輸出。昨年4月には、仏の有名シェフ、ジョエル・ロブションとタッグを組んだレストラン「獺祭 ジョエル ロブション」をオープン。2018年9月期の売上高は、138億4,900万円にも達する。
新ブランドにして「負け組イメージ脱却」
――「獺祭」が誕生した経緯を教えてください。
桜井博志氏(以下、同):獺祭が生まれる前、経営危機の中にいました。私が3代目の社長に就任した1984年は小さな酒蔵で、県内に50社から60社ある酒造会社の中でも下から数えた方が早いくらいの規模で。そんななか、起死回生の一手として目をつけたのが、流行の兆しのあった純米吟醸酒の開発です。
当社には、獺祭の開発以前から「旭富士」という日本酒のブランドがありました。ただ、純米吟醸酒をそのまま同じブランド名で展開すると、どうしても山口県内の負け組酒造会社の印象が残ってしまいます。そこで、新たなブランドとして「獺祭」と名づけたんです。
酒蔵ではなくオフィスビル内で醸造
――獺祭は、日本酒業界の聖域だったところまで革新されたそうですね。
ええ。その秘密は、酒造りをしている本社ビル内にあります。
――え? 日本酒を酒蔵じゃなくて、オフィスビルでつくるんですか!?
「日本酒は土蔵の酒蔵で造るもの」というイメージがある方は、驚かれますね。この中に洗米や蒸米、麹づくり、発酵、検査など、日本酒を造る工程に必要な設備が整えられています。
非常識に23%まで磨く「おいしい」の追及
――醸造にはどのような秘密があるのでしょうか?
まず、精米歩合です。精米歩合とは、酒の原料となる玄米を削る割合のこと。酒のもとになるでんぷんは米粒の中心に、雑味になってしまう油分やたんぱく質は外側に含まれています。米に水をどれだけ吸わせるかで味が変わるので、雑味の部分をどれだけ削るかが酒の味に影響します。
一般的な日本酒は7割、よく削るといわれる酒造会社でも5割です。純米大吟醸の醸造において削る量は「5割で十分おいしい」といわれてもいました。
対して獺祭は、約90時間をかけて2割3分まで削ります。
――23%まで……。ずいぶん削りますね!
生産量は減りますが、ここまで削ることで獺祭特有のすっきりとした味わいになります。理想の日本酒を目指すには、「2割3分」だったんです。
「味に影響しない。意味のない削りで、ただの人気取りだ」と同業者らから疑問視もされました。
でもね、そんな風に言ってくる人ほど、酔えば酔うほどに2割3分まで磨いた米を使った『獺祭 磨き 二割三分』を飲んでいるケースに遭遇します(笑)。おいしいと感じてくれている証拠でしょう。
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目次
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