報告書DAY1
かんずめになる。
自らを拉致し、軟禁する。
一日目はこうだ。
松屋でハンバーグを食べた。
やけに注文の多い男がいた。
4度も厨房へ行き、何か指図をしていた。
袖のみ赤く、胴だけ黒のTシャツを着ていた。
ドッヂボールとプーマの筆箱を思い出した。
目の前のハンバーグにクラスメイトが靴を擦って線を引いた気がした。
その線がいよいよ皿を出て、近くのGEOまで届きそうなとき、ふと我に返ると、店内の客は私一人だった。日曜の昼である。
その後、ずたずたのハンバーグを掻き込み、期限ぎりぎりのDVDを返却し、東へ。
チェックインまでの時間は書店とコーヒー屋で過ごし、コーヒー屋で注文を間違えられたために少しだけ不機嫌になった。
注文を取った若い女が美人だったので余計に腹が立った。
よく考えれば、例えどんなに醜い店員でも腹が立っていた。美醜は関係なかった。
誰でもよかった。
ナイフはペンに。
かんずめをしようと思ったのは、太宰が缶詰をしていて楽しそうだったからである。
太宰よろしく頬杖をつき、筆を手に甘すぎるコーヒーを飲んだ。間違えて出てきたやつの方が美味そうだった。
それからラジオを聞きながら本屋に行って、"持っていない本"を買った。
"持っていない本"というのは重要だ。"持っている本"は買う必要がないし、"持っていない本"を買うために本屋へ行くのであるが、往々にして"持っている本"をうっかり買ってしまうことがあるので、"持っていない本"だらけの本棚の前に立ち、"持っていないであろう本"を手に取ったならば、その"持っていないであろう本"が本当に"持っていない本"なのか実は"持っている本"なのかを、お宅の"持っている本"しかない本棚と照らし合わせてみる必要がある。
"持っていない本"を2冊買い、ホテルへ。
部屋は清潔でミニマム。洗面所の白いのが好きだ。バスタオルもとっつきにくいホテルマンそのものだ。
窓からは劇場が見えた。
本を読んで少し書いて、風呂に入って寝た。